リリーは未亡人? | 魔法石の庭ver.2

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スピリチュアル界と、ちょっとパワーストーンブログになっています。

 どうも私は、定期的にスピリット界に降りないと体調が良くなくなるということを覚えたので、久しぶりにスピリット界のことを書きます。

 おかげで、先月2回しか仕事行ってないですよ……なんか、ものすごい疲労感があるんです。スピリット界に行くと、ちょっとはマシになるんですけど。

 

 で、あっちに降りたら、そこは廊下でした。ふかふかのえんじ色のカーペットが敷き詰められているのですが、スピリット界にはあんまり暑いとか寒いとかないようなので、まあ季節感はどうでもいいのかもしれないと思い直します。

 

 すると、向こうの方にサーシャが掃き掃除をしているのが見えます。スピリット界は一応、現実世界の超先端文明もあるらしいので、ルンバとかもありそうですが、サーシャとリリーの吸血鬼姉妹ははそういった機械系の操作は苦手としているようです。

 

 そこで私は、思いっきり走って行って、「サーシャアアアアア!」とサーシャの胸を両手で揉む……というか、揉むほどないので掴みます。

「え、は、ええ?誰?かみな?」と戸惑っているサーシャを、今度はぎゅーっと抱きしめます。

 サーシャはローティーンぐらいの幼女の姿なので、私は自分の子供をだっこしているような気になります。

 

「サーシャアアア!今までほっといてごめんねええええ!もっと構ってあげるからねええええ!」と、胸を揉み揉みすると、サーシャは「や、止めなさいよ!怒るわよ!?」というものの、その手は空を掻いています。

 

 すると。

 

 背後から、ものすごい殺気のようなオーラのような塊が。

「……かみな様。サーシャの触り心地はいかがですか?」

 そう、妙に優しげな声で言われ、おそるおそる振り返ると、そこには巨乳……じゃなくてリリーが立ちはだかっています。

 

「リリー……これはね、ほら、私、リリーによくこういうのやってたからさ、サーシャにもやらないと失礼かなーって……おも、って……」

 そう私が弁解すると、リリーは、「ええ。私のことは大丈夫ですよ?バツイチですから。でも、サーシャまで巻き込むのなら、ちょっと見逃せないですねえ……」と、言って、持っていたモップの柄を鼻先に突きつけてきます。

 

「ご、ごめんなさい……」と、私は、リリーの初めて怒った顔を見て、サーシャから手を放します。

「ほら、もう近づかないです。1メートル以内に近づかないから許してください」と言うと、リリーは、ようやくいつもの柔和な笑みを浮かべて、「もう。でも、サーシャを私と同じように扱ったらだめですよ?」とモップを戻します。

 

「……ん?リリー、バツイチって……紅星石さんとの絆は切れちゃったの?」と聞くと、リリーは左手の薬指を撫でながら「ええ。紅星石はもう戻ってきません。それに、存在自体が抹消されてしまった今、エンゲージリングも切れてしまいました」と少し寂しげな様子で言います。

 

っていうか、この吸血鬼姉妹、めっちゃ怖いよ!でも、サーシャは子猫が威嚇してる怖さと可愛さで、リリーは本気で怖い感じ。

 腰までの銀の長髪に、赤い瞳なのはそっくりなんですけどね。

 

「んー……バツイチってよりは、未亡人って感じだけど……」と私が言うと、「いいえ。最後は私がこの『嵐が丘』に戻ってくると決めたので、バツイチですよ」とリリーは無理に笑みを作って見せます。

 

「私、もう辛くないです。かみな様も姫もサーシャも、皆いますしね。それに、吸血鬼って丈夫なんです。精神も。だから、大丈夫ですよ」と、リリーが無理をしてみせるので、サーシャは「お姉ちゃん……」とリリーのミニスカメイド服の裾をぎゅっと掴んでいます。

 

「うん……まあ、ここの館の皆はリリーの家族だと思って、ゆっくりしなよ。男の人もさ、もしかしたら少しずつ苦手じゃなくなるかもしれないじゃん。リリーの好きなことをやっていいからさ」と言うと、リリーはくすっと笑って、「私は、以前も今も、皆さんのことは家族だと思っていますよ」と言いました。

 

 良かった、無理にじゃなくて笑ってくれて。私は、そう思いましたよ。