大阪朝高ラグビー部の応援へ
【4月1日・火曜日】
同級生に誘われて熊谷のラグビー場へ。

赤と白の横縞の大阪朝高のユニホームの選手たちが競技場に出てきた。向い側のスタンドには「하나(ひとつ)믿음(信頼)승리(勝利)」と、大阪朝高ラグビー部のキャッチフレーズが書かれた大きな横断幕が、その隣には埼玉青商会がこの日のためにつくった一五メートルの横断幕、「백절불굴 승리를 향하여 앞으로!(百折不屈 勝利に向って前に!)」の大きな文字が、時おり射す太陽の光に映えていた。
いよいよ試合開始だ。円陣を組み力強く大地を踏む選手たち…。一気にドキュメント「60万回のトライ」の世界だ。「하나(ひとつ)믿음(信頼)승리(勝利)」、映画の中でのあの勇ましい掛け声を思わず口ずさんでいた。

試合は開始直後から押され気味だ。
前日の「朝鮮新報」電子版のタイトルが思い浮かんだ。
「大阪朝高、同胞の声援受け初戦を50-0で大勝」、「緊張ほぐれ後半にトライ量産」。「前半は緊張で動きにかたさが見られた…」と書かれていた。この日の対戦相手は強豪校の流通経済大学付属柏高、「緊張」?「かたさ」?の文字が交差した。一瞬を突かれ相手側のトライが決まる。
「ここからだ」、「いいぞ」、「行け、突っ込め…」、「このパターン…」
日本語に混じって「힘내자 조고(頑張れ朝高)」、「소중히 가자(チャンスを大切に)」とのウリマルでの声援…。ユニホームと同じ色のウインドブレイカ―を着て、スタンドの前方に陣取った大阪から駆け付けた選手のオモニたちの力強い声援はやまない。

スタンドでには、誘ってくれた廉トンムと朴トンム、それに呉トンムと任トンムの姿が、時おり、「(相手チームの足が)早すぎる」と、溜息をもらしていた。四人とも東京朝高の同級生。任トンムは、息子が東京朝高のラグビー部に在籍中、大型バスで遠征先や合宿先まで選手たちを送り迎えしていた、「熱烈ラグビー支援者」だ。

前半は0-14。監督が大きな手振り身振りで選手に話しかけていた。これもまた、「60万回のトライ」のシーンとダブった。

試合は、最後まで突破口を見いだせず、〇-59。一つのトライも決めることはできないままノーサイドだ。
「課題がいっぱい見えた…」、「修復できる課題ばかり…」
グランドを後にする、大阪の「オモニ」たちの話は前向きだ。
選手を迎え学父母たちは記念写真、オモニたちがいう「課題」が見えたのか、選手たちの表情は以外とサバサバしていた。

選手たちと夕食をともにした。廉トンムが姻戚関係にある地元の焼肉店・セナラのオーナーにかけ合い、三〇人の選手と監督らの食事会をセットしたのだ。
その食べっぷりに度肝を抜かれた。何種類もの焼き肉、キムチ、ナムル、オジンオポックム(朝鮮風イカと野菜のピリ辛炒め)もでた。それに大盛り飯にテグタンスープ。次々におかわりの丼飯が追加された。本社から派遣されて来た本部長が、「後は何でも好きなものを注文して…」。大きな歓声だ。カルビにハラミ、ミノにテッチャン、豚トロ…。大きな皿に盛られた肉がひっきりなしに運ばれていた。

私・「ご飯何杯目?」
選手・「まだ三杯です。」
私・「いつもは…」
選手・「朝食は一合、昼食は弁当に二合、夕食は一・五合? 間食、夜食は…それに牛乳に、プロテイン…」
同じテーブルにいた六人誰ひとりとして、否定するものはいなかった。学食があるのに、「弁当組」が少なくないようだ。「ご飯のおかわりができても、おかずが…」と。毎日、弁当だけではなく、練習が終わって食べるにぎり飯を持たせてくれるオモニへの感謝の言葉も。率直な言葉が清々しい。
米一合(一五〇グラム)が炊きあがると、三〇〇グラムになる。店の従業員は、「超大盛りでというので、普段は三八〇グラムのところを、五〇〇グラムを盛って出したのですが…」。
本部長は、米を炊き続けるよう、「特命」を下したと話していた。

テーブルをくまなく回って、話しかけた。
やりとりは、「何杯目?」、「四杯」、「まだ食べます」との受け答えで始まった。監督のテーブルの上にもない、厚切りのタン塩が網いっぱいに載っていた。
「朝食はトーストに…ベジタリアンです」と言いながら、盛りつけられた野菜を取り除きユッケを一気に口に駆けこむ選手もいた。
「この中に最優等生は?」。あるテーブルでは六人中、二人が手を挙げた。「優等まで…おしかった」との答えも。「勉強は苦手」の選手が少なくないようだ。「昼食を食べると、午後の授業は…寝るつもりは全くないのですが…」。そんなことも正直に話してくれた。
選手の中で最高体重は一二三キロ、九〇何キロとか、一〇〇何キロと言われても、驚かなくなっていた。
それでも、新学期から三年生になる選手に比べ、二年生の体つきはひと回り小さい。一年の時は厳しい練習で身体がしまり、体重は落ちるとのことだ。二年になって、ようやく体も慣れ、本格的な体力作りが始まり、体重が増え続けるようだ。

四時四五分から、次から次へと注文が続き、延々と食べ続けていた。七時前後してあちこちで冷麺の注文だ。大盛りご飯四杯、二キロ弱、それに冷麺? 「この店の冷麺、美味しい…スープがフルーティーで…」。との誰かの言葉に誘われ、全員がデザート代わりに冷麺を注文していた。
旅館に帰って、風呂から出たら、夜食、菓子パンを三つ、四つ、六つはいけるという猛者もいた。
食事を終えると、声を合わせて「チャルモゴッスムニダ」。主将は、「二日後の試合には必ず勝って、次につなげていく」と。力のこもった言葉だった。
廉トンムが監督に「激励金」を手渡していた。三日の最終試合が終わった後、自分の焼肉店に招待したのだが、日程の調節がつかず、そのまま返すのは忍びないと、その気持ちを込めてだ。
「同胞たちに希望と感動をくれてありがとう。正月、大阪に嫁いだ娘と孫が来るのが楽しみなのだが、この六年会えずにいる。花園にトンムたちを応援に行くからだ。孫と一緒に正月を祝えないのは寂しいが、トンムたちが…」
選手たちに、そんなことを語っていた。
かれは三月に孫のトルチャンチ(一歳の誕生日)を祝うために大阪に行っている。大阪府庁前の「火曜行動」に夫婦で参加した。

帰りの電車の中で、ふと「朝鮮新報」記者に返していた廉トンムの言葉が思い浮かび、心が和らいだ。
「母校でもない大阪朝高になぜ、そこまで…」との問いに、「大阪朝高もウリ朝高です」と、きっぱりと言い切っていた。。
*『朝鮮学校のある風景』最新号
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