【4月20日・土曜日】
東京第9の校門に、「阿佐ヶ谷朝鮮学校サランの会第3回総会」「映画『祖国の選択』上映会会場」の看板が立てかけてあった。
校舎から聞こえてくる、児童のざわめきが心地よい。それを聞いているだけでも、少しオーバーに言えば、在日は生き続けているという実感がわく。

受付の準備は終わり、玄関の正面には「心からお祝い申し上げます」との大きな文字の下に、高学年の児童が書いたメッセージが貼られていた。
「『サランの会』第3回総会おめでとうございます。おいそがしい中、私たちのために給食を作ってくれてありがとうございます。すごくおいしいです」とか、「いつもぼくたちを手伝ってくれてありがとうございます。これからもぼくは部活、勉強に頑張ります」とか、感謝の言葉がつづられていた。名前にはひらがなで読み方が付されていた。
その隣には、「朝鮮新報」に載った三木事務局長のインタビュー記事の拡大コピーが貼られていた。
入学式とその後の運動場での中杉同胞の花見を2人の記者が取材に来ていた。
「学校支援、継続が大事」、タイトルが目立つ。背広にネクタイ姿の写真を見た「サランの会」のメンバーの感想は、「三木さんらしくない…」というものだった。
三木事務局長は、「これまでどのような活動をしてきたのか」、「なぜ給食を始めようとしたのか」、「財政はかさむと思われるが」、「現在朝鮮学校は難しい状況に置かれているが」、「今後の取り組みは」などの問いに答えていた。「もっと学校について多くの人々に知ってもらえるよう活動していきたい。私たちはこれからも子どもたちと遊び、オモニ、アボジとわいわい話しながら、新しい交流、新しい取り組みを企画していきたい」と、いつもの率直さが伝わって来た。
会場の多目的ホールには、椅子がぎっしり並べられていた。

児童たちは、昼食の時間だ。2年生の教室では、弁当を広げ始めていた。弁当持参組に注文弁当組、パン組と、様々だ。
廊下で、お茶が入った大きなやかんを持った児童とすれちがうと、「アンニョンハシムニカ」だ。
4年生の教室のドアは閉ざされていた。しばらくすると女子児童が勢いよく出てきた。手を洗いに行くようだ。
ドアの隙間から「アンニョンハシムニカ」というと、前日、東京朝高での少年団入団式で話を交わした児童たちが集まってきた。そして「何しにいらしたのですか」、「いつ…」と、質問攻めだ。
どの教室の床も、児童の影が映るぐらい、ピカピカに磨かれていた。

東京第9は、教室のドアが閉められていると、廊下からのぞけない。しかし、元気な児童の話声は廊下に筒抜けだ。
女性の先生・「…ヌッチャム(寝坊)をして…」
児童・ 「ナッチャムですか?」
先生・「ナッチャムではなく、ヌッチャムです。ナッチャムは昼に…」
そんな問答もだ。児童たちが話すウリマルは、少したどたどしいが、こんなたわいのないやり取りに心が和む。
隣の教室からは、児童をしかる先生の声が聞こえてきた。のぞいてみたい衝撃をぐっと抑えて、事務局が最終打ち合わせをしている会議室に戻った。

進行の最終確認をしていた。この日の行事は、総会と映画の上映、そして懇親会の三本立てだ。
ドキュメンタリー「祖国の選択」の姜成明監督からは、制作過程を詳しく述べたメッセージ寄せられたようだ。

会議をぬけ出して会場に行くと、金教務主任がプロジェクターの操作を、隣で女子児童が自筆の文章を幾度も目で追っていた。先ほどの打ち合わせで、男子児童か、女子児童か、話題になっていた「ユギョン?」さんだ。総会で感謝をのべる児童代表だ。
「緊張している?」ときくと、「大丈夫です」と一言。自信ありげだ。

総会が始まった。
長谷川代表があいさつ。サランの会はチェーグーのアボジ、オモニたちだけではなく、児童にも慕われている。「ギターを弾くのが長谷川」だとか、「アフリカの人と一緒に来る三木さん」だとか…。民族教育を守り抜くことは…日本市民にも…力を合わせて…と、力強く語っていた。
後方で、写真を撮っていると、6年担任の先生が、男子児童と一緒に男子とトイレに入っていった。しばらくすると、その児童は、モップでトイレの床をふいていた。掃除の点検を受けていたようだ。

運動場からは、児童たちの元気な声が聞こえてきた。

総会は、つつがなく進行したようだ。
活動方針として、△区への補助金の引き上げと、学校設備の要請、△給食提供の定例化、△学校行事への積極的参加と協力、△会員の拡大-などが採択された。
受付に行ったり、集団下校の前に運動場で遊ぶ児童たちに目が行ったりで、たびたび総会を抜け出したので、詳細はサランの会の「ニュース」に譲るほかない。
デジカメを持った鄭校長が会場を行ったり来たりしていた姿だけは目に焼き付いている。

集団下校。この日は寒の戻りで、みんなが上着を来ていた。 ジャンパーを着込んだ児童もいた。
保護者が総会や上映会に参加する児童は、教室や運動場で宿題をやったり遊んだりしていた。
この日、上映されたのはテレビドキュメント「祖国の選択-2人の代表ストライカーの決断」。代表ストライカーとは、韓国籍を持ちながら朝鮮民主主義人民共和国代表の道を選んだ鄭大世と、日本籍を取得して日本代表となった李忠成だ。李選手が東京第9の卒業生だというので、学父母、「サランの会」のメンバーの関心も高かった。
急用で、下校する児童の後を追うように会場を後にした。2日後に行われた、「高校無償化」から朝鮮学校排除に反対する連絡会で、長谷川代表(「連絡会」の事務局長)は、「素晴らしいドキュメントだ。本当に良かった。考えさせられた」と、語っていた。
