【2月18日・火曜日】
学芸会の当日、行けそうもないのでリハーサルを見に行った。
校門の扉には、警備会社の「防犯カメラ作動中」の案内が貼られていた。
1月22日の神戸朝鮮高級学校に金属棒を持った男が押し入り、男性教諭に殴りかかるという事件を受けての措置だ。東京第3の学校通信digital版を通じて、「児童たちの身辺安全を考え、学校の正門と玄関扉、通用口等を常時施錠すること」は知っていたが、防犯カメラのまでとは…授業中、校舎の3階まで押し入って来たというから、「事件」のショックは大きいようだ。

校舎の玄関にも「防犯カメラ作動中」と、「御用のある方はチャイムでお知らせください」という学校長名の貼り紙が張りだされていた。
何回かチャイムをならし、ようやく校舎に入ることができた。

玄関の前には、今週末の学芸会を知らせる手書きのポスターが貼られていた。両手を広げ歓迎する 同校のキャラクターの「チェサミ」と、「 」のイラストがとても可愛く描かれていた。

教員室の灯りは消えている。廊下には、学芸会の小道具・大道具をつくるために使ったであろう、ペンキの缶が新聞紙の上に、無造作に並べられていた。3階の臨時講堂からだろう児童の歌声が聞こえる。

2階に上る踊り場から運動場を見ると、まだ雪が残っていた。運動場の5分の1位、陽が当らない部分だ。
東京第3の運動場は、校舎から道を隔てた向かい側にある。休み時間に施錠された裏門は誰が開けて、閉めるのか、そんなことが思い浮かんだ。

2階に並んだ低学年の教室に人影はない。全員、3階の臨時講堂に行っているようだ。
各学年の教室の前の廊下には、児童の名前の隣に、日本語の単語や文章を朝鮮語に直した児童の自筆のメモ用紙が貼られていた。
3年生の児童の「メモ」を記録した。
いのちがけ・ものもらい・えくぼ・あじみ・せんたくばさみ・かふんしょう・てんねんきねんぶつ・いちやづけ・うまれつき・あやとり・でんたく・まつぼっくり・みちずれ・すみっこ・しゅうせいテープ・だじゃれ・ひっぷほっぷ ゆだんしちゃだめ…
児童に聞かれても応えられない単語がいくつもあった。3年生の生活空間が徐々に広がっていることも実感できた。


3階の3つの教室の隔たりを取り去った「臨時講堂」では、3段の合唱台の上に全校生が並んで合唱していた。
10時からの総練習を前に、オープニングの合唱を繰り返していた。3年担任の全先生が気持ちよさそうに指揮をしていた。後ろ手を組んで舞台を見ていた5年担任の許先生は、大道具担当だと言っていた。

一度、教室を出て、廊下伝いに移動した。5年生の教室の前の壁には、「コッソンイ作文コンクール」で1等に入選した「親しき友」という題の詩を載せた「朝鮮新報」が貼り出されていた。

総練習が始まる前、6年担任の夫先生が見知らぬ青年と親しげに話していた。東京朝高の同級生で、1か月余りの間学芸会の助っ人に来ているのだと、音楽の朴先生が話してくれた。朴先生と同じく、民族楽器の専門家とのことだ。同校の卒業生ではなく、長野のウリハッキョ出身とのことだ。

何人かの児童が前に出て、「学芸会では練習の成果を100パーセント発揮しよう」とか、「雪が降って、練習時間が十分とは言えないけど、学芸会を必ず成功させよう」とか、決意表明をしていた。
一番大きな声で、決意表明をしていたのは、教務主任の金先生だった。
「今日は3回目の総練習です…本番は1回しかありません。1年間のウリマル学習、勉強、クラブ活動の成果を舞台で…同じ水準ではなく、練習を重ねるごとに…」。最後に「学芸会を成功させるのは私たちだ」を2回、児童と一緒に叫んでいた。

オープニングは全校生による合唱だ。全先生が身を乗り出すようにして指揮をしていた。例年は朴先生だ。「ピアノを弾かなくてはならないので…全先生、気分はオザワセイイチです」。1年担任の黄先生もうなずいていた。

教育会の洪先生がカメラを向けていた。同校の学校通信digital版を担当している。すでに1月17日発の通信では、「学芸会に向けた準備が、今週から本格的にはじまりました」、2月4日発では「各学年、クラブ別に重ねてきた練習の進行具合を確認するための総練習が…」の記事をアップさせている。教職員の立場から、そして時には学父母の目線で作られるほのぼのとした「通信」を、いつも楽しみにしている。

演目が変わるたびに、タイトルが朝鮮語と日本語でスライドに映し出されていた。担当は、4年担任の金先生だ。
「舞台」の袖では、女子児童が声を出さずに、口だけ大きく開いて司会の練習をしていた。原稿には、グリーンとオレンジの線が引かれていた。

2年生の劇と踊り。黒い服を着た「悪役」のはずの児童が笑顔で演技をしていた。担任の金先生のからだが児童のふりに合わせ、自然に動いていた。

舞踊部の群舞に引き続いて、舞台に登場したのは図工部だった。年末の「ウリマルマダン」でも紙芝居のようなものにチャレンジしていたが、今回もまた両手に大きな絵を持って、「ハンサンドの大勝利」を演じていた。満面に笑みをたたえながら、図工担当の張先生がビデオを回していた。

急用で途中リタイヤ。本公演を見ることができればいいのだが…。
帰りは洪先生にカギを開けてもらって、学校を後にした。