ブンケイと牛若丸(4) | ウカの小説掲示板(仮)

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マターリして行ってね⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーン

教室を勢いで飛び出したはいいものの、心当たりがあるわけではない俺は、


とりあえず廊下には二人はいないことを確認し、次にどこにいくか思案した。


時計を見ると時刻は8時20分。


もうすぐクラスルームの時間だ。


その頃までには、おそらく戻ってきているのではないかという楽観的観測


もあるのだが、万が一、もし万が一、リョーマがあの幽霊に拉致されたのだと


したら…?


俺は頭に浮かんだ嫌な想像を振り払いつつ、3階の廊下を突っ切り、


階段を駆け下りて、下駄箱の前までやって来た。


リョーマの靴箱を見ると、


お気に入りのコンバースのスニーカーがきちんと入っていた。


どうやら外には行ってないようだ。


(幽霊に拉致されていたとしたら全く関係ないのだが)


だとすると、この学園内にリョーマはいるということになる。


!!


その時、奇跡的に俺が背後から飛んでくるモノに気づけたのは、


運が良かったとしか言えない。


決して速くはない反射神経でかろうじてそれをかわし、崩れかけた体制を


整えようと、右手を地面に着いたその時、俺の左頬に冷たい物が当たる


感触がした。ピタリと吸いつくように頬に当たるそれは、不気味な輝きを


ギラギラと放っていた。マジか…確実に銃刀法違反だろ、これ。


刃渡り20センチはありそうな刀が俺の頬に当てられている。


少しでも動くと、その鋭い切っ先が俺の頬を貫通することは間違いない。


左後ろに人の気配がするので、その持ち主は俺のすぐ後ろにいるはずである。


くそ…ここからじゃ、いまいち距離感がつかめない。


俺が賭けに出ようかどうか迷っていると、


「動くな。動けば命はないぞ。」


という声が背後からした。


想像していたよりずっとその声は若く、軽く驚きを覚えた。


その声で俺は恐怖心よりもむしろ好奇心の方がむくむくと膨らみ、


おそるおそる尋ねてみることにした。


「…ひとつだけ質問してもいいか?」


「なんだ?」


「リョーマをさらったのはお前なのか?」


「?…あぁ、あの小僧なら、私の後ろを尾けてきたので眠らせた。」


「!?」


「心配するな、命までは取っていない。そもそも私の方こそ


 わけのわからぬことばかりで、いささか質問したいことがある」


そう言うと、俺に殺気がないのを確認したのか、戦闘になれば


自分の方が優位だということが分かったのか、頬に当てられていた


刀はゆっくりと遠ざかって行った。これで、とりあえずの危険はなくなった。


今考えると、あそこで賭けに出なくて正解だったかもしれない。


ほんの数秒の間の出来事であったが、こいつには得体の知れない


狂気というか、禍々しいまでの殺気がある。


おそらく反撃に出ていたなら、その切れ味抜群と思われる刀で以って


一刀両断にされていたであろう…。


半身を起き上がらせ、振り向くと、やはりというか、


そこにはあの教室で見た美しい幽霊が、きれいな立ち姿で立っていた。


男の俺から見てもそれは惚れ惚れするほど凛々しく、


一種の神々しささえ感じられた程だ。


―― キーンコーンカーンコーン ――


クラスルーム開始を告げるチャイムがかすかに聞こえた気がした。




それから俺はそいつとしばらく言葉を交わした。


しかしその詳細を記すと長くなるので割愛する。


時は金なりって言葉がある通り、時間は有効活用しないと。


話をまとめると、そいつは自分が何者か分からないらしい。


気がつくとあの2年2組の教室にいた、ということである。


周りには見たことのない衣服を着た奇妙な人間


達が大勢いて、自分のことがどうやら見えていないことにも


気づく。さて、どうしようかと思念していたところに、


たまたま俺達が現れた。しかも、そのうちの一人は


自分のことが見えていると気付き、話を聞こうとしたが、


急に背後に立たれたので、条件反射的に倒してしまった。


このままではまずいと思い、校舎裏にリョーマを移動させ、


戻ってきたところに、俺が現れた。


ためしに、自分が身につけていた物を投げてみると、


予想に反して、それを避けた。これは、私のことが見えているのでは、


と思い、とりあえず攻撃を開始した、ということらしい。


一通り説明し終わると、そいつは下駄箱脇の傘立てに腰を下ろし、


刀の手入れを始めた。


うーん…文章ではつらつらと書いてみたけれど、実際の俺は今、


ものすごく混乱している。


こいつの話を100%信じるなら、こいつはこの現実世界の人物ではないという


ことになる。しかも服装から推察すると、おそらく相当昔、まだ武士が


いた時代の人物であるということになりそうだ(あの独特の服装は


日本史の教科書等で見たことがある)。


俺は今年17歳になるし、タイムスリップや宇宙人なんて、もちろん信じちゃいない。


だから、こいつの言うことは完全には信じられない。


頭のネジがぶっとんだ、MADなオタクなのかもしれないし。


けれど、現にクラスの連中がこいつの姿を認識していないことや、


あの超人的な動きを体験した俺は、こいつの話を作り話だと


一蹴してしまうのにも抵抗がある。


やれやれ…新学期早々、なんで俺がこんな目に…。


俺はただ穏やかに暮らしたいだけなのに。




今後のことやこれまでのことなど俺がいろいろと考えている間、


刀の手入れが終わったのか、奴は今度は精神統一(?)を始めた。


当の本人にはほとんど動揺のようなものは見られないし、


むしろ俺の方ががあたふたしているようにも思える。


普通逆じゃないのか?


「なぁ、瞑想中申し訳ないんだが、ひとつはっきりさせておきたい


 ことがあるんだが」


「ん?」


心底面倒臭そうに、そいつは片目だけを開け、


しぶしぶといった表情で俺の方を見た。


「お前は自分が何者で、どこから来たのか覚えてない。」


「うむ。」


「じゃあ、やっぱり名前は決めといた方がいいと思うんだよ。

 

 呼ぶ時とか不便だし」


極力呼ぶような事態にはなりたくないが、



ここまで関わってしまったらそうは言ってられないだろう。


「それもそうだな。」


「なんかあるか?」


しばらく考えるように腕を組んでいたが、諦めたのか、


わからない、と言ってきた。本当にやれやれだ。


「じゃあ…」


俺は一つの名前を思いついていた。


というより、こいつを見た瞬間に言葉が降ってきた、


と言った方が正確かもしれない。


「牛若丸、ってのはどうだ?」


そう、あの五条大橋で武蔵坊弁慶と対決し、


後世にまで名を残している美形サムライ、牛若丸。


まさに彼をこの世に体現させたかのように


こいつにはピッタリだと思った。


「ふむ…いいかもしれないな」


どうやら気に入ってもらえたようである。


ぶつぶつとつぶやきながら、名前を確認している。


「だが、まるで男みたいな名前だな。」


「え?」


「言っておくが私は女だぞ」




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