【 白い 曼珠沙華 】 | 高山右近研究室のブログ

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監修 右近研究家・久保田典彦
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● “ 白い彼岸花 ・ 曼珠沙華 ” について、コメントで おススメをいただきましたので、図書館に行って、借りてきました。

 

          【 春の城 】 石牟礼道子 ・ 著

 

 [ 春の城 ] は、1998年に 「 高知新聞 」 「 熊本日日新聞 」 などに

連載された 長編小説。

 

 第二章の “ 赤い舟 ” の前半部分に、記されていました。

 

● お美代は、白い曼珠沙華の前に座りこんで動かぬ夫の後ろ姿を

見つけておどろいた。背中や両の肩から 見えないほむらが、しんしんと立っているやに見えたからである。

 「 お前さま、お前さま、いかがなされやしたか」

 

 よくよくのことがあったに違いなかった。黙って気づかっていると、

背中を見せたまま、夫が白い花を指さして言った。

 「 ほれ、咲いたぞ。今年も 」

 「 あれ、目に入り申したか。何にも目に入らんような お顔の色じゃったが 」

 清々とした曼珠沙華の白だった。

 「 これが咲いたからにゃあ、間もなく、彼岸じゃ 」

 「 この白か曼珠沙華、加津佐の ばばさまから頂いて来て、何年に

なりましょうぞ 」

 加津佐とは、口之津の隣にある村のことである。

 

 「 加津佐の、ああ、兵庫どのの ばばさまが下さいたよな。十年あまりにもなろうぞ。毎年よう咲く 」

 「 球根をなあ。赤じゃござんせぬ、珍らしか白花でござりますというて 」

 「 うむ、白花じゃったわい 」

 仁助と お美代は 白い曼珠沙華を見ながら、しばし時を忘れた。

 

 「 お前さまは その時、こう申さいた。この球根、慈姑 ( くわい ) 芋に似ておるが、いざという時、食べられ申すかと 」

 「 いうた、いうた 」

 「 ばばさまが ころころ笑うて、無理に食べようと思えば、毒抜きをして

食べられぬでもござりやせんが、まずは 花を楽しみにして、育てて下

さり申せ、といわれましたなあ 」

 

 「 今も花 見ながら、この球根、みなの腹の足しになるやもしれんと思うておった。しかし、わが家の人数のひと鍋分にも足るまいな 」

 「 ほんになあ。ばばさまが、そんとき申されやした。赤花もよかなれど、これは白で、やさしか花じゃ。あの世にゆくのに、送り迎えしてくれる花じゃわいなと 申しそえられたが、食うたら当たるやもな 」

 「 お前は よう覚えておるのう 」

 「 はい、花のことなら。ほれ、もう立たれませ。茶をいれましょうぞ 」

 美代が笑いながら差し出す手にすがって身を起こした。仁助には

珍らしいことだった。

 

 

 

 

● 『 苦海浄土 』 と 「 春の城 」。 水俣と天草。

 天草で生まれて 水俣で育った 石牟礼道子。

 

 「 今も わたくしの中で、天草 島原事件は 続いています。」

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/石牟礼道子

 

 

 

※ 今日 ( 9/22 )、せっかくいただいた [ 大分の柚 ] ですので、

 何か工夫をしたいと思って、 【 柚ジャム 】 にしてみました。

 

 

 

 

 

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