特別待遇の「鞄」 | 今だから話せるウルトラクイズ裏話

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17年にわたって放送された「アメリカ横断ウルトラクイズ」。構成作家として最初から最後まで関わってきました。放送出来なかったエピソードや裏話を思い出すままに綴っていこうと思います。

メリカ横断ウルトラクイズは毎年何万キロもの旅をします。
以前も書きましたが、撮影のための機材や美術のセットなどを入れた大、中のジェラルミンのケースが、120個~130個
それにスタッフの私物のスーツ・ケースが70~80個と膨大な量の荷物が飛行機やバスに載せられて移動します。

ういった荷物の中で1つだけ、絶対に手元から離せないケースがありました。
飛行機の中でも、バスの中でも必ず手元に置いて、絶対に荷物として預ける事はしません。
ホテルに着いても真っ先にこの鞄が部屋に運ばれ、それから荷物運びなどの作業にかかるのです。

↓問題担当チーム

ウルトラ_問題チーム


真の3人はクイズ問題を担当する放送作家ですが、左のH君が腰掛けているジェラルミンのボックス型の鞄がそれです。(因みに中が私、右がO君)

問題ケース


鞄の中には番組で使う全てのクイズ問題の原本が収められているのです。

ならパソコンにデータを入れておけば済む話でしょうが、当時はそんな便利なものはありませんでした。
従って、若しこの鞄が途中で紛失してしまうと、クイズの旅が出来なくなってしまうのです。
それこそクイズ問題を担当する私達にとっては、命よりも大切な鞄だったというわけです。

リバートン製のZEROの鞄ですが、なぜZEROかというと頑丈にして、例えば海に落ちても水が沁み込まないという神話から、この鞄が選ばれました。 
また、この鞄は他のスタッフが勝手に蓋を開けることが出来ないように、ロックされています。

真でもお判りのように、H君が何気なく腰掛けているようですが、実は番犬のように、リハーサルの間も手元から離さないように守っているのです。
そして中には1万問を越える問題が詰め込まれていました。

故そんなに沢山の問題が入っているの?
と不思議に思われるでしょうが、実は放送されるのはほんの一部分で、実際のロケでは誰も答えられずに、延々と問題が読み上げられる事があるのです。

どい時には、10問15問と誰も答えずにだんまりが続く事もありました。
しかも、1回読み上げられた問題は、2度と日の目を見ることがありません。

まり、挑戦者がお手付きを恐れて、慎重になり過ぎると起こる現象で、問題を作成する人間の立場からすると、涙が出るくらいもったいない話だったのです。

故ならば、前にも書きましたが、作られた問題に誤りが無いか、2重3重の調査が行われ、それで「大丈夫」となったところで初めて採用となります。
実に何人ものチェックマンが足を使い、時間をかけて完成させるわけで、それが一瞬の内に消えてしまうのですから、悲しくなります。

それほど、クイズ問題は大切な財産であり、だからこそ旅の間中、絶対に手元から離れる事が無かった特別待遇の荷物だったのでした。