今年のウシダ初めに行ってまいりました。

 

 

 

2023年1月19日(木)19時開演

山形交響楽団 特別演奏会 石巻公演

ニューイヤーコンサート

指揮:齋藤友香理/テューバ:久保和憲/ピアノ:牛田智大

マルホンまきあーとテラス(石巻市複合文化施設)大ホール(宮城)

image

 

 

 

 

 

 

初めて訪れる石巻。

 

それまでの私の中での石巻に関する知識は

 

・宮城の上の方

・海岸

・被災地

・漫画家の何か…?があるところ

 

という非常に乏しいものでした。

 

 

 

 

 

 

年末、美容院に行った時、美容師K藤に

 

「次の牛田くんはどこですか?」

 

と訊かれ (///∇//)

 

 

「石巻。石巻ってどんなところ?」

 

と東北出身(福島)の彼に尋ねたところ

 

 

「なんっっっにもないところですよ」

 

と、力を込めて言われました。

 

 

「あ、でも、漫画?アニメ?の博物館みたいな…」

 

「赤い服に黄色い大きいボタンあるやつだよね?」

 

「そうそう。頭ギザギザした」

 

「007…?」

 

「いや、9じゃないッスか?」

 

「ナントカ森…」

 

「第一章、二章の『章』」

 

 

 

 

二人合わせてやっとこの程度…(^^;)

 

 

 

 

 

 

正解は、石ノ森章太郎の萬画館(代表作:サイボーグ009)

 

 

 

 

 

 

K藤じゃ埒が明かないので、仙台在住のペンフレンドに石巻近辺でオススメの場所があったら教えて欲しい、とメールでお願いしてみました。

 

 

震災の打撃を受けた場所なので、ここを見ておいた方がいいよ、という場所があったら教えて欲しい。

 

ちなみに萬画館はあまり興味がないのでパスする予定です、ということも(^^;)

 

 

 

さすがエリートキャリアウーマン。すぐさま返信が来ました。

 

 

リンク付きで彼女が教えてくれたスポットは次の3つ。

 

 

◆日和山公園
小高い丘の上にある公園で、震災発生時、沢山の人が避難した場所。桜の名所でもあり、旧石巻市内を一望することができる。方角別に震災前の写真もあるので、見比べながら今の石巻を確認することができる。


◆震災復興祈念公園
復興事業で作られた公園。震災がどういう被害をもたらしたのかや、震災の前後を理解することができる。


◆石巻元気市場
石巻でお土産を買うならここ。

 

 

海鮮料理のおいしいお店も教えてくれました。

 

 

 

 

 

 

予約したホテルのサイトの観光案内を見ているうちに、現地のボランティアの方が解説付きで被災地を案内してくれるサービス(有料)があることを知りました。

 

 

どうせ訪れるなら、ちゃんと知りたい…。

 

 

電話をしてみたところ「遅くても1ヶ月前までの予約が必要になります」とのこと。

 

 

そうですよね。仕事や家のことなど日常生活を送りながら、都合をつけて案内してくれるんですから。

 

観光客の思いつきで、直前になってこんな電話をしてる自分が恥ずかしくなりました汗

 

 

 

 

 

距離的に歩いて回るのは無理そう…。

 

 

 

タクシーを貸し切りで回ってみたらどうだろう。

 

 

問い合わせてみたら、30分3220円、60分6440円~とのこと。

 

 

 

お財布的に無理そう…えーん

 

 

 

 

 

 

 

 

それはさておき、

 

 

このコンサートの情報を知って、会場のマルホンまきあーとテラスを検索してみたら…

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

絵本の世界…?!キラキラ

 

 

 

 

この優しげで美しすぎる外観にノックアウト!ラブ

 

実際この目で見てみたい。このホールで牛田くんのピアノを聴いてみたい、と石巻行きを決めました。

 

 

 

 

山形のシェルターなんようホールといい、東北ってどうしてこんなに美しい建物のホールがあるのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

石巻は、仙台から仙石東北ラインに乗り換えて快速で約1時間。

 

 

おおっ!さっそく石ノ森章太郎さんの漫画(多分)のラッピング電車。

image

 

発車のチャイムがなぜにハウンドドッグの「ff(フォルティッシモ)」?

