ケララでは、家庭料理だけでなく一流のホテルシェフのデモンストレーションも受けました。


ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-アッパムパン


このモビルアーマーのような道具はアッパム(パンケーキ)を焼く道具です。

これは蓋をした状態ですが、このフタ自体が分厚く、これをカンカンに熱しておくことで、

パンケーキの上面にも輻射熱で火が入るというすぐれものです。

プロのアッパムは美味しさもさることながら、何枚焼いても形状・焼き加減が全くブレず

まるでコピーのように焼きあがっていく、何でもないようでいてその実すごい経験値と技術です。

ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-えびマサラ


これは海老カレー。ココナツミルクたっぷりで海老自体からも水分が出るため

調理途中の段階ではかなり汁気があるのですが、それをカラヒ(上の中華鍋っぽいやつ)で一気に煮詰めて行きます。

原価を考えるとハラハラするような光景です(笑)。ちなみに海老はケララでも比較的高級な食材なのだとか。

しっかりと火入れするので、海老はみっしりとした歯ごたえになります。

日本だとどんな海老料理でも、いかにぎりぎりの火の通しで「ぷりぷり」に仕上げるかということに腐心しますが

こちらでは全くそういうことには頓着しません。ここにかぎらずどこの海老料理も「みっしり」でした。

はじめは非常に違和感を感じたのですが、結局ゴハンと一緒に食べるとそのツクダニっぽい食感と濃い旨味が

妙にしっくりくるのも事実でした。

もっともこんな着地が可能なのも、こちらでは冷凍エビなんて使わないってことも関係するかもしれません。

新鮮な生海老だと固くなってもある程度以上は縮まないってのもありますからね。





ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-ミーンモーレー

手前にある綺麗な黄色がミーンモーレーと呼ばれる魚のカレーです。

パウダースパイスはターメリックをごく少量使うだけで、あくまで魚とココナツの素材感を際立たせた

非常に洗練された一品です。こういうシチュー的なカレーはアッパムとの相性が最高。
そのアッパムの縁がレース状の見事な焼き上がりにも注目。


シンプルな献立ですが、緩急の組み立てが見事ですね。

ここにかぎらず、基本、どこで食べても南インド料理は緩急の振れ幅が大きな魅力のひとつ。

ワイルドな料理と繊細な料理、酸味を際立たせたものとまろやかにまとめたもの、塩気のメリハリ。。。

日本ではカレーというととかく緩急の「急」のほうばかりが取りざたされがちだし、もっと言えば

「どれくらい辛いか」「どれだけコクがあるか」この2軸のみで語られがちです。

しかし実はその2軸を逸脱したところにこそカレーの真の魅力があるのではないかと思ったりもするわけです。


ケララ家庭料理レッスン、続きです。

今回の旅行、行く前は菜食カレーが最大の目当てだったんですが、

実際は行ってみて改めてノンベジ(肉や魚介の)カレーも奥が深い、ということに今更のように気づかされるという

嬉しい誤算がありました。そんな中からまずは「チキンシチュー」です。


ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-チキンシチュー


たっぷりの野菜とチキンを少なめのスパイスでじっくり煮込み、ココナツミルクで仕上げた超マイルドな

カレーというかシチューというか、誤解を恐れず言えば「給食のカレーシチュー」を髣髴とさせる一品。

野菜も「ニンジン・ジャガイモ・タマネギ」という日本人のどストライクを突く黄金の組み合わせです。

スパイス使用量が普通のカレーにくらべるとぐっと少ないのもあり辛さはごく控えめですが、

シナモンやカルダモンがしっかり香るのはさすがにインド的。

朝ごはんにもぴったりのほっとする味わいに癒されました。


ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-チキンカレー


で、こちらはオーソドックスなチキンカレー。これはもう誰も裏切らないテッパンの美味しさですね。

そしてインドで鶏肉と言えばイコール地鶏みたいなもんですから、これを骨付きのぶつ切りで煮込めば

美味くならないはずがない、って感じです。

クリスティーン先生のチキンカレーは、先生オリジナルのガラムマサラが味の決め手。

このガラムマサラ、大量のシナモンを軸にフェンネルやクローブが控えめに華を添える、といった感じの

結構珍しい調合だったのですが、その全体に甘い香りが特にココナツと相性バツグンで

帰国してからすぐ真似して作ってみました。

僕が普段作ってるガラムマサラはカルダモンとブラックペッパーをキーにしたどちらかというと

切れ味重視のエッジが立った感じなんで、そのガラムマサラは属性的にもちょうど真逆。

両方持っておけば今後非常に料理の幅が広がるな、とほくそえんでいます。

メラの後にヒャドを覚えたようなもんですね。いやむしろアギの後にブフか?

