途中まで書いた記事が、アプリの不具合なのか見事に全部消えていて

 

心折れましたが気を取り直して書きたいと思います(ToT)

 

 

 

 

 

 

 

行ってきました。

 

 

2024年1月19日(金)19時開演

山形交響楽団特別演奏会 in 河北町

河北町総合交流センター サハトべに花

(指揮:沼尻竜典)

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牛田くんは何度も山形でコンサートをしているし、山形交響楽団とも何度も共演していますが

 

今回のホールは初めてです。

 

 

 

 

「サハトべに花」って、あの「べに花」のことですよね?

 

 

今までの人生で、べに花について考えたことがなかったのですが

 

確か、スタジオジブリの「おもひでぽろぽろ」に出てきましたね。

 

 

 

 

 

宮崎作品は基本好きですが、この映画の登場人物の顔や表情が、声を担当した柳葉敏郎さんと今井美樹さんに寄せすぎていて、ちょっと苦手だったんだよなあ…。

 

 

ストーリーも憶えてないんだけど、主人公が紅花を染料にした染め物に魅了された話だったような…。

 

 

これって、山形の話だったのか。

 

 

山形といえば、今までさくらんぼと芋煮ぐらいしかイメージしてませんでした(*^.^*)

 

 

 

 

 

 

 

河北町総合交流センター サハトべに花は、こんな建物だそう。

 

まるでWindowsのマークと球体のドッキング!🤣

 

 

山形県のほぼ中央にある河北町(かほくちょう)は、人口1万7千人の町。

 

かつては最上川舟運の紅花の集散地として栄え、現在は雛とべに花の里で知られているそうです。

(Wikipediaより)

 

 

河北町総合交流センターにはプラネタリウムやコンサートホールのほかに、図書館や会議室もあり

 

すぐそばには温泉や宿泊施設、体育施設も。

 

紅花はエジプトが原産地のため、つけられた「サハト」とはアラビア語で「広場」の意味。

 

「広場のように誰もが気軽に集える場所を提供したい」という願いがこめられているそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新幹線つばさ号の窓から見える空は快晴。

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米沢を過ぎたあたりから、田んぼにうっすら積もった雪景色。

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この冬初めて雪を見ました。

 

 

 

 

 

 

山形駅に到着。

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山形交響楽団の看板も。

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撮影スポット的なこれは何?と思ったら…

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冬の蔵王の樹氷が絶景で有名なんですね。

 

樹氷のことを「スノーモンスター」って言うんだ。知らなかった(*^.^*)

 

 

 

 

 

 

 

山形からJR左沢線に乗り換えました。

 

 

皆さま、「左沢線」って読めますか?

 

私、「さざわせん」か「ひだりさわせん」だと思っていたんですが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あてらざわせん」だそうです。

 

ニホンゴムツカシイネー👳‍♂️

 

 

 

 

この左沢線、乗ってみてびっくり。

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高校生専用車両?と思うほど高校生で混み合っています。

 

 

そして、座席が長い。

 

車両両端のドアからドアまで1つのシートが続いています。

 

数えてみたらなんと21人座ってました。全部高校生!(*゚ロ゚)

 

 

我が家にも2年前まで高校生がいましたが、今目の前にいる高校生達、東京の高校生と何かが違う。

 

何が違うんだろう?と観察してみたら

 

 

・制服の上に全員コートではなくダウンを着ている。ほとんど黒(時々白)で、前をピッチリ閉めている。

 

・マフラーしてない。

 

・女子は靴下ではなくタイツ。

 

 

寒い土地柄ならではでしょうか。

 

何故マフラーしてないかは不明ですが、コートよりダウンの方が断然あったかいし、生足に靴下なんかじゃ寒すぎてとても無理なんでしょうね。

 

 

メイクもしてないし、みんな黒髪。

 

そして友達同士でもほとんどおしゃべりしていない。

 

そのせいか、なんだか皆さんとても賢そうに見えました。

 

 

ちょうど下校の時間に当たったんですね。本数少ないし、みんな乗る電車が決まっているのでしょう。

 

それにしてもなんで大人がいないの?と考えてみたら、移動手段がこちらでは車なんでしょうか。

 

 

 

…と、高校生率99%の車両に混入した異物気分で電車に揺られていたら

 

窓から見えたホームの駅名の看板がかわいい!ラブ

 

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(撮影する勇気がなかったので画像探しました)

 

 

 

 

ちなみに、終点の左沢は

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ラ・フランス!