 

すごくミスマッチな気がするけど気のせい?と思ったら

 

大友康平さんは塩竃出身で東北学院大卒。このチャイム、なんと仙台フィルが演奏しているそうです!

 

 

 

 

 

仙石線は海のイメージがあったので、窓から海が見えるのかな?と思っていましたが見えませんでした。

 

まだ築年数の浅そうな家々が立ち並ぶのを見ると、震災でこの辺の地域はどれだけ打撃を受けたのだろう。ここまでになるのにどんなに大変だっただろうと胸が痛くなりました。

 

 

 

 

 

 

到着しました。石巻駅。

image

 

仮面ライダーと009がお出迎え。

 

仮面ライダーも石ノ森先生だったのか!

 

 

 

 

 

 

ホームの壁に大きなイラスト

image

左が石ノ森先生ですね。右は、もしや美化した石ノ森先生…?

 

 

 

 

 

ステンドグラスも009!

image

 

 

 

 

 

 

外から見るとこんな感じ。

image

 

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテルにチェックインして荷物を置き、タクシーで早めに会場に向かいました。

 

一刻も早くあの建物が見たかったんですラブラブ

 

 

 

 

帰りの予約もしておこうかな、と思って運転手さんに確認したのですが

 

「終演後に電話をくれれば大丈夫です。」

 

とのこと。

 

ちょっと心配だったので何度も念を押しましたが絶対大丈夫、と。

 

 

 

ついでにホテルのある市街地から日和山公園や震災復興祈念公園に歩いて行けますか?と訊いたところ、日和山公園なら行けなくはないけれど、復興祈念公園は車で10分くらいとのこと。

 

 

 

そうこうしているうちにタクシーのメーターがどんどん上がり、心配になった頃に白い建物が見えてきました。

 

 

 

きゃー!素敵笑い泣き

 

 

 

 

 

 

 

マルホンまきあーとテラス(石巻市複合文化施設)

image

 

震災で被災した市民会館・文化センターがホールを有する複合施設として生まれ変わり、この建物は、石巻を走る北上川の風景をイメージしたデザインだそう。

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

外側も美しいけれど、中もとっても綺麗です。

 

 

 

スタッフの方に、「館内を見学していいですか?」と尋ねると「ご自由にどうぞ。」と、とても感じの良い対応で見どころをいろいろ教えてくださいました。

 

 

 

 

 

入口の柱には、こんなイラストの案内図。

image

 

震災に備えた水がたくさん置いてありました。

 

 

 

 

 

 

1階にはカフェもあります。

image

 

 

 

 

 

 

 

外が見渡せる休憩スペース

image

 

 

 

 

 

 

インパクトある案内板

image

 

 

 

 

 

 

「便所」!🤣

image

 

 

 

 

 

 

照明は漁船の灯り、カラフルな飾りは漁の浮き球をイメージしてるそう。

image

 

 

 

 

 

 

暗くなってしまいましたが、左はクジラのステンドグラス

image

 

 

 

 

 

 

 

こけしや憧れの松川だるまの姿も。

image

 

 

 

 

 

 

色使いもデザインも、直線なのに柔らかくて優しい。

image

 

 

 

 

 

 

スタッフさんイチ押しの大きな大きな扉。実際には開きません。

image

 

 

 

 

 

 

 

階段をのぼって2階に行ってみました。

image

 

 

 

 

 

 

どの角度から切り取っても美しい。

image

 

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

中央の吹き抜けは、四方から見下ろせます。

image

 

 

 

 

 

 

 

ホールに続くこの大きな階段をのぼった場所で写真を撮る人がとても多いとのこと。

image

 

 

 

 

 

 

 

のぼってみると…

 

 

 

 

 

 

 

綺麗!キラキラ笑い泣き

image

 

星が降ってくるみたい。奥の大きな窓に映る照明が夜空の星のように見えるところまで計算されているらしいです。

 

 

 

 

 

こんな美しいホワイエ初めて。

image

 

演奏聴く前から感動…(ToT)

 

 

 

 

 

 

ここは、天国への入口でしょうか…。

image

 

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

 

 

マルホンまきあーとテラス 大ホール(1254席)

