*『朝鮮学校のある風景』39号に、加筆して、何枚かの写真と一緒に掲載します。
【8月28日・日曜日】
夏休み最後の日曜日の、東京朝鮮第一初中級学校。
校舎に入ると、右手階段の下には布団がつまれ、正面の教室を見ると、正座をした女子児童がまな板の上のキムチを切っていた。
「あの子たちは?」
傍で見守っていたアボジは、「…三年生…昨日学校で泊まって…」。三年生を対象にしたお泊り会とのことだ。運動場を見ると、ボールを蹴る男子児童の姿が。「男の子はサッカー?」、「彼らはサッカー部…三年生の男子児童は、流しそうめんの竹を…」
校庭では、ふたつに割いた太い竹の周りに児童たちが集まっていた。オモニの姿がない。三年生のお泊り会は、アボジ会の主宰だ。

この日、お泊まり会やクラブ活動の一方で、関東一円一八校から、五〇人を越えるアボジ会の役員たちが参加し「アボジサミット」が行われた。二階の講堂に並べられたテーブルの上には、名札が置かれていた。アボジの中にはなじみのうすい人たちもいる。ここで新たな出会いを持てるようにとの、主催者側の配慮だ。参加者を地域別、学校の規模などに応じて割り振りしたようだ。
開会と共に行われたのは、八つのグループごとの一人一分の自己紹介だ。子どもが何人、何年生、会議参加の意気込みを語るようになっている。
一クラス五人だとか、通学に一時間半かかるとか、通学バスがどうだとか、アボジ会ができて何年だとか、どのテーブルも時間をオーバ、「自己紹介」の時点で、すでにヒートアップしていた。
第一部は、発足五年になる「阿佐ヶ谷朝鮮学校サランの会」の活動報告、学校給食に会員による特別授業、夜会やバザーでの物品販売、スキーや水泳、キャンプ指導の補助など、学校、児童と密着した活動が語られた。
「支援する会」、「支える会」などがある学校の参加者の中からは、世代交代とつながりの拡大の難しさが語られた。
この日のメインは、何といっても第二部の各地のアボジ会の活動報告に基づく経験交流だ。
寿司屋チェーンとコラボしてのまぐろ解体ショー、カーレース、ヘラブナ釣り、昆虫採集、流しそうめん、相撲部屋の見学、学校美化一日労働…アボジ会といえば、チャリティーゴルフが連想されるが、ユニークな活動、様々な取り組みが行われている。
グループ別意見交換と質問タイムを通じて、参加するのはいつも同じ人だという「レギュラー化」と、これまでの活動を踏襲するだけという「マンネリ化」など、「克服課題」も明らかにされた。同胞からの大口寄付の激減、それに加えて地方自治からの補助金カットなどを反映し、卒業生や保護者でない同胞を対象にした「一口千円運動」など、学校運営の自立化を模索する意見も出された。
それらの発言をメモに取り、また一参加者として率直に意見を述べる千葉、埼玉、東京第一の三つのハッキョの校長と東京本部の教育部長、地元支部委員長の真摯な姿には親しみを感じた。

校庭が騒がしい。窓からのぞくと流しそうめんが始まったようだ。児童に交じって、麺をすするアボジがいれば、スマホやビデオを構えるアボジもいた。その横では、七輪に炭をくべるアボジも…。
みんな笑顔、楽しそうだ。
反対側の運動場をベランダ越しに見ると、サッカー部の練習は終わっていた。頭から白いマスクをすっぽり被った児童が走り回っていた。ピエロのマスクなのか、真っ赤な鼻が飛び出ていた。追われた児童は笑いながら逃げ回る、そんなほほえましい光景が目に飛び込んできた。

アボジ会の会長の任期は、大方一年だ。児童が卒業すると、アボジたちも学校から遠ざかってしまう。現役だけではなく、元保護者、それに保護者候補のアボジたちが共にできる場をめざしている意見や、引っ越してきたり、ウリハッキョを卒業していなかったりする保護者は溶け込みにくい雰囲気があるのではないかという反省の声も聞こえた。
そんなやりとりが四時間余りつづいた。校庭からは焼肉の匂いが漂ってきた。
最後に、この一〇年で園児・児童・生徒数を四培増やした学校の報告があった。通学バス、学童保育、給食など、保護者のニーズに応えての結果、だとはいえ、教職員の負担を増しているのではないか、それが「気がかり」との発言に、教職員を思いやるアボジの優しさに胸が熱くなった。
児童・生徒数の増加について、もう少し突っ込んだ話を多くが望んでいたようだが、タイムアップ、話は交流会に持ち越された。
その後の七輪を囲んでの交流会は二時間に及んだ。参加者の大半がマイクを握り感想を語った。「元気をもらえた」、「心強い」、「もう少し頑張れる」、「もっと楽しいアボジ会に」。話したいことはたくさんあるようだ。
途中、「ヨンジュ チャルハンダ」の声が何度も飛んだ。司会を任されたのは、第一のアボジ会の相談役だ。この三か月、李創建会長と共に関東一円二一校のウリハッキョを周り、地元での活動に耳を傾け、サミットの開催を呼び掛けてきただけに、実情を知り尽くしている。卒がない。

この日の六時間、思い浮かんだことは、巻き込むことの大切さだ。そのために、欠かせないのがしっかりとした軸だ。それは何よりも、熱い気持ちだと思う。
最後に、李会長が参加者に「児童・生徒数を増やそう。今日から…アボジたちの力で」と、呼びかけた。
今回初の「アボジサミット」のサブタイトルは「アボジたちの熱い暑いウリハッキョ自慢大会」だった。「自慢」できるウリハッキョがあることは幸いだ。もっと「自慢」できる学びの場にしようと意気込むアボジたちは誇らしい存在だ。
この日、流しそうめんに歓声を上げていた三年生が保護者になっているころウリハッキョは、創立百周年を迎える。その日が思い描かれるほど、充実したひと時だった。
来年は埼玉でとか、関西という意見が出た。さて…。 (記録する会)