 

 

 

 

 

私が降りた駅の看板も

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(これは私が撮影)

 

さくらんぼ!ラブ

 

 

こ、こんな可愛い駅名板が存在していたとは…キラキラ

 

 

 

 

 

左沢線は通称「フルーツライン」。

 

さくらんぼやりんご、ラフランスなどの産地を走っているからだそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、

 

 

今回ワタクシ、ここに来るのをとってもとっても楽しみにしていました。

 

 

なぜなら、公演が発表されチケットを取り、女性一人で泊まれるホテル探していたときに

 

こんなものにヒットしてしまったんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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こ、これは…

 

 

 

う、牛柄の部屋っ!?牛

 

 

和室 12畳 定員1~6名

 

 

なのにお値段は地方都市のホテルよりもリーズナブル。

 

 

 

それにしても、なんで牛柄?

(私のために…?)

 

 

 

 

米沢牛はじめ、牛肉で有名な山形。

 

この部屋は、山形牛に包まれて過ごしたい人のための「すきやきルーム」。

 

 

な、なんて贅沢な…笑い泣きキラキラ

(包まれたい…(///∇//)

 

 

 

 

牛田ファンでこれをスルーできる人がいるでしょうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこのホテル、こんなプリティな「さくらんぼルーム」なるものもあるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても、さすがにこの贅沢な牛さん部屋を一人占めするのは恐れ多い(^^;)

 

今回は相棒を連れてきました。

 

 

 

 

 

チェックインを済ませ、ドキドキしながら旧式の長四角のプラスチックがついた鍵をドアに射し込みました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ…?あせる

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なんかイメージと違う…。

 

 

 

 

 

 

いや、同じなんだけど…

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思ってたよりチーp…

 

 

 

 

 

 

修学旅行で、みんなと泊まる部屋的な…?🤣

 

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いや、充分なんですけど期待の方が大きすぎて…

 

 

予約した日から何ヶ月もずっと楽しみにしてきただけに、自分の中で美化しすぎてたかも…えーん

 

 

 

てか、やっぱ最初の写真と違うよね?

 

 

 

 

 

↓相棒

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雪国だからマフラーしてきたピヨ♪

 

 

 

 

 

 

少しでも気分がアガるかと、牛さんの椅子?の上に相棒を乗せて写真撮影してみましたが

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なぜか気分が下がりました(T-T)

 

 

 

 

 

床の間のこれは、すき焼き風タオル

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部屋のタオルが少なかったので、「お持ち帰りのアメニティグッズ?」と思ってフロントに確認したら

 

持ち帰っちゃいけないやつでしたえーん

(触ってずらしてしまった汗

 

 

 

 

建物に足を踏み入れた瞬間から、なんとなく予感はしていましたが…。

 

 

 

 

 

少し時間があったので、館内を探索してみたけれど、とにかく古い。

 

昭和50年代のかほり。

 

 

そして、人の気配がまったくありません。

 

 

階段のカーペットや壁のシミがちょっと怖い…。

 

 

 

 

 

 

牛に包まれるつもりが、そこはかとないうら寂しさに包まれ

 

この部屋に相棒を一人残していくのは可哀想だったので

 

バッグの中にピヨっとしのばせていきました。

 

 

 

 

 

 

 

駅から出ているバスで行けると勘違いしていた私

 

バスの時間はもうとっくに終わっており、タクシーで行きましたあせる

 

 

 

 

「今日何があるんですか?」

 

と運転手さん。

 

 

道が混んでしまって車が進まない。

 

 

仕方ないので途中で降りて、歩いて行きました。

 

 

 

 

暗くてよく分からないけど、ポスターがあるからここですね。

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見えてきた!田んぼの「田」みたいな建物

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プラネタリウムの大きな球体

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ホールはその隣の建物のようです。

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サハトべに花ホール(807席)

(画像お借りしました)

 

 

ピンクの椅子とカーペット

 

