バザー前日の東京第三へ
【10月24日・土曜日】
「写します!」
校門を入ると、全先生が児童にカメラを向けていた。男女とも民族衣装だ。いくつもの打楽器が置かれていた。児童たちの背中に手を回し、ポーズをとっているのは朝大から来た教育実習生だ。翌日に迫ったバザーのオープニングの練習の合間の記念撮影だ。担任の全先生は、児童を立たせたり、座らせたり、背景に校舎を入れたり、校門を背にしたり、様様な角度から撮っていた。

校舎の玄関では小物の整理、教員室と奥の炊事場の前の廊下では値札張り、会議室では品物の区分け、炊事場では調理をするオモニたち、学年別に分担が決まっているのか、整然と作業は進んでいた。時折「遅くなってミアナムニダ」の声が聞こえた。

低学年の教室が並ぶ一階に行くと、一年生の児童が教室から廊下に机と椅子を運び出していた。運動場だけではなく、教室もバザー会場になる、その準備を手伝っているようだ。

隣の二年生の教室は騒がしい。大きな声で「九九算」を暗唱する声だ。
教室から出てきた李先生に、九九算を覚えられず、居残り勉強をさせられた話をすると、「繰り返し繰り返しです」と。最近は、児童が理解しやすいように、二と五の段を先に覚えさせるといって、教室に戻っていった。

校庭では、高学年の児童を前に六年担任の夫先生が話をしていた。
「四年生は…」、「ビールのケースは…」、「長いテーブルは…」。運動場の会場づくりを指示しているようだ。やがて打楽器の音が。オープニングを飾る、三年生のリハーサルが始まったようだ。

校庭からビールのケースが次々と運ばれていく。厚手のベニヤ板と長テーブルは二人がかりだ。
「先に行きなさい」
指示をする、五段重ねのビールケースを抱えた夫先生の体は少しよろけていた。振り返った女子児童が、心配そうに見ていた。
校舎の二階から、校庭から道一つ挟んで向かい側にある、メイン会場になる運動場を見ると、赤と黄色のビールケースが次々と積まれていた。

運動場に出ようと階段を下りていくと、机と椅子を運び終わった五~六人の男女児童が階段で、座ったり、中腰になったりして校庭を見ていた。

視線の先は、打楽器をたたく女子児童と、三段のピラミットを作る男子児童だ。息をひそめ、誰もが、憧れのまなざしだ。

一階の校舎の窓越しから、バザーに出す小物作りの手を休め、スマホを構えている二人は、三年生の保護者のようだ。

児童たちは、校舎の裏側から運動場に次々と机を運んでいた。落ち葉がたくさんたまって、足元が危うい。大きなモグラが出たと、児童は騒いだというところでもある。