 

今気付きましたが、シートの色グラデーションになってるんですね。

 

 

壁と天井は黒。

 

 

この、モダンでかっこいいホールの前方に

 

突然視界が開けるような、シンプルでぬくもりある木の舞台。

 

 

天井は高く高く、たくさんの板が上に伸び

 

客席とのコントラストでより明るく見えます。

 

 

 

 

舞台には黒い椅子と譜面台、指揮台が設置されていました。

 

 

 

 

 

プログラム

image

 

 

 

 

image

 

 

♪J.シュトラウスⅡ世:ワルツ「春の声」作品410

 

♪ヴォーン・ウィリアムズ:バス・テューバと管弦楽のための協奏曲

 

♪J.シュトラウスⅡ世:トリッチ・トラッチ・ポルカ 作品214

 

♪J.シュトラウスⅡ世:ポルカ:花祭り 作品111

 

♪J.シュトラウスⅡ世:ワルツ「美しく青きドナウ」作品314

 

~ ~ ~ 休憩 ~ ~ ~

 

♪ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58 

 

 

 

 

 

 

 

開演15分前からプレトークがありました。

 

司会の男性は山形交響楽団の方だったと思いますが、すみません、お名前や肩書きを失念してしまいましたあせる

 

 

トークは司会の男性と指揮者の齋藤さんのお二人でしたが、司会の方、ユーモアがあってとっても楽しかったです。

 

 

初めて見る齋藤友香理さんは黒のスタンドカラーの上着とパンツスタイル。

 

 

華奢で颯爽としていて広い額が聡明そう。

 

 

話す口調も雰囲気もキッパリしていて男前。

 

女子校にいたら同性からモテそうな雰囲気です。

 

とういか、既にファンがいるでしょうし、これからも熱烈なファンが増えていく気がします。

 

 

 

新しいこのホールで、オーケストラが演奏したことがまだ少ないこと、

 

今日はニューイヤーコンサートにふさわしいプログラムで、なぜかヨハン・シュトラウスの息子さんの曲が多くなりました、というようなお話しをされました。

 

 

2曲目のヴォーン・ウィリアムズのテューバの協奏曲のソリストの久保和憲さんは登米出身で、地元が生んだスター。

 

2曲続くポルカは、齋藤さんが石巻の皆さんに是非聴いて欲しい曲。

 

第一部ラストの「美しく青きドナウ」は、石巻を流れる北上川をイメージして聴いてほしい。

 

などなど。。。

 

 

 

後半のベートーヴェンピアノ協奏曲第4番は、ベートーヴェンがまだ頑固者のイメージを持たれる前の若き日の作品。

 

若い頃のベートーヴェンは実は美男子で、この曲は美男子特有のロマンティックな曲。

 

 

12歳でデビューした牛田智大さんは、これだけ有名な人だから気難しい人かと思っていたら、ここだけの話ものすごくいい人なんですよ。

 

と、司会の方が話されました。

 

 

 

牛田くんと初共演という齋藤さんも、印象を訊かれて

 

「オーラが繊細で優しい。今日の演奏曲にとても合っていると思います。」

 

と。

 

 

齋藤さんは、山響オケやこのホールの印象を「柔らかい」という言葉を何度も使われてました。

 

「最後の締めをお願いします。」

 

と振られて

 

「音は戻ってきません。『今、ここ』の音楽に共感してもらえるように私も頑張ります。」

 

という言葉に、音楽に対する真摯な責任感を感じました。

 

 

 

 

 

 

拍手の中、オケの方達が登場しました。

 

男性は全員上着の裾が長い燕尾服です。

 

 

おおっ。今日もコンマスの髙橋さんの靴の踵が金色だキラキラ

 

 

 

 

 

1曲目の「春の声」。

 

流れる軽やかなワルツは、よく耳にする曲でした。

 

 

実は、この建物の外観に一目惚れして、たくさん画像を見ているうちに私の胸の内側に生まれた小さな疑念がありました。

 

それは、

 

「こんなにも隅々までオシャレで、見た目に拘ってるということは、もしかして箱(外観)だけ立派で中身(音響)が伴っていないのでは…?」

 

という、ちょっぴり意地悪な不安。

 