グレーのレンガとコンクリートの壁

 

天井も、舞台の壁もオフホワイトでシンプルです。

 

 

舞台にはオケ用の椅子が並び、左側の奥にピアノが置いてありました。

 

 

 

 

プログラム

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♪モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K492 序曲

 

♪モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466

 

~ ~ ~ 休憩 ~ ~ ~

 

♪ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調「新世界より」作品95

 

 

 

プログラムの間に、今日知ったばかりの6月のデュオ・リサイタルのチラシが挟み込んでありました。

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開演15分前からプレトークがありました。

 

マイクを手にした山形交響楽団の方が登場。

 

 

ちょうど1年前の1月19日、宮城県石巻市のニューイヤーコンサートで牛田くんが山響さんと共演したときも、この方と指揮者のプレトークがありました。

 

とってもお話が上手で楽しいトークだったので、お名前を知りたかったけれど失念し、残念に思っていましたが

 

今回は、ちゃんと憶えましたよ。山形交響楽団専務理事の西澤さんです。

 

 

 

 

 

 

続いて登場した沼尻マエストロと西澤さんの掛け合いが、漫才並みに面白く

 

客席はずっと声を出して笑いっぱなしでした。

 

 

情報量多すぎて全部憶えていませんが

 

「フィガロの結婚」は、召使いを狙う領主の「エロジジイの話」だとか

 

「新世界」は、大阪人からすると通天閣。

 

ヨナ抜き音階なので日本の演歌に通じるものがあって千昌夫の世界だ、とか

 

カールのCMの歌に似ているとかで気持ちよさそうに歌い出したり

 

ドヴォルザークは鉄オタで、第4楽章の冒頭は機関車が走り出す音に似てるとか…。

 

 

車の混雑のため、話を3~4分引き伸ばしてくれと言われたそうですが

 

このお二人ならずーっとしゃべり続けていられそうでした。

 

 

「新世界より」の「より」にはちゃんと意味があり

 

アメリカで大活躍していたドヴォルザークは、3千~5千万円の報酬があったにも関わらず

 

故郷のチェコが大好きで、さっさと帰国してしまった。

 

「新世界」=「アメリカ」から発信された曲だ とか

 

 

モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の第2楽章は、とても美しいメロディで、かつて映画に使われたことがある とか

 

真面目な話もしてくださいました。

 

第3楽章は短調と長調の転調を散々繰り返し、最後は開き直ったように長調で終わる、とも。

(解釈や表現が違うかもしれません)

 

 

 

「ソリストの牛田さんとは、もう何度も共演されてますね。」

 

と、西澤さんが牛田くんの名前を出すと

 

「ウッシーって呼んでるんですけど、彼は今ものすごく人気があって、全国各地からファンが追いかけてくるんです。それを『牛追い』と呼びます(笑)」

 

と。

 

 

 

 

牛追い…

 

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(^^;)

 

 

 

 

5月に軽井沢の大賀ホールで牛田くんとモーツァルトピアノ協奏曲第20番を共演する山響の常任指揮者・阪哲朗さんの名前も何度か出てきました。

 

 

 

それにしても、沼尻マエストロがここまで面白い人とは思いませんでした。

 

 

 

 

 

 

トークが終わり、黒いドレスの女性が譜面を持って登場したので、いよいよオーケストラの登場かと拍手をすると

 

女性はギクリとした様子で、申し訳なさそうに指揮台に譜面を置きました。

 

客席からもちょっと気まずい笑いが起こり、今度は彼女に対して「これは、あなたに対してです」と拍手が。

 

恥ずかしそうに真っ赤になって戻っていく彼女が可愛かったです。

 

 

 

 

オーケストラが登場しました。

 

山形交響楽団と言って、まず私が思い浮かべるのはコンマスの靴の金色の踵と真っ赤な靴底。

 

今日も健在です(^^)

 

 

ホルンがいくつか古いタイプのシンプルなものでした。

 

 

 

マエストロ、今度は眼鏡をかけて登場しました。

 

 

「フィガロの結婚」が始まりましたが、楽しすぎるトークでたくさん笑った後でもあり

 

こんなに面白い人だったのか!という驚きのまま見ていると

 

表情豊かなマエストロの指揮が本当に楽しくて

 

