【8月10、11日】
八月八日から一一日に、全国のウリハッキョ中高級部の美術部生徒たちが淡路島に集まって合宿をすると聞いて、最後の二日間、お邪魔した。
一〇日朝に東京を出て、宿の北淡自然休養村センターに着いたのは午後二時過ぎだった。入り口で神戸朝高の朴一南先生に会った。今年は八〇人余りが参加しているという。あいさつもそこそこに、バスが「花さじき」に向かうというので飛び乗った。

一面に広がる芝生と遠くに見える木の緑、その向こうに見える青い海と白い雲…。最高気温三二度に併せて照りつける太陽の熱がじりじりと肌を焼く。バスの運転をしていた、朝大美術科卒の男性と話をしてソフトクリームを食べた後、流れる汗を拭き拭き写生する生徒たちを捜して展望台に登り、薄ピンクの花や赤い花の畑を越えて、ひまわり畑にたどり着いた。それでも生徒たちは見当たらず、他の道を通って引き返すと、展望台近くで芝生に座って炎天下、一心に絵を描く生徒たちがいた。
それぞれの絵にはそれぞれの世界があった。こんなに色鮮やかな景色をあえて黒いマジック二本で描いている生徒(写真)もいた。途中で席を立って走っていく生徒がいた。描き方に迷って先生に相談に行くのだという。

生徒たちを写真に収めて、展望台の下の日陰で一休み。同行した九州の先生は、一休みしては生徒たちを見回って、を繰り返していた。五時、閉園の放送と同時にバスで退散。夜は淡路牛でバーベキューだ。その後中級部は合評、高級部は六チームに分かれて、近くの展望台へとつながる夜道や、センターの庭、ロビーなど、それぞれの場所に作品を展示してアーティストトークをした。
参加して感じたのは、自由さと創造力だ。
合宿は高級部を中心に十年以上続いているが、かつてはキャンパスの大きさを決めるなど制限を設けていた時期もあった。夜の集まりでは制作過程を説明して評価し、最終日には投票で順位を競った。ところが三年前から最終日の展示を目標に作品を創作するようにして、グループでテーマを設けたり、設けなかったり、生徒たちが話合って共同作業をすることにした。生徒たちの自主性がどんどん高まった。今年は「共同作業して最後が競争というのはどうなの?」ということで順位を決めるのもやめた。作品の形は様々で、神奈川の生徒の複数のはがき大の作品はかっこよかったし、展示の順を示す京都の生徒の矢印の形の作品は可愛かった。竹や針金を作った立体作品もあった。同じ場所で制作しても似た作品がない。立ち位置は同じでも見えるものや捉え方は人それぞれなのだ。表現方法も多彩で、神戸の生徒の作品は一見何気ない風景画なのに、アニメの一場面のように物語を感じさせた。

中級部生徒の参加も多かった。高級部の展示を見ていたので合評に参加できず、全員が絵を持って並んだ姿しか見られなかったが、一人一人がしっかりと主張していた。最後に神奈川の中級部生が、大阪の高級部生の制作過程を収めたビデオ作品を紹介した。まるで短編映画のようで、会場から何度も爆笑が起きていた。モデルとなった高級部生のキャラクターや絵画作品のかっこよさもビデオ作品のクオリティーに一役買ったようだ。高級部生の作品完成まで撮影して、いつの間に編集したのだろうか?
こうして最終日の集まりが終わったのが夜の一一時過ぎ、その後も生徒たちは卓球をしたり、おしゃべりに興じたり、夜遅くまではしゃいでいたが、先生たちは「最後の夜なのだから」とおおらかだった。とはいえ特に中級部生徒たちに対する先生たちの配慮は、体調はもちろん友だち関係や作品制作への態度など、他校の生徒にも細やかに行き届いていて、驚くばかりだった。そういう指導が生徒たちの個性を育むのだと実感した。
翌朝、名残惜しい別れを経て、九時前に通学バスで宿所を出発、東京朝高に着いたのは夜の九時過ぎだった。(金淑子)
*加筆して、9月に刊行する『朝鮮学校のある風景』51号に掲載します。