その10・仮校舎での緊張気味の始業式
【9月1日・土曜日】
中高生に交じってチェーサムの児童が登校する姿を撮ろうと、家を出たが、バスが大幅に遅れ、児童たちはすでに校舎に入った後だった。
二階には、「第三学校のトンムたちと先生を熱烈に歓迎します!」「一緒に学びましょう」との朝高学生会のポスターが貼られていた。中高には多くのチェーサムの卒業生がいる。弟や妹と一緒に通うことになった在校生も少なくない。ポスターを見ながら、双方が何らかの「変化」を期待しているのかもしれないと、勝手に思いを膨らましてしまった。

階段、教員室に最も近い一年生の教室では、児童たちが静かに「ドラえもん」のアニメを見ていた。始業式には少し時間があるようだ。他の教室にも先生の姿はない。目と目が合うと、立ち上がって頭を下げる子、話に夢中になっている子、本を広げている子もいる。

始業式は、多目的ホールで行うというので、校庭で待つことにした。しばらくすると三階から、「ソンセンニム、アンニョンハシムニカ、トンム…」の声が聞こえてきた。一年生なのだろう、音楽に合わせて挨拶をする声も聞こえてきた。
「ここで子どもたちの歌声を聞くとは…」。
登校の手助けをしたのか、何人かのアボジたちがそんな話をしていた。
学年別に児童たちが下りてきた。
「これからどこに行くのですか?」
黄先生が一年生に聞く。図工の張先生も「どこに?」を繰り返す。
「多目的…」。教室で聞いてきたのであろうが、一年生は正確に応えられない。先生は何度か「多目的ホール」ですと。
低学年は緊張しているのか、小走りでクラスメートの後を追っていた。
勝手が違うのか、先に席に着いた高学年生の間からも話声が聞こえない。

…いつもの場所でない東京中高で始業式を迎えることになりました。…ついに新校舎の建設が本格的にスタートすることに…校舎の解体が始まります…
康校長の声が広い多目的ホールにひびきわたる。
「登下校に慣れるまでは高学年が…」とか、「教室のベランダに出ないように」とか、「運動場が広いので…」とか、「一生懸命に学ぶことが新校舎建設の力になる…」とか、校長の話の多くが、仮校舎での生活について割かれた。
始業式が終わると、高学年はバラバラだが、低学年は列をなして校舎に戻っていった。生活の環境が変わり、緊張しているようだ。


月曜日には、東京中高を知る「見学ツアー」が行われる。始業式で康校長は、「勝手に探検しないよう」、「ひとりで運動場の隅まで行ったら、帰って来られなくなりますから…」などと、戒めていたが、当分は、そんな児童たちから目を離せないようだ。
*加筆して、9月下旬に刊行する『朝鮮学校のある風景』51号に掲載します。