まるで踊っているようで目が離せませんでした。

 

 

 

 

あっという間に序曲が終わり、ピアノが中央に運ばれてきました。

 

スタンウェイです。

 

 

 

 

私が憶えている限りでは、牛田くんは十代の時に、この曲を何度か演奏しています。

 

 

2018年5月

 

 

 

2019年1月

 

 

このときは、ピアノがどちらもYAMAHAでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

登場した牛田くん。

 

黒いスーツの中に黒のタートルネックという、川崎の時と同じちょっとラフなスタイルです。

 

手には黒いタオルを握りしめていました。

 

 

挨拶をしてピアノの前に座り、振り向いたマエストロとゆっくり頷き合いました。

 

 

 

 

 

厚く重く垂れ込めるような弦が奏でる陰鬱なメロディ。

 

この曲は、ピアノの音が登場するまでの77小節、オーケストラのみの演奏が続きます。

 

 

まっすぐに座った牛田くんは、オケの音色に耳をすますように、身を委ねるように

 

上着の袖にそっと片方ずつ手をやりました。

 

 

灰色の雲が、さらに厚く低く渦巻いた頃

 

すーっと息を吸って持ち上げた両手。

 

最初に右手、そして左手。

 

 

悲しくて 優しくて 柔らかな音色。

 

 

嘆き、焦り、疾走感。

 

やがて、優しくオーケストラと呼応し合い

 

ひっそりと野に咲く花のように。

 

 

 

 

 

春。

 

 

やっぱりモーツァルトは春だなあ、と思います。

 

季節の中で、モーツァルトは最も春を愛したのではないかしら、と。

 

 

私の勝手なイメージで言うと

 

ベートーヴェンは冬。

 

ショパンは秋。

 

 

たった1週間前、ミューザ川崎で、同じような角度から牛田くんの演奏を聴いたばかりなのに

 

今日の牛田くんは襟足が長めに感じられ、この前よりもずっと大人びた印象。

 

頬から顎にかけてのラインがシャープです。

 

 

 

再び短調になり、忍び寄る暗い影。

 

迷いや不安の中に、時々左手が紡ぎ出す 決然とした骨太の低音が印象的でした。

 

 

カデンツァの最後の方で、牛田くんの唸るような息が聴こえました。

 

 

 

 

 

 

第二楽章の最初の音を聴いた瞬間

 

温泉に入ったような気持ちになりました。

 

体中の細胞が、ふわりと緩んでいくような温かな音色。

 

 

そういえば、さっきのトークで、沼尻さんも昨日温泉に入ってきたと言ってました。

 

牛田くんも入ったかな。

 

インストで、朝から練習したと言っていた牛田くん。

 

カワイ山形ショップのスタッフの方が、1時間も前からストーブで温めてくれていたという部屋で

 

一人ピアノに向かって練習していた牛田くんの姿を思い描きました。

 

 

 

 

 

ゆったりと清らかで優しい旋律の第二楽章。

 

朝の森で、離れた木々のあっちとこっちで小鳥が会話をしているみたい。

 

 

けれど、森の奥深くに足を踏み入れると

 

木々の緑がいよいよ濃く繁り

 

爽やかで可愛らしい表面のその奥に

 

それ以上立ち入ってはいけない何かを秘めているような気がします。

 

 

 

ほら!沼に足を取られた。

 

優しく柔らかなメロディが、力強い短調に変わり

 

突然見せる泥臭い別の顔。

 

 

モーツァルトの、ひた隠しにしていた闇の部分の素顔を垣間見てしまったような気分。

 

 

しばらくすると我に返り、再び優しく微笑んでいる。

 

そして音色は、より一層クリアになった気がします。

 

 

 

オーケストラとピアノは

 

繊細な小さな砂糖菓子を完成させて

 

そっとお皿の上に置いたそれを差し出すように

 

第二楽章が終わりました。

 

 

 

 

 

間髪入れずに第三楽章に切り替わる瞬間の

 

突然別のスイッチが入って何かが憑依したような

 

牛田くんの迫力が凄まじかったです。

 

 

ピアノにオーケストラの音色が加わると

 

第一楽章よりもさらに厚い雲が空を覆い

 

