『イレッサ』は英国アストラゼネガ社が開発した「肺がん治療薬」であり、「がん細胞の特定の細胞だけを攻撃するため副作用が少ない」と言う夢の新薬として脚光を浴びた薬である。
しかし、その副作用で亡くなった2遺族が東京と大阪で「薬害」としてア社と国を相手に損害賠償を求めた裁判が12日に最高裁判決が出ました。
争点は、イレッサには間質性肺炎を発症する危険性があるにも関わらず、添付文書での注意喚起が不十分であったことを原告が追及。
ア社は輸入承認時に医療機関向け添付文章の「重大な副作用」の4番目に間質性肺炎を記載してある。
しかし、原告は、PL法上の「指示・警告上の欠陥」があると主張していた。
1審の東京地裁では「医師らに対する情報提供として不十分」とア社の責任を認定し、国に対しても「行政指導すべき」と国賠法上の責任を認め1760万円の支払いを命じた。
2審の東京高等裁判所では、国内の臨床試験で間質性肺炎の死亡例がなかったことから「添付文書の記載が不十分だったとは言えない」とア社と国の責任を否定、原告が上告したため最高裁での判決となりました。
【結果】
4月2日に、最高裁で国の責任を否定。
12日に「イレッサを処方する医師は、添付文書を読めば副作用で死亡する危険性があることは認識できた」との判断を示し、遺族側の上告を退けたことで決着。
抗がん剤には死亡リスクがあることは厚労省は周知の事実であったが、医療の現場では、それを上回る恩恵があることに望みをかけて処方していたことになる。
日本医療の一番の問題は、「副作用」について話さないこと。
米国の訴訟社会では、医師は先に診断結果を告げて、治療方針を述べます。
その対処として選択される薬のリスクについて一番先に伝えます。
その上で本人にどうするかを選択させます。
ですからセカンドオピニオン制度が発達するのです。
ところが日本の医療では、これまで薬のリスクについてまったく触れませんでした。
まして、死亡リスクがある薬なんて聞いたこともありませんよね。
ですから、副作用を抑えるための薬が出て、その薬の副作用を抑える薬が出るということが現実に起こっています。
今回の2遺族も「イレッサを服用する前に医師からの副作用の説明は全く無かった」と言っています。ここが問題なのです。
ですから、本来の争点はここだと思うのですが、言った言わないを証明できないため「説明責任を問えない」から、PL法や国賠法に訴えたのでしょう。
しかし、残念な結果ですね・
医療従事者は薬についての副作用を学んでいるのですから、しっかりと伝えなくていけないと思います。
現在日本では、イレッサ服用患者は9000人います。
お気を付け下さいと言いたいですね。