 

 

でも、その疑念は一瞬にして吹き飛びました!キラキラ

 

 

私の座った席は、音全体を堪能する場所ではないし、私の耳も肥えていませんが

 

山響さんの演奏が素晴らしいことはもちろん、耳に優しく心地よく

 

新年の明るい曲と布張りのフカフカのソファーのような音の響きに、身も心もほどけていくようでした。

 

 

齋藤さんの指揮は、女性ならではのしなやかさがあり

 

膝を曲げたり、腰を落としたり

 

相当エネルギーを使うだろうな、という全身運動でした。

 

 

波に揺れるように両手を動かす様子は、心地よく波に乗るフラダンスのようでもありました。

 

 

 

 

 

 

1曲目が終わり、舞台前方にテューバのソリスト久保さんの椅子と低い台を男性スタッフが運んできましたが、薄手の黒い手袋が素敵でした。

 

 

 

 

グレーヘアーが元NHKの登坂アナをちょっと彷彿とさせる久保さん。

 

客席に知人の顔があったのでしょうか。親しげな表情で客席に微笑みかけるように登場しました。

 

 

いつもはオケの後ろの席に配置されているのでなかなか見ることの出来ないテューバを近くで見ることが出来て嬉しかったです。

 

よく象の鳴き声などを表現される楽器、テューバメインの音楽は目にも耳にも新鮮でした。

 

ふくふくと角がなく、太っちょのお父さんみたいなどこかユーモラスな音色。

 

直径何センチあるのかしら?と思うような巨大な朝顔みたいなベルに、一筆書きの迷路と4つのキー。

 

あらためてじっくり見ると、楽器ってすごいなあ。

 

 

 

 

アンコール曲は、ホルンやトロンボーンなど、金管楽器だけで奏でられ

 

金管楽器の持つ魅力をここぞとばかりに見せてくれるアップテンポのかっこいい曲でした。

 

 

 

 

2曲のポルカはとにかく明るく楽しくて

 

繊細でささやかなヴァイオリンの音色から始まった「美しく青きドナウ」はウィンナーワルツ独得の拍の引っ張りがおしゃれで心地よかったです。

 

 

1曲目では女性的と感じたマエストロの指揮は

 

ときに男性的で ときに壮大で

 

曲によってバリエーション豊かに表情が変わりました。

 

 

どの曲の時だったか忘れましたが、舞台袖から齋藤さんが登場し

 

指揮台に乗るのと同時に演奏が始まって

 

「今、ここ」の言葉を思い出しました。

 

 

 

ああ、やっぱり音楽っていいなあ。。。

 

 

 

:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩後、席に戻ると舞台中央にスタンウェイが設置されていました。

 

 

 

 

ソリストの登場を待って、静まりかえる客席。

 

 

微かに足音が近付いて、大きな木の扉が開き

 

登場しました、牛田くん。

 

 

黒蝶ネクタイのタキシード

 

手には白っぽいタオルを持ち

 

前髪がかなり長めです。

 

鼻の辺りまで伸びた前髪を分けるでもなく

 

「ちゃんと見えてるのかしら?」

 

と、ウザいオカンのような要らぬ心配をする私。

 

 

 

 

お辞儀をしてピアノの前に座り

 

体勢を整えて

 

両手を持ち上げ鍵盤の上に置くまでの短い時間

 

まるで空気が圧縮されたように

 

オケとソリスト、マエストロの呼吸が一つになったのを感じました。

 

 

この「静寂」の瞬間から音楽は始まっているのですね。

 

 

 

 

まるで静寂の続きのように

 

眠る幼子の髪を撫でるように始まったピアノのソロ。

 

 

オケの音色が加わって、部屋に差し込む朝の陽射しが

 

ゆっくりと壁を明るく染めていく。

 

 

長めの前髪を揺らす横顔。

 

けれど襟足は潔癖なくらいにすっきりと短くて

 

明るい照明の下で、指とうなじがいっそう白く見えました。

 

 

 

形よく粒の揃ったピアノの音色は

 

ダイヤとか真珠の輝きというよりは

 

米とか大豆とか 大地の恵みを感じました。

 

豊かな土に育てられ、人々の命を繋ぐ大自然の宝物。

 

