8月29日(金)事前合宿2日目
午前の活動
今日は午前中に順天堂大学の下見、午後に羽田空港の下見をする予定です。
朝7時半に朝食を済ませ、8時半にホテルを出発。9時10分ごろに順天堂大学に到着しました。
順天堂大学での下見と調整
順天堂大学では、この事前合宿をご担当されている杉林先生と棒高跳コーチの岩川さんにお出迎えいただき、陸上競技場やウェイト場など、大学の主要施設を見学させていただきました。
私は順天堂大学を訪れたのは初めてでしたが、陸上競技場、ウェイト場、フィジオルーム、クリニックなど、本当に施設が充実しており、「さすが順天堂大学」と感心しました。
事前に、オーストラリアのカーティス・マーシャル選手から「助走路の長さが最低でも50m欲しい」という要望がありました。
そこで順天堂大学の棒高跳助走路の長さを実際に測ってみると、45mしかありませんでした。
このため、場合によっては順天堂大学以外の競技場での跳躍練習も検討する必要があることがわかりました。
その後、順天堂大学から車で約20分の岩名運動公園陸上競技場にも足を運び、こちらの施設も確認しました。
岩名陸上競技場では助走路が50m確保できることがわかり、候補の一つとして検討されました。
ただ、砲丸投のピットを確認したところ、長さが20mしかありません。
ニュージーランドのトム・ウォルシュ選手は自己ベスト22m90、練習でも21mは普通に投げるそうで、この競技場で投げるとトラックまで飛んでしまう恐れがあるとわかりました。
そのため、砲丸投については順天堂大学で練習することが決まりました。
ニュージーランドの人はコーヒーが大好き!
いくつかの施設を見学する中で、特に印象に残ったのが杉林先生の研究室を訪れたときの出来事です。
ニュージーランドのスタッフたちは、研究室に置かれていた本格的なコーヒーミルマシンを見つけて大興奮!
「すごい!」「写真を撮ろう!」と皆で盛り上がっていました。
後から知ったのですが、ニュージーランドにはカフェ文化が非常に根付いており、コーヒーは生活の一部なのだそうです。
私は事前合宿の前から棒高跳の選手たちと連絡を取り合っていましたが、頻繁に「ホテルの周りに良いカフェはあるか?」と聞かれました。
合宿中や試合期間中は、選手やコーチたちとWhatsAppのグループチャットで情報共有をしていましたが、その中でも「どこに良いカフェがあるか」という話題がよく出ていました。
大会本番で品川のホテルに滞在していた時も同じで、選手たちは試合当日の行動予定を文書にまとめる際に、スケジュール表の中に「〇〇時〜〇〇時:コーヒータイム」と記載していたほどです(3人全員)。
コーヒーへの情熱に、思わず笑ってしまうほどでした。
午後の活動
施設見学を終えた後、ホテルに戻って昼食を取りました。
ホテル1階の中華料理店でチーム全員と食事をしました。
中華のお弁当のような形式でしたが、ニュージーランドの皆さんはとても喜んでいて、「日本人は毎日こんなにおいしいものを食べているのか!」と驚いていました。白いご飯に醤油をかけて食べていたのが印象的でした。
お弁当を開けた瞬間の「ワオ!」という反応は、今でも忘れられません。
昼食の後、スコット・ニューマン監督とフィジオのルイーズさんと一緒に、近くのスーパーマーケットへ買い出しに行きました。
スーパーマーケットやホームセンターなどをいくつか回りましたが、二人とも値段の安さ(特にお酒の値段!)にとても驚いていました。
必要なものを無事に揃えることができ、二人ともとても満足そうでした。
その後、少し休憩を挟んで16時ごろにホテルを出発し、羽田空港の下見へ向かいました。
羽田空港の下見が必要だった理由は二つあります。
一つ目は、私自身が羽田空港に車で行くのが初めてだったため、どのくらい時間がかかるか確認したかったこと。二つ目は、最近ニュースで「羽田空港の駐車場が混雑している」という情報を聞き、不安があったためです。
また、31日以降には棒高跳の選手たちが順次羽田空港に到着する予定だったため、どこでポールを車に積むのかも事前に確認しておく必要がありました。
今回は、スタッフのブリアンナさんの希望で、東京湾アクアラインを通るルートで羽田空港に向かいました。
今日も非常に充実した一日でした。
スタッフの皆さんから「本当にありがとう」と何度も感謝され、大きなやりがいを感じた一日でした。
「もっと頑張ろう」と心から思えた日でした。
