全国各地を縦横無尽に延びる日本の国道。その中でも国道=酷道(ひどいみち)と呼ばれている道が全国に多々ある。今回、その中でも、特に酷い酷道を走ってみることにした。四国の徳島県徳島市から高知県四万十市を結ぶ国道439号線(愛称ヨサク)は、日本三大酷道の1つと呼ばれているのをご存じであろうか。その特筆すべき点は、総距離が348kmあり、走破する為には約12時間の時間を要すること。また、名だたる難所(峠)をいくつも越えないといけない。並々ならぬ覚悟が必要だ。
国道の証であるおにぎりはご覧のとおり。傾き、ボロボロだ。国道である存在を忘れられたかのようである。このおにぎりは酷道439号線の過酷さを象徴している唯一無二の存在。
峠道ともなると、ガードレールなしの狭路を走ることにもなる。車が来たら離合困難で、どちらかが後退するしかない。全線を走破するには、杓子峠(465m)、矢筈峠(750m)、京柱峠(1,123m)、見ノ越(1,410m)、川井峠(700m)を通過しないといけない。酷道のレベルに差はあれど、全体的にハードな峠越えになることを想定しておいた方がよい。峠に差し掛かるとハンドルを握る手に力が入る。
薄暗い杓子峠越え
これはもはや国道ではなく林道レベル。昼間でも日の光が差し込まず薄暗く、ライトを付けないと危険だ。また、道への堆積物が多く足元に気を取られ、時速20~30kmでの走行を余儀なくされる。非常に時間がかかる峠越え。
杓子峠頂上
狭路の峠越えで注意しないといけないことは、対向車との離合。酷道ではあるが、ここは列記とした国道(一般道)である。杓子峠では2台の軽トラと遭遇。後退も困難で、わずかなスペースに車を持っていき離合することとなりヒヤリとした。
一車線の狭路が執拗に続く。何度「くどい!」という言葉を吐き捨てただろうか。信じられないだろうが、この狭さがいたって普通。10時間超のドライブに狭路が相まって、精神的に疲れる。疲れない人など果たしているのだろうか?
京柱峠越え
自然と隣り合わせの道である為、自然災害は多く、窪んだ道も少なからず存在する。悪路を避けては通れない。制約はあると考えてよい。復旧工事の時間帯通行止め。京柱峠、見ノ越は冬期通行止め。ベストシーズンは4月~11月(梅雨の時期を除く)。
京柱峠越え
急カーブ、急勾配、狭路に辟易させられる京柱峠越えだが、薄暗い杓子峠越えとは対照的に、視界が開けているせいかドライブは楽しい。四国の農村風景を間近で見物できるのも良い。気持ちが晴れる区間。
京柱峠頂上
酷道439号線のハイライト、京柱峠越え。この峠を境に土佐の国、阿波の国へ分かれる。全国を代表する峠越えの1つであろう。ハードではあるが、一生に一度は訪れたいものだ。
奥祖谷を走る
酷道439号線は奥祖谷二重かずら橋、剣山がある奥祖谷地方を結ぶ重要な道。その分、対向車との離合の機会も増えていく。ただし道は狭路だ!細心の注意が必要となる。
奥祖谷の名頃かかしの里
奥祖谷を走行中、突如かかし達が現れる場所がある。あまりのリアルさに最近は人間かと思うが、違う、かかしだ。その場になんの違和感もなく佇むかかし達に、少し不気味さを覚えた。
見ノ越~コリトリ
見ノ越(剣山)~徳島間は、国道(酷道)438号線との重複区間となる。地図にも記されていない「コリトリ」という不思議な地名があった。標識にはちらほら顔を出すが、実際にその場所を確認することはできなかった。酷道439号線の中で一番の謎だ。
見ノ越へ向けて
ルート随一の高所 見ノ越はご覧のとおり。道の横は足がすくむ断崖絶壁の危険地帯。落ちたら命はないだろうなと考えてしまう。気持ち程度で設置されているガードレールは頼りない。
狭路を刻むヨサク
昼食をいただいた道の駅 633美の里
酷道に疲れたら道の駅で休憩を。酷道439号線沿いには4つの道の駅(温泉の里神山、土佐さめうら、633美の里、四万十大正)がある。営業時間内に辿り着けるのは3駅がギリギリ。それだけ長時間ドライブを要する。
徳島市から四万十市へは遠い道のり
四国の山岳地帯を下道で横断。Google Mapで算出された9時間では到底無理。休憩・写真撮影などを考慮すると、約12時間以上は時間を要する。運転技術もさることながら、相当な気力が必要だ。計画的に走りを進めないと、疲労困憊での途中リタイヤもありえる。酷道439号線の全線走破は決して甘く考えない方がよい、一筋縄ではいかない。
全国の酷道シリーズ
◆ 酷道488号線 【広島県廿日市市~島根県益田市】
◆ 酷道265号線 【宮崎県椎葉村~宮崎県小林市】