 

 

牛田くんのトリルは絶品だといつも思うけれど

 

水浴びする小鳥の羽のようなショパンのトリルとはまた違い

 

全身に力を込めるあまりプルプルと震える時のような

 

熱と体温のある生身のトリル。

 

 

牛田くんのピアノは繊細だとよく表現されるけれど

 

彼の持つ繊細さは、「脆さ」とは対極の芯の強さを持っていると私は思います。

 

 

 

凜として深く印象的な音色を刻む低音

 

ふるふると小刻みに震えるような高音

 

右手と左手がまったく別の生き物のように蠢いて

 

創り出すそれぞれの世界観の見事な融合と調和。

 

それを縁取るように深みをプラスするオーケストラ。

 

 

 

自分自身と対話して

 

やがて答えの出口を見つけたようなカデンツァ。

 

幾重にも幾重にも輝き広がっていく世界。

 

素晴らしかったです!

 

 

 

 

 

 

弦楽器とピアノだけで展開される第二楽章。

 

 

威圧的に詰め寄るような弦の音。

 

嘆き、諦めたようなピアノの音色。

 

 

ショパンのピアノ協奏曲は、1番も2番も第2楽章がうっとりするほどロマンティックで美しいのに対し

 

このコンチェルトの第2楽章はちょっと煮え切らない感じ。

 

 

焦燥感を募らせる、警報のようなトリル。

 

 

ねえ、決めたの?どうするの?

 

と、こっちがモヤモヤしていると

 

いつの間にかさっぱりして悩んでた事なんて忘れたように始まる第3楽章。

 

 

 

 

私はこの曲の中で第3楽章が一番好きです。

 

 

春の野原で、笑い声をあげながらオケとピアノが追いかけっこをしているような。

 

 

ああ、生きている。血が通ってる。

 

 

音色は次第にくっきりと芯を持ち

 

キラキラと ピチピチと 疾走感と共に踊ります。

 

 

ああ、天上の音色…。

 

嬉しそうに命がはねている。

 

 

 

まだ『楽聖』と呼ばれる前のベートーヴェン。

 

まっすぐで情熱的な一人の青年の姿が

 

髪を振り上げて演奏する牛田くんと重なりました。

 

 

極上のトリルを刻み

 

駆け上がり 躍動し、オケとピッタリ呼吸を合わせてフィニッシュ!

 

 

 

 

立ち上がり、マエストロの方に歩みよって握手。

 

続いてコンマスと握手。

 

 

 

熱を持って沸き返る会場。

 

ブラボーの声があがり、立ち上がる人の姿もありました。

 

 

 

両手を膝に当て 深々とお辞儀をする牛田くん。

 

 

最高!!!

 

笑い泣き笑い泣き笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

 

 

 

 

 

 

カーテンコールで登場した時

 

マエストロの方に片手を伸ばし

 

それに応えて片手を差し出したマエストロと

 

「どうするの?握手?」

 

みたいな感じで二人で一瞬戸惑った末

 

繋いだ手を高く上げました。

 

 

 

ブラボーっ!

 

キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ

 

 

 

 

 

 

 

明るく柔らかな木が息づくような舞台と

 

深く包み込むような客席のホールが

 

建物全体が

 

石巻の街が

 

喜んでいるように感じました。

 

 

 

 

 

 

アンコールでピアノの前に座り

 

構えた両手が交差しました。

 

 

あの曲だ…。

 

 

(T^T)゚。

 

 

 

シューマンのピアノソナタ 第1番 第2楽章。

 

 

 

美しく愛しい思い出を反芻するような右手と

 

支え、励ますように低音でささやく左手の会話。

 

 

ロマンティックというよりも

 

もっと深い、厳しさに似たものを感じます。

 

 

生きているといろんなことがあるよ。

 

辛いこと 大変なこともたくさんあるよ。

 

だけど、歩いて行きなさい。

 

ずっと近くにいるから。

 

いつも見守っているから。

 

 

そんな声が聞こえるような気がしました。

 

 

夜の闇に浮かび上がる白い建物の背景で

 

さっき見た星を思い出しました。

 

 

そして、この曲を聴くときいつも思い浮かぶ白い砂浜が

 

