【4月19日・金曜日】
東京朝鮮中高級学校で行われる少年団入団式に行くためJR十条駅の改札を出ると、タクシー乗り場の付近に、長身の男性と子どもたちが車道と歩道の間の手すりに寄りかかっていた。いつもの東京第3の児童ではない。長身の男性は、東京第1から第9に赴任してきた金先生だ。入学式のとき、テコンドーの達人だと紹介された、4年生の担任だ。子どもたちは第9の児童のようだ
児童たちは人懐こい。金先生に挨拶していると、「チョソンサラム?」と声をかけてきた。「何年生?」と、ウリマルで返すと、一挙に距離が近づいた。
私の右手の指をさして、「ペンキですか?」、修正液だったが、「そうだ」と答えると-。
女子児童・「洗いましたか」
私・「石けんで洗っても落ちない…」
児童・「お湯では…」
もう一人の児童・「お風呂に入れば…」
私の3本の指にこびりついた「ペンキ」を爪でかきながら、ウリマルでのそんなやりとりがしばらく続いた。
ときどき、「アプミョン イヤギハセヨ(痛かったら言ってください)」。4年生だというのに、言葉は達者だ。
でも、「ハラボジ」、「ハラボジ」の連呼には参った。「オッパ(お兄さん)」とは呼べなくても、せめて「アジョシ(おじさん)」にしてほしかった。
担任の金先生が引率する6年生が出発し、5年生と4年生がつづいた。
途中の信号で、5年生の何人かが渡れず、4年生と5年生の一部を私が引率する形になった。
女子児童は、男子児童に2列に並ぶように促すが、何人かの男子児童は「チェーモツテロ(自分勝手に)」していた。

東京朝高の体育館2階の客席に行くと、すでに東京第2と、第3、第6の児童が、昼食を食べていた。
食べ終わった東京第3の男子児童が客席を行ったり来たりし始めた。入団を控えた4年生だ。運動場が狭い第3の児童たちは、広い所に行くとなぜか走り回りたくなるようだと、ある先生が言っていた。
男子児童・「ソンセンニム、遊んでいいですか」
4年担任の金先生・「遊んでいいですか、その質問をすること自体…今日は大切な…」
「トゥルランタルラン ハミョンアンデヨ」という言葉も聞こえた。ぶらぶらしてはいけないという意味だ。

その頃、体育館の前の階段では、駅で一緒になった東京第9の男女児童が「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」をしていた。
「トルカーボー」、じゃんけんの掛け声はウリマルだが、「グリコ」に「パイナップル」は…。そんな児童たちの遊ぶ姿に、これぞ在日のウリハッキョ」の風景なのだと、妙に感心してしまった。
傍で、担任の金先生と2年前まで東京第3にいた宋先生が話していた。ときどき、前を通る中級部の生徒に、「背が伸びたな」とか、「走っている?」などと、親しげに声をかけていた。初級部の時に担任をしたり、サッカーを指導したりしたのであろう。生徒たちも「センセンニム、相変わらず…」などと、応じていた。

2階に戻ると、5年担任の許先生の周りに児童たちが集まっていた。身振り手振りを加えての「こわい話」を夢中になって聞いていた。終わると「もう1度」とせがむ。何度聞いても面白いようだ。

中級部と5、6年生は体育館に入って行った。靴がきちんと並べられていた。

バスケットコートでは、4年生の入団式のリハーサルが始まっていた。各学校別に練習を繰り返してきたが、4校の児童の「合同練習」は初めてだ。皆それぞれ赤い表紙の「少年団の誓い」を手にしていたが、なぜか第9の児童だけは持っていなかった。

「私は在日本朝鮮少年団員として…少年団員になった栄誉を…知・徳・体を備えた朝鮮人として…一生懸命学び、常に準備することを固く誓います」
東京第3の女子児童の後について何度か、繰り返されていた。
手に持った「少年団の誓い」は、印刷されたものではなく、各自の手書きだ。
それが終わると、式順に沿って立ったり、座ったりする場面や、赤い表紙の「誓い」の言葉を右に持つとか、椅子に置くとか、そんな説明を東京第2の先生が繰り返していた。
「걸상」?、「의자」?二つとも椅子のことだが、何度か言い換えていた

体育館のロビーでは、各学校の団委員長が「…整列しました」という、報告の練習をしていた。
「東京朝鮮中高級学校中級部管下単設初級学校少年団入団式と少年団移籍式」という、長い名称に何度かつっかえる児童、生徒がいた。
中級部が併設されている東京第1、第4、第5でも、学校ごとに同じようなセレモニーが催されている。

入団する4年生が舞台の上の椅子に着席し始めた。東京第3の児童を探しているのか、舞台に目をやる5年担任の許先生の赤いネッカチーフ姿が、やけに雰囲気に溶け込んでいた。

2階からは3人のオモニたちが、子どもの「晴れ姿」を見守っていた。何枚も写真を撮りながらだ。
昨年はもっとたくさんのオモニたちが駆けつけていた。少年団のネッカチーフ姿の息子や娘と写真をと、大騒ぎしていた。「少年団に入ると、子育ても一つの峠を越えた感じ」。そんなことを言っていた。

各団の委員長の「報告」も無事終わり、何人かの挨拶の後、上級生の代表が一斉に舞台に上がり、新しく入団する児童の首に赤いネッカチーフを巻いてあげていた。緊張しながらの笑顔がいい。

そして「少年団の誓い」と続くのであろうが、急用で途中退席。
入団して初めての「ハンサン ジュンビ」も、学校別の力強い行進も見ることができなかったのが残念だ。
練習の時は、「同胞社会と統一祖国の未来の主人公になるため…」というところで、他の女子児童が前の部分を読み終わらないうちに、自分の担当部分を読みだしてフライングする児童が何人もいたが、本番では大丈夫だったか?…そんなことを気にしながら会場を後にした。IK