ちなみにこのチキンカレー、チキンの他にジャガイモが入ってます。先生は、ニンジンも入れるとおいしいよ、と言ってました。さらに言えば仕上げにはマサラに使ったのとは別に炒めたタマネギをテンパリング兼具材として加えていました。

「ニンジン・タマネギ・ジャガイモ」はやはり普遍的なジャスティスなんでしょうか???


ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-いわし


まったくもってダメな写真で申し訳ないですが、一転してこちらはイワシのカレーです。

これは作り方が非常に特殊です。

掃除したイワシを削ったココナツやコカム(すっぱいドライフルーツ)、にんにくしょうが、スパイスなどでマリネしておいたものをそのまま火にかけて後は放置プレイ、という

何やらクックパッドやオレンジページを髣髴とさせるメソドなんですが、これでまあ、ものの見事に仕上がります。

縁側ビールの肴にしたいようなまさに「粗にして野だが卑ではない」素敵な一品でした。



ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-イディアッパム


話は戻って、これは「チキンシチュー」と一緒に食したイディアッパムの調理中。

練った米粉をパスタマシーンのような機械で麺状に押し出し、モンブランのような状態のそれを蒸します。

紫色っぽく色がついてるのはケララ特産の赤米を使っているから。

仕上がりは少しぼそっとするのですがそれがまた素朴でいいものでした。


ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-アッパム


これは同じく朝ごはん用。アッパムというティファン(軽食)の一種です。

生地はドーサにも少し似ているのですが、ここでは自然発酵ではなくイーストを使っていました。

英語だとレイシーパンケーキと訳されるように、ふちは網目模様のパリパリ、中心はふっくらと焼きあがるのは

中華鍋を浅くしたような専用のフライパンの形状ゆえ。この食感のコントラストがいいんですね。

このアッパムを、ほんのり甘く味付けしたココナツミルクに浸して食べる「アッパムミルク」は

素朴ながらしみじみとおいしい一品です。

インドのプルーストはこれを食して哲学的思考にふけるに違いありません。







ケララ州の州都コーチン(コチ)郊外、

クリスティーン先生のご自宅でのケララ家庭料理レッスンより。


インドでは非常に珍しい「イカカレー」。海の恵みが豊かなケララ州ならではの料理ですね。


ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-イカカレー


↑は何をしているところかと言うと、

いったん仕上げたイカカレーのグレイヴィ(煮汁)だけをとりわけて煮詰めているところです。

ダシ的なうま味にはあまりこだわらないようなイメージもあるインド料理ですが

特にこういったノンベジカレーに関してはグレイヴィを、そこまでやるか、というくらい煮詰めて

うま味を凝縮させるという工程を今回何度も目にしました。これはちょっとした発見です。



ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-パルプンテ


↑は何をしているところかと言うと、

カレーの仕上げにバイキルトの呪文をかけているところです。これにより美味しさが二倍になります。

なぜかふしぎなちからでじゅもんがかきけされてしまう日本と違い、インドでは魔法もかけほうだいです。


ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-ここなつけずり


↑は何をしているところかと言うと、先生が大量のMPを使い召還した助手さんが

座卓の端に金物がついたような専用の器具で、生ココナツフレークを削っているところです。

こればかりは日本じゃなかなか再現できないですね。

生ココナツは実にいろいろな料理にたっぷり使います。コクがあるのにクドくない、最高の調味料です。



ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-まんじゅう


そのけずったココナツと粗糖(ジャガリー)を混ぜただけのあんを、米粉の皮で包んでいます。これをこのあと蒸します。

シンプルこの上ないデザートですが、これがとんでもなくうまいんです。

上手にマーケティングすればかつてのティラミスをしのぐ大ブームを巻き起こしてもおかしくない、

それくらいスゴいです。

ただし新鮮な生ココナツが必須、削りたて蒸したてが命(粗糖が溶け切らずジャリっとした食感のあるうちがうまい!)、とプロダクトとしてはなかなかにハードルが高いですね。



ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-アヴィヤル


削った生ココナツでもう一品。一見「しもつかれ」のようにも見えますが

アヴィヤルというケララではとてもポピュラーなベジタリアン料理。

普通はヨーグルトの酸味が加わるレシピが一般的ですが、ここのはそれ自体に酸味のある

青マンゴーを野菜のひとつとして加えることで酸味を演出しています。

じゃがいもやニンジンなどの他、青バナナやドラムスティックといった独特の野菜も使われていますが、

インドの野菜の「味の濃さ」を実感できる一品でもありました。

オイルで加熱して使うことの多いマスタードシードが、生のまますりつぶされて加えられており、

ツンとしたほのかな辛味もアクセント。実は非常に繊細で技アリな料理でもあります。