入学式から二日後の朝鮮大学校 | トンポ・トンネ 日々イモジョモ

トンポ・トンネ 日々イモジョモ

ブログの説明を入力します。

入学式から二日後の朝鮮大学校

【4月12日・水曜日】

 食堂に長い列ができていた。七年ぶりに新入生が二〇〇人の大台を超えたこともあるが、不慣れな新入生が同室の先輩と一緒に来たり、四、五人で連れ立ってきたりするからだ。

 隣は七、八人のグルーブ。

 座るなり、「あら」の声。東京朝高の文化祭や、美術部の部展などで度々会っている韓トンムだ。『風景』の最新号にも、「チョゴリ制服に向き合って一年経った『今』」を寄せてくれた。

 韓トンム・「本受け取りました。そのまま出してくれて…」

 私・「本当に政経学部にはいったんだ…入学式の時、学部のプラカード持っていたので…」

 プラカードを持ったのは、背が一番低かったからだとか、政経学部には二四人が入学し、そのうち女子が七人だとか…。「『風景』の感想書きますから」とも言ってくれた。同席していたのは、その学部生と、一人は「世話係」の先輩だった。

 「部活は…」と聞くと、「軽音楽団を…」。「ボーカル?」、「歌を好きなのですが…あれってオーディションがあるでしょ…自信が…」。いつになく弱気な返事が戻ってきた。

 

イメージ 1

この日のメニューはサンマ定食。朝鮮式の豚肉とキムチのスープに食が進んだ。いつものように写真に撮った。

前日、fbで娘を朝大に送り出し、しょんぼりするアボジの写真が載っていたので、食事を終えるとすぐ、「全国の二〇〇人超のアボジ! 娘さんは、昼食、さんま食べています!」と、アップした。(翌朝、fbに、「いいね」が196。「メニューはツイッターで確認しましたが画像、良いですね」とある保護者からのコメントも寄せられていた。)


イメージ 2

 事務棟と第一研究棟に挟まれた前庭に人だかりができていた。卒業生が残していった、本の即売会だ。歴史だとか、法律だとか、共和国の小説だとか、たくさんの書籍が段ボールに区分けされていた。座り込んで、何冊か取り出して、一冊一冊、吟味する男子学生、段ボールに本を戻すと、次々と手が伸びていた。

 新入生だけではなく、先生たちも何冊もの本を抱えていた。辞書、法科の過去問集、教科書、どれも一冊百円。売り上げは、「無償化」の支援に回されるとのことだ。

 20283436号など、何冊かの『朝鮮学校のある風景』のバックナンバーもあった。手に取ると、線が引かれ、読み込んだ形跡があって、うれしかった。

 その後は、ひたすら図書館での資料探しだ。この日の主な目的は、「学生会」についてだ。先日の東京学生会の文化公演のプログラムに、「学生会は一九六〇年代に日本の中学・高校に通う在日朝鮮学生たちによって結成されました」と、書いてあるのを見て、その歴史に興味を持った。創刊されたばかりの当時の『新しい世代』などを読み返した。誕生の経緯と、「一人で悩まないで」、「私は孤立していない」、「さそいのハガキ」、「あなたに訴える」、「生まれるべくして生まれた」などの手記などを探せた。

 いつものことだが、目的は学生会関連だが、目次に魅かれ、この日もまただいぶ「横道」にそれてしまった。

 一九六〇年代中ごろ、人口の二パーセントを占める一三〇〇名の同胞が暮らす対馬で、四か所で七〇名の児童を網羅した夜間学校・日曜学校についての体験手記は、何度も読み返してしまった。昔、対馬に総連の本部があったということは聞いたことがあるが、支部と分会もあったようだ。手記には「北支部比田勝分会」の名が出てくる。

 平壌で発行された「今日の朝鮮」に寄せた、東京中高で教壇に立ち帰国した宋枝学先生の手記もまた、読みごたえがあった。一九四八年二月、GHQの東京都教育担当官デュペル大尉による東京中高に対する「視察」の様子が生々しく書かれていた。『風景』に紹介する「発掘資料」の候補としてコピーをとった。


イメージ 3

 何度か、図書館の職員に案内されて、新入生の一群が通り過ぎて行った。 

 緊張感はない。書庫からは笑い声が漏れてきた。

 かれこれ三時間余り、図書館で過ごした。日差しがあったが、外に出ると少しひんやりしていた。

講堂の前の芝生の前を通りかかると、「木蓮の花は…」。校内の説明を受ける新入生た。服装もカラフル、表情も明るかった。


イメージ 4

 校門を出て、振り返ると、桜が満開だ。

 「桜の木というのは、左右に枝を伸ばすものだが、朝大の桜の木は天を突くように枝が上に上に伸びている…」そんな説明をしてくれた先生の話を思い出しながら校門を後にした。

 しばらくすると、校庭は深いピンクのツツジの花に包まれる。新入生もその頃には、大学生活に少しは慣れ親しんでいるのだろう。


イメージ 5

*加筆して、五月下旬に刊行する『朝鮮学校のある風景』43号に掲載します。