【3月23日・土曜日】
この数年、卒業式は母校の第3、修了式は東京第9に行って、「風景」をつづっている。
一瞬間前の卒業式の「痕跡」があちこちに残っていた。
校舎の玄関の左手には、「卒業祝賀」と「第9」の大きな文字の下に、卒業生13人の写真が飾ってあった。○○トンムは写真で見ても、いかにも「腕白」と言った感じだ。

玄関正面には、6年間の「思い出写真館」だ。昨年もそうだが、学年ごとに付された短いキャッチフーズがいい。
「可愛い」1年生、「活発な」2年生、「低学年の長」3年生。4年生は「ピカピカ☆少年団」、5年生は「すくすく」、そして6年生は「頼もしい」である。学年ごとのえりすぐりの12枚の写真は、それを物語っている。
「カメラ」ではなく、「キャメラ」と言って、児童の笑顔を追っていた6年担任で、教務主任の姿が浮かんだ。
「写真館」の隣には、各地のウリハッキョからの祝電が貼りつけてあった。

6年の教室は、机の上に椅子が載せられ、壁には取り残されたように、朝鮮地図と時間表が貼ってあった。児童のいないがらんとした教室は寂しい。

「ソンセンニム アンニョンハシムニカ(先生、おはようございます)」「トンムドゥル…」の声が聞こえた。
ハンカチで手を拭きながら、女子児童か3年の教室に入って行った。教室の後ろの書庫に本を戻す児童の姿がドア越しに見えた。直前まで本を読み続けていたのは2年生の児童だ。

1階から2階に通じる踊り場の掲示板には、「新しく購入した本」が貼り出されている。
オモニ会が年に何回か、 学年ごとに本をプレゼントしている。子こうした積み重ねが「読書家」を育てていてるようだ。
1年は「北風吹いてもさむくない」と「ふしぎなたね」、2年は「じゃんけんのすきな女の子」と「はじめてであう すうがくの絵本・1」、3年は「はじめての古事記」と「はじめてであう すうがくの絵本・2」。4年は「一休さん」と「小学生のまんが慣用句辞典」、5年は「竜退治の騎士になる方法」と「まんが四字熟語辞典」、6年は「グスコープドリの伝記」と「まんが俳句辞典」と、なかなかユニークなタイトルが並んでいた。
しばらくすると、どこかの教室から、「今日は分けなければならないプリントがたくさんあります」との先生の声が聞こえてきた。

マイクが不良? 教務主任と校長が交代で、調整をしていた。
会場の多目的ホールでは、長身の男性の先生に女子児童がまとわりついていた。しばらくすると、4年担任のその先生は、5年の児童と帽子をかぶったり、かぶせたりしながら言葉を交わしていた。
「マイクの試験中」教務主任の声がホールに響き渡ったのは、9時をだいぶ回っていた。
まずは、歌唱指導。5年生の児童が前に出てきて一言。「なにか、うたいたい曲ありますか?」。
数日前までは6年生がやって来たことだ。突然のことで、ぎこちない。
それでは「学芸会の時…」。声が小さく聞き取れない。
それでも、歌声は大きかった。
…仲良しの友だちと手をつなぎ学校に向かう…ウリマル(朝鮮語)を共に学ぼう…雨が降っても雪が…暖かく見守ってくれる…いつもウリハッキョの教室ではどこでも笑顔が…
そして校長の報告。開口一番「寒くないですか? 何人か上着を着ていない児童もいますが…東京は桜も満開です。ウリハッキョの桜はまだですね。一年間たくさんのことがありました。それを話すと2時間、3時間かかります。座っていられますか?」
会場がざわめく。
「では、3学期の話だけをします。(原稿をかざしながら)それでもこんなにあります。1年生、ソンセンニムが何を話しているか分かりますか?」
1年生は、声をそろえて「イェ~」。校長がやさしい言葉を選んで話しているとしても、1年間で大人の話を理解できること自体凄いことだ。

校長は、学年別にすべての児童の名前を一人ひとりあげて、「学芸会では大きな口をあけてうたっていました」とか、「字かとてもきれいにかけるようになりました」とか、「いつもおもしろい話をして、笑わせてくれました」とか、「本をたくさん読むようになりました」などと、称えていた。
低学年にはやさしい言葉をかけながらも、クラスメートの話を聞かなかったり、困らすことを言ったりしないよう、戒めていた。高学年には、気持ちを一つにして、格好いい上級生になろうとエールを送っていた。
2年生にはクラスの「オモニ的存在」がいるようで、5年生には全校の「アボジ的存在」がいるようだ。頼りになる、頼もしい児童のようだ。「クラスの太陽」もいるという。いつも明るい児童に違いない。
校長の、小学児童には少し長い話が終わると、5年生の2人は両手を頭の上にかざして拍手をしていた。

つづいて、学年別に担任が児童の名前を読み上げ、成績表と優等賞と皆勤賞などが入った袋を一人ひとりに手渡していた。東京第3では、成績表は生徒代表に、優等賞と皆勤賞は受賞者を読み上げ、一人ひとりに渡していたが…。「袋詰めの効用」については、つぎの「サランの会」の月例会に行ったとき、校長に聞いてみようと思っている。
漢字検定試験の合格者には、合格証が一人ひとりに手渡されていた。

式が終わると、4、5年生が会場の整理、椅子の後片付けを始めた。男女が助けあって、てきぱきとして、見ていても気持ちがいい。
椅子を並べて式の準備をしたのは、5年生だった。
「もうすぐ6年生だね」と、声をかけると、みんなが嬉しそうに首を縦に振っていた。

帰り際、校舎に寄り添うように立っている桜の木は8分咲きといったところだ。昨年、強風で校舎側に大きく傾き、何本もの丸太で補強したが、蘇ったようだ。入学式か、始業式の後には、今年も校舎の屋上で、この桜の木をバックに記念写真を撮る児童の姿が見られるのであろう。新入生は女子児童だけだそうだ。学校生活でどんな「風景」を見せてくれるのかが、楽しみだ。