8月30日(土)事前合宿3日目
今日も朝7時半に朝食をとり、8時半ごろにホテルを出発して、砲丸投のトム・ウォルシュ選手とコーチのハイデンコーチを出迎えるために成田空港へ向かいました。チームリーダーであるスコット・ニューマン監督が一緒でした。
スコット監督は、以前ニュージーランド陸連のCEO(最高経営責任者)や、他のスポーツ競技でもCEOを務めていた方です。
車中では、チームリーダーであるスコット・ニューマン氏が車の助手席に乗り、いろいろな話をしました。
彼の言葉の中で特に印象に残ったのは、
「コーチにお金をかけなければいけない。選手に投資することも大切だが、選手は数年で引退してしまう。しかし、コーチにお金をかければ、そのノウハウは残る。次の世代を強くすることができる。だから良いコーチを育てるためにお金を使うことも大事なんだ。」という言葉でした。
深く共感しましたし、とても勉強になりました。
トム・ウォルシュ選手の到着
成田空港には9時30分ごろ到着し、トム・ウォルシュ選手とハイデンコーチを出迎えました。
トム・ウォルシュ選手は、
・世界陸上:金メダル1回🥇
・世界室内:金メダル3回🥇🥇🥇
・オリンピック:銅メダル2回🥉🥉
・ダイヤモンドリーグ・ファイナル:優勝4回🏆🏆🏆🏆、
という驚異的な実績を持つ、砲丸投界の第一人者です。
初対面のときは、その体格に圧倒されてとても緊張しました。
しかし話をしてみると、とても気さくで明るい人で、すぐに冗談を言い合える仲になりました。
合宿中は彼が私の車の助手席に乗ることが多く、いろいろ話をしました。
ただ、私の英語力がまだ十分ではなく、彼のニュージーランド訛りの速い英語を聞き取れないときもありました。
「もっと英語を勉強しなければ」と痛感しました。
トップ選手の習慣と哲学
印象に残っているのは、彼の朝の過ごし方です。
トム選手はほぼ毎朝、朝食会場の近くのスペースで軽いトレーニング(コンディショニング)をしてから朝食を食べていました。
世界トップレベルの砲丸投選手ということで豪快で細かいことを気にしないのかなと勝手なイメージを持っていましたが、実際は地道にコツコツと取り組むタイプでした。
また、トレーニングの内容や時期ごとの調整方法についても、詳しく教えてくれました。
その中で印象的だった言葉が、
「トップ選手にとって大切なのは、柔軟に対応すること。そして何より重要なのは“Stay healthy”(怪我なく、健康でいること)だ。」
というものでした。
この言葉は多くのトップ選手やコーチが口にしますが、改めてその意味の深さを感じました。
今日の昼食も中華レストランでの食事でした。
昼食はこの日もホテル1階の中華レストランで、みんなで楽しく食事をしました。
その後少し休憩を取り、トム選手とハイデンコーチ、スタッフの方々を連れて順天堂大学の競技場の下見に行きました。
現地では、順天堂大学の学生の皆さんが、ニュージーランドとオーストラリアの事前合宿のためにテントの設営や清掃などの準備を進めてくださっており、本当にありがたいと感じました。
この日以降も、順天堂大学の皆さんには事前合宿中ずっとお世話になりました。
順天堂大学からホテルに戻り、少し休憩をしました。
若き才能との出会い
順天堂大学からホテルに戻って休憩した後、夕方には再び成田空港へ向かい、クレイグ・カークウッドコーチとサム・ルーセ選手を出迎えました。
サム・ルーセ選手は、16歳の若き1500mランナーで、世界史上最年少で1マイルを4分未満で走った選手として知られています。
1500mでは3分41秒25という驚異的な記録を持ち、U15の世界記録保持者でもあります。
今回は世界陸上の出場メンバーには選ばれていませんでしたが、後日到着するサム・タナー選手のトレーニングパートナーとして、そして将来を見据えて貴重な経験を積ませるために代表チームとともに派遣されたそうです。
選手1人を国際大会に帯同させるには、多くの費用がかかるはずです。
それでもあえて若手選手を派遣するところに、ニュージーランド陸連の強化方針——「将来への投資を惜しまない姿勢」がはっきりと表れていると感じました。
この日の仕事は夕食で終了。
いよいよ明日から、選手たちの本格的なトレーニングが始まります。
緊張と期待が入り混じる中、充実した1日を終えました。
(その3へ続く)
















