渦巻きながら流れる様子を高速カメラで見ているみたい。

 

 

 

長調と短調の転調を繰り返し

 

自己矛盾に苛立ちながら逡巡するように展開されていく音楽。

 

抑えきれない怒りや不安。

 

 

 

カデンツァで私がイメージしたのは

 

柔らかな花びらが螺旋状に重なる薔薇の花。

 

神が創った奇跡のような造形美を間近で見ているような気持ちになりました。

 

 

 

右手の長いトリルは、自分の感情を持て余し

 

「誰か助けて!なんとかして!」と救いを求めているみたい。

 

 

 

音楽はどんどん華やかに展開し

 

艶々に磨かれた焦げ茶色の木の階段を駆け上がるように

 

ピッタリ息の揃ったフィニッシュ!

 

 

 

後方から男性の「ブラボー!」の声が上がりました。

 

 

 

 

 

立ち上がり、マエストロと握手

 

コンマス、副コンマスとも握手。

 

正面を向いて、マエストロに手をかざしました。

 

 

 

万雷の拍手の中、袖に姿を消し

 

戻ってきたら挨拶だけして、また袖へ。

 

 

苦笑いのような表情で再び登場した時、一瞬マイクを握っているように見えたけれど

 

手にしていたのは黒いタオルでした。

 

 

 

 

アンコールは、なんと

 

ショパンの革命のエチュードでした。

 

 

 

 

凄かったです!

 

 

同じピアノを弾いているのに

 

さっきまでのモーツァルトと音色がまるで違う。

 

 

違うけど、流れがとても自然で

 

さっきのモーツァルトで発火した情熱の残り火が消えないまま

 

再燃してメラメラと炎を纏いながら疾走しているようでした。

 

 

今日、牛田くんのショパンが聴けるとは思ってもいなかったけれど

 

この流れでの この曲のこんな演奏が、とってもしっくりくる気がしました。

 

今まで聴いた牛田くんのどの「革命」とも違う、叫びのような熱を感じました。

 

 

 

夜の海

 

荒れ狂う大時化の波に揺られる船

 

光る稲妻

 

轟く雷鳴

 

 

特に、鍵盤の上を何度も往来する左手から紡ぎ出される音色は

 

とても人間が生み出しているものとは思えない。

 

大いなる自然そのもののようで

 

音と言うよりも、人間の感情そのもののようで。

 

 

 

さっきまでの漫才のようなトークも

 

フィガロの結婚も、ピアノ協奏曲も

 

全部かっさらうくらい衝撃的な演奏でした。

 

 

 

 

弾き終わり、挨拶をして顔を上げた牛田くんは

 

激しい演奏をしたときに前髪が下りてきたのか

 

前髪に隠れて目がほとんど見えませんでした。

 

 

拍手はなかなか鳴り止まず

 

そのあと2回登場して、自身もパチパチと拍手をしながら

 

オーケストラやマエストロに向かって何度も手をかざしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「革命」に魂を持って行かれた私は

 

後半の新世界がなかなか入ってきませんでした。

 

 

印象に残ってるのは

 

ファゴットの音色がとても美しかったことと

 

トークの時に、マエストロが

 

「やめてよしてやめてよして…」と歌ってたのが

 

ああ、ここだなと、クスッとおかしくなったこと。

 

 

それから、先日聴いたプラハ交響楽団と同じく

 

「遠き山に日は落ちて」のメロディのところで途中止まったので

 

元々楽譜がそうなっていたのか、と自分の無知を実感したこと。

 

 

そして、山響さんにはとても失礼なのですが

 

ちょっとプラハ交響楽団が恋しくなっちゃったことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても、牛田くんが「革命」をアンコールで弾いたのはとても意外でした。

 

 

アンコールで弾いたことのない曲だから、というのもあるのですが

 

リサイタルならともかく

 

オーケストラとのコンチェルトの後で

 

牛田くんは自分がすべてかっさらってしまうような選曲をまずしません。

 

 

彼がもしもその気になったなら

 

彼の持てるテクニックとスター性で

 

聴衆を自分だけに惹き付け、熱狂させるのは簡単なことだと思います。

 

 

コンクールなどでも、もしも彼が戦略的に挑んだならば

 