石巻の砂浜と重なりました。

 

 

 

そうだ。この曲は、死にゆく兵士が

 

故郷に遺した愛しい恋人に言葉をかける曲…。

 

 

ドクドクと、血潮のように熱い何かがこみ上げてきて

 

ともすると嗚咽に変わってしまいそうでした。

 

 

 

私には何も出来ない。

 

祈ることくらいしか出来ないけれど

 

明日、この前ネットで知った小さな教会に行こう。

 

大切な家族を遺して亡くなった人たちのために祈りを捧げよう。

 

 

そう心に決めました。

 

 

 

 

 

 

 

終演後、明るい光を放つ白い建物は本当に綺麗でした。

 

image

 

 

 

 

積み木のおもちゃのようなこの建物を訪れるのを、何ヶ月も前から楽しみに憧れてきたけれど

 

石巻の風景がデザインされたものだとスタッフさんに教えてもらってから、よりいっそう愛着が深まりました。

 

 

 

 

 

すぐそばのコンビニからタクシーを呼ぼうと電話をしたら

 

 

「すみません。全部予約済みです。」

 

 

 

 

 

 

嘘でしょ…!

 

 

だから、何度も確認したのに…。

 

 

 

 

もう一つのタクシー会社に電話してみたけれど、

 

 

「すみません。全部出ちゃって1台もありません。」

 

 

 

 

 

 

わ、私、今夜 野宿…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、神様はいました。

 

 

 

 

打ちひしがれた私の様子を見て、声をかけてくださった方がいたんです。

 

 

すぐそばで予約したタクシーを待っていた年配の女性2人組。

 

1人の方が杖をついていたので、ちょっと心配になってお声かけして、さっき一緒に道路を渡ったんです。

 

「よかったら一緒にどうぞ。これも何かのご縁でしょう。」

 

と。

 

 

(ToT)(ToT)(ToT)

 

 

 

 

友人同士というお二人は、なんと津波で家を流された方達でした。

 

 

なかなか来ないタクシーを待つ間、あの日の話をしてくださいました。

 

 

逃げるのに精一杯で、何一つ持ち出せなかたけれど、命だけでもあってよかったです、というお二人。

 

 

私は、何をどう言っていいのか、どこまで聞いていいのか分かりませんでした。

 

 

大の音楽好きというその方達が、再建された新しいホールで今こうして音楽を聴いているという事実。

 

お二人が今日のような時間にたどり着くまでのことを考えると、安直に「大変でしたね。」とか「よかったですね。」なんて言えませんでした。

 

 

 

一人の方は日和山公園のすぐ近くに住んでいるそうで、家からこのまきあーとの白い建物が見えるのだそうです。

 

 

私の泊まるホテルのある市街地から、日和山や震災復興祈念公園まではやはり距離があるらしく

 

「車を運転出来たらご案内したのに。ごめんなさい。」

 

と謝られてしまいましたあせるあせるあせる

 

 

 

 

オーケストラが大好きで、若い頃は本当にあちこち出かけました、というその方。

 

「震災があって、コロナがあって…。今は年を取って、遠出も出来なくなりました。」

 

と。

 

 

 

 

 

牛田くんの演奏会がなかったら、きっと訪れることもなかった石巻。

 

 

被災した方と同じホールで彼の音楽を聴き、こんなふうに直接お話を聞けるなんて…。

 

とても感慨深いものがありました。

 

 

 

タクシーを降りるとき、お金を出そうとしたら、すごい勢いで制されました。

 

「これもきっとご縁です。どうぞまた、ぜひ石巻にいらしてください。」

 

 

 

私の泊まるホテルの近くにお住まいだというもう一人の女性は、ホテルのすぐそばまで私を送ってくれました。

 

おそらく80代で、杖をついておられるのに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

無事にホテルに到着し、部屋に置かれたガイドブックを見ていたら

 

12年前、ペンフレンドからもらってずっと愛用している魚の形のキーホルダーが載っていました。

 

被災地の漁業の復興のために、女川の家具職人が作ったものだそうです。

 

image

 

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

 

 

 

 

この美しい夜のことを

 

きっとずっと忘れないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長くなりそうなので、次の記事に続きます。