十年目のセッピョル学園

【6月22、23日】
〈授業風景〉
六月二二日、セッピョル学園の二日目に参加した。午前中は授業、いつもより多い同級生に子どもたちも少し興奮気味なのか、どこの教室も少しざわついているようだ。一年生の教室では先生のピアノに合わせてダンスをしながら「ド、レ、ミ……」。三年生の図工の授業では大きな青い紙を囲んで全員で一つの作品に取り組んでいた。六年生の算数や中一の数学ではグループに分かれてICTを駆使した授業が行われていた。「初級部四年生なんて、大人がついていくのが大変なくらい、すごいですよ」と校長先生。今年からデジタル教科書が導入された学年だ。中二の朝鮮歴史では朝米首脳会談を扱っていた。中三の授業は国語、グループで作詞に挑んでいた。机の上の南のアイドルグループEXOの下敷きが目を引いた。教室を出ると廊下には北のアイドルグループモランボン楽団の写真があった。
〈昼食後のひととき〉
オモニたちが準備した昼食の後は、レゴに夢中の低学年、廊下でふざける高学年、運動場のテントの下で先生と冗談を交わす高級部生たち、それぞれ思い思いの時間を楽しんでいた。
〈全力で運動会〉
午後は運動階。行進の練習は本番さながらの真剣さ。初級部一年生から中級部三年生のセッピョル学園生はもちろん高級部生も、運動会への強い思い入れを感じる。学年別徒競走に、玉入れ、棒取り、騎馬戦など団体競技、応援する児童生徒の歓声がこだまする。先生たちのリレーも真剣だ、最後はゴールに倒れ込んで順位を競った。保護者たちの綱引きも真剣勝負だ。

〈七輪焼き肉〉
続いて駐車場で七輪焼き肉。今年のテーマ「パルマッチュオ(足並み揃えて)」「セッピョル」で乾杯し、七輪を囲む。先生の「焼き肉好きな人?」の問に低学年児童たちが元気に「イエ!」。先生が焼けた肉を児童たちのお皿の上に分けると、フーフーしながら美味しそうに食べる。こうして在日朝鮮人の焼き肉文化が受け継がれていく。
先生たちと七輪を囲んだ。十回目を迎えたセッピョル学園、始めるときは特に他の地方で不安の声が高かったという。何しろ入学して二か月ほどしか経っていない初級部一年生を茨城まで連れて行って二泊三日するのだ。低学年の多くは親元を離れて寝たことなどないはずだ。それでも子どもたちの為にと、青商会とともに先生たちも各地域を説得に回ったと言う。あれから十年、子どもたちがこの日を楽しみにしている。だから続いた。何よりも高級部生の貢献が大きい。何しろ初級部、中級部の児童生徒たちを楽しませるために全力を尽くす。下準備をぬかりなくして最後の成果は学園の年長中学三年生に譲る。運動会でも焼き肉の準備でも高級部生が奔走していた。

〈文化公演〉
オープニングは高級部生たちの演劇。初級部生が立ち上がって見入っていた。中級部生が腹を抱えて笑っていた。このために練習を積んできたという。続いて各学年別に合唱が披露された。短い時間に動作もぴったり。今年はオモニたちの合唱が特別出演した。歌舞団のオモニの指導で「子どもたちが見ているからがんばりましょう」とダンス付きで準備した。舞台いっぱいの大人数に驚いた。公演が終わると低学年は就寝準備、残った児童生徒を前に朝鮮大学校音楽科二年の六人が「ウリエ ソウォヌン トンイル(私たちの願いは統一)」を手話で歌う指導をした。音楽科六人のうち男子は一人。文化公演の時に隣にいたので少し話した。東京第五初級出身だという。教員になろうと思って音楽科に入ったが、どうも自分には向いていないようだ、作曲の勉強を続けようかと思っていると言うことだった。セッピョル学園では時間が経つのが遅いとも。教員には適正が必要だ。
〈閉講式〉
二日目午前は文化祭、今年初めての試みだ。写真館には四月に南北首脳会談が行われた板門店が再現され、当時の首脳たちをまねて写真を撮れるようになっていた。インタビューを終えて来ると、片付けが始まっていた。お化け屋敷から抜け出してきたお化けたち(中三生徒)が、黒板に書かれた天使の羽の前で記念写真を撮っていた。
閉講式では学年の代表が一人ずつ感想を発表した。低学年の発表を聞きながら、一年、二年、三年とこうしてウリマルが上達するのかと実感した。卒業する中三の発表には九年間、セッピョル学園を支えてくれた、青商会やオモニ会、先生や先輩たちへの感謝の思いが詰まっていた。最後は全員で記念写真、カメラマンの「パルマッチュオ」に全員で「セッピョル!」
〈編入生の一言〉
閉講式のまえに講堂で一人座っていた北海道ハッキョの中三女子生徒と話した。小学校は日本の学校に通って、中級部からウリハッキョに編入したという。同級生は三人。女子は自分一人だという。「日本の学校は同級生が多いから、少なくなってさびしくなかった?」と聞くと、「関係の濃さが違います」という。小学校ではそれほど親しい友だちがいなかったとも。ところが「最近思春期なのか、男子生徒が私に冷たいんです」とのこと。「セッピョル学園では女子生徒といっぱい話した?」と聞くと笑顔でうなずいていた。(金淑子)
*加筆して7月下旬に刊行する『朝鮮学校のある風景』50号に掲載します。