聴衆や審査員を味方につけるのは、そう難しくないのではないかと思います。

 

 

でも彼は、そういうことをする演奏家ではない。

 

あくまでも作品の持つ真理を探究し

 

作曲家と共演者に敬意を払い

 

演奏会の持つ意味や流れを大切にする。

 

 

彼は、そういう演奏家です。

 

と、私は思います。

 

 

 

なので、翌日の牛田くんのポストで

 

この「革命」がマエストロのアンコールだったと聞いて

 

妙に納得してしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなを逡巡しながら帰りのタクシーに乗り

 

ホテルの前で降りたら、下水溝の蓋の穴から白い湯気が幾筋も立ちのぼっていました。

 

 

空気の冷たさと

 

ここが温泉の地であることを実感しました。

 

 

 

 

 

私以外に宿泊客がいるのかしら?と思いながら

 

階段を下りて大浴場に行ったら

 

がらんとした女湯には誰もいませんでした。

 

 

露天風呂もあったけど

 

あまりに寒くて、とても入る勇気がありませんでした。

 

 

 

 

マエストロの「牛追い」という言葉が

 

小さなトゲみたいに自分の胸に引っかかってました。

 

 

 

間違いなく、私も「牛追い」の仲間です。

 

そのことは事実だから仕方ないのだけれど

 

この言葉の中に「ジャニオタ」とか「スケオタ」のような

 

軽い揶揄の色を感じてしまったから。

 

 

いや、そのことはいい。

 

実際私は彼を追いかけて、全国各地にこうして遠征してるのだから。

 

 

胸がチクリとしてるのは

 

西澤さんがマエストロに牛田くんについて話を振ったとき

 

最初に「牛追い」の話が出てきたこと。

 

 

彼が十代の頃も、イベントに撮影に来ていたテレビ局の放送を見たら

 

当日集まったファンが「美少年ピアニストに群がるマダム達」として描かれていたことがありました。

 

でもあれは、クラシックをよく知らないテレビ局の人達がつくったもの。

 

 

彼の演奏、彼の在り方

 

演奏家としての彼の魅力や素晴らしさが注目される前に

 

こういうことが真っ先に話題に上がってしまうのは

 

もしかしたら自分にも原因の一端があるのかもしれない、ということ。

 

 

ちょっとこれは、考えさせられました…。

 

 

 

 

 

 

 

すきやきルームに戻ったら

 

部屋は暖房が効いてとても暖かかったけれど

 

やけに広々した畳の部屋に一人で泊まるというシチュエーションに慣れなくて…(^^;)

 

 

 

テレビを見ようにも、サイズが小さめなうえに遠すぎる…。

 

文庫本を持ってきたので読書をしようと思ったけれど

 

蛍光灯の明かりが暗めで字が読めない…。

 

 

しかも私、充電器は持ってきたけれど、プラグから直接スマホにつなぐコードを忘れて来てしまったあせる

 

どっちにしても、テーブルや布団からプラグが遠すぎて…(^^;)

 

 

 

ま、いいか。たまにはデジタルデトックスも。

 

 

 

 

 

 

 

 

…って、することがない真顔

 

 

 

 

 

 

期待度が高かっただけに、がらんとした12畳の和室も

 

シミだらけの古い廊下や階段も

 

なんだか惨めな気持ちになって

 

自分がとても安っぽくて愚かな人間のように感じました。

 

 

下調べをちゃんとしてなかったから

 

会場まで片道250円のバスで行けると思ってたのが

 

タクシーで往復6000円もかかっちゃったし

 

 

コンビニで買った夕ご飯のお好み焼きは

 

おいしくなくて半分残しちゃったし

 

 

 

「牛追い」だし…えーん

 

 

 

 

 

 

 

 

することないので、もう寝ようかと布団に入ったら

 

冷蔵庫のファンの音がかなり大きい。

(だから来たとき電源入ってなかったのか)

 

 

冷蔵庫もエアコンも全部切って、部屋の電気を消したらば

 

枕元の照明も何もないので視界真っ暗。

 

 

 

 

ううう…(T_T)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すみません。文字数オーバーになってしまったため

 

次の記事に続きますm(_ _)m