【11月2日・日曜日】
学園祭で、思いがけない嬉しい出会いがあった。
武蔵野美大とのコラボ展をのぞいた後、メインステージに戻ろうと、売店の前を通った。
売店の前に、自動販売機が両側に10台ずつぐらい並んでいるのだが、片方の自動販売機が撤去されているのだ。コンセントだけはだらりと、垂れ下がっていた。
「学生数の減少で、自販機も半分に?」。十分ありうることだ。
自販機コーナーの先にある学生専用の喫煙所でたむろしていた学生に声をかけた。
私・「片方の自販機はなくなるの?」
学生・「新型と入れ替えるようです…」
ふと、答えてくれたその学生の隣を見ると、見覚えのある顔だ。
「トンム、確か東京第3だよね。」。突然話しかけられた学生はきょとんとしていた。
「チェーサムです」、「何年生?」、「四年です」、「来年は卒業か?」
短い会話の後、思わず「卒業するんだ」と言って、手を握り締めてしまった。
初めて会ったのは、東京朝高でのイベントの時だ。運動場にたくさんのテーブルと椅子が並んでいたから、運動会ではない。長身の彼はテーブルをぬって歩いていたのだが、十数人の生徒が数珠つなぎになって、彼の後についていた。
隣にいた先生に「彼は?」と、訊いたら「その…あれです」と短い返事が返ってきた。
その次に会ったのは、入学式直後の朝大だ。
校門と講堂の間の芝生、木蓮の木の下に彼は、十数人の学生とともに立っていた。新入生を対象にした学内案内の場のようだ。共和国での修学旅行の時に作ったのか、グレーの人民服風の上下を着た、彼は目立っていた。そのとき、文学部に入学したと知った。
その後も、東京第3の夜会のとき、売店で飲み物を売る姿を見ている。
「卒業後は?」、「教員志望です」、「今年は東京に欠員が出なかったようだが…来年は…地方に行く覚悟は?」、「そのつもりです」、「教育実習はどこに?」、「茨城でした」、「それなら地方の厳しさもわかっているんだ…」
ぶしつけな質問にも、いやな顔せず答えてくれた。表情も穏やだ。あのときの「朝高生」の姿はなかった。
「今度会うのは、どこかのウリハッキョだね」と言って、別れた。
どこかの中高に赴任したら、きっといい「兄貴分」として生徒たちに慕われるのだろう。少人数の小学校で、児童たちに振り回させる姿も想像してしまった。
ほんの数分の出来事だったが、なぜかとてもうれしかった。