いつもの東京チェーサムへ。2日連続の「登校」だ。
6年生の交流会である。多くのアボジ・オモニたちが参加できるように日曜日になったようだ。
校庭をのぞくと、すでに空のビールのケースを台にしたテーブルと丸椅子が並んでいた。
運動大会の後は、焼肉パーティーのようだ。
会場は、近隣の日本の小学校の体育館だ。男子児童はビニールのボールを蹴ったり、
女子児童はバスケットボールに興じたりしていた。舞台に座り込んでおしゃべりする児童もいた。

「今日は気合が入っています」、「今日もでしょ」、「膝当てまで持って来たんだから」
-オモニ達は口も軽やかだ。
「怪我をしないように」と、アボジをさとすオモニもいた。
準備体操なのか、怪しげに身体を動かしているアボジもいる。「最年長」52、3歳のKさんだ。
オモニ達のおしゃべりの輪はどんどん広がって、それがまた分散していく。
アボジ達は2、3人が言葉を交わす程度、跳び箱やマットに一人座っているアボジも少なくない。

第一部の競技プログラム。ラケット便、出勤5分前、花のステージ、人間オセロ、水風船ゲームなど、
親子ゲームあり、親vs子のゲームありの盛りだくさんだ。

開会式。注意事項は熱中症に気をつけてだ。
「若いオモニ、アボジもそうですが、私も含めて、それなりに年を取っている方は、
子どもたちの手前メンツもあるでしょうが、あまり張り切りすぎないようほどほどに…」

親子がラケットでボールを運ぶ最初のゲームから一部の父母は、全力ダッシュだ。
ラケットが折れてしまうというアクシデントが…。

次は、児童が親にネクタイを結んで、上着を着せて、手帳とハンケチを入れたカバンを
持たせて、手をつないでゴールするという「出勤5分前」というゲームだ。
子が親にではなく、オモニが子にネクタイを結んでいるオモニが何人かいた。
いつもアボジにネクタイを? しかし、何度も結びなおしている、手慣れた様子はないので、
それはないようだ。ネクタイが伸びきり、少しだらしがなく上着を着て、
カバンをぶら下げたオモニの様は、新橋の酔っ払い、そのものである。

息子に手をつないでもらえないオモニ、アボジはこのチャンスを逃すまいと、娘の手をしっかり握っていた。
進行係のアボジから「手をつないでゴールです!!」の声が繰り返し飛んでいた。
そんな様子を担任の黄先生が笑いながらカメラに収めていた。

1メートル弱の四角いマットを何枚か重ねた上に乗った人数を争う、「花のステージ」。
プログラムでは、親VS子となっていたが、児童の男女戦、つぎにアボジ・オモニ戦となった。
まずは練習タイム。さほど大きくないマットの上に何人も乗れるものではない。
背の高い舞踊部の女子児童が小柄な友達を肩車する、それを見ていた男子児童はおんぶを試みる。
体つきが小さい男子児童が断然有利なはずだったが…。

汗臭いアボジ達が抱き合う姿にオモニ達は??だ。
片足をあげたアボジには、とても可愛らしいというヤジも飛んでいた。

そんなオモニ達は、「細めの人」との言葉に皆が群がっていた。

人間オセロゲーム。このクラスの男女比は11対21、
男子児童は、女子児童にさかんにハンディーを要求していた。
いつものことなのか、女子児童は「ご勝手に」という風、余裕に満ちていた。

上級生が熱戦を繰り広げている一方で、父母に連れてこられたのであろう
体育館でのゲームに参加できない下級生児童たちは、
マットに座り込み、こちらの携帯ゲームに夢中になっていた。

第二部は、女子児童の親は、娘とバスケットボールの試合、
男子児童の親は学校の運動場に戻ってサッカーの試合だ。
1年担任の秦先生は、この日は6年児童のオモニとして参加、
バスケ部の娘は積極的にゴールを狙っていたが、オモニはボールを避けているようだった。
ヘバラギカップのとき、応援席で大きな声を出していたアボジは、
濃紺のランニング姿もそれらしく、一人目立っていた。

運動場での炎天下でのサッカー組は大変だった。
そういえば、体育館で「うちは女の子でよかった」と、オモニが言っていた。
それでも親子でキーパーしたり、助っ人だと言って参戦するオモニがいたり、
何度も果敢にシュートを試みるので「なでしこ」みたいだといわれるオモニがいたり、
体育館でのゲームに体力を使い果たしたのか、「ただ立っている」というアボジがいたり、
転んで擦り傷をつくったアボジを気遣うオモニがいたり…

日陰に座り込んで、声も出せないオモニがいたりしたが、それなりに楽しんではいたようだ。

その一方で、七輪の火起こしに汗を流すアボジ達がいた。

午前中から並べて置いた丸椅子は、熱くて座ることができない。
急きょ、運動会用のテントを組み立て始める。この日は連続している真夏日の10日目だ。

テントの下での焼肉。とにかく乾杯だ。午前中はなんとなく距離を置いていたアボジたちも、
すっかり打ち解けていた。誰々のチョッカ(甥っ子)だとか、何とか先輩と職場が近かったとか、
同胞社会はけっして広くないようだ。

児童たちは、子ども同士でだ。
「アボジのウリマル聞いたの久しぶり」だとか、「お前のアボジ、今日は張り切ってない」とか、
「オモニ、飲みすぎだろ」とか、「明日は休みだから、オモニ達はカラオケに直行じゃない」とか、
煙に目をこすりながら、オモニが作ってくれたであろう、おにぎりと焼肉をつっついていた。

日焼け対策万全の黄先生が児童と話していた。6年生ではなさそうだ。
この日の交流会の主催は、学校ではなく学父母のようだ。
黄先生は一緒に競技に参加したり、大きなカメラを児童に向けたり、父母と話しこんだり、
表情もいつもより少し緩んでいた。

抽選会も催された。外れなしのみなに何らかの「豪華賞品」らしきものが行きわたる、
司会者は自分のトークに酔い、参加者はそれを楽しむような抽選会だった。

オモニたちの乾杯は続いていた。ビールを冷やしたり、肉を出したり、キムチを配ったりして、
多少、食べ始めるのが遅かったようではあるが…。オモニ同士の乾杯は続いていた。
テントを片付け始めた3年担任の成先生に炭を持ってきてもらったり、
アボジに冷えたビールをもっと来るようにこっそり合図したりしていた。
「ビールはこれぐらい」だと言ったりしていたが、つぎは焼酎か?…。

児童は運動場で遊びに行き、アボジ達は席を立ち、テントを片付け始めたというのにだ。

テントがとっぱられた青空の下で、オモニ達の「宴席」は続いていた。
アボジに「子供任した。先に帰っていいや」と声をかけるオモニがいたり、
2リットル入りの焼酎のペットボトルを膝に載せ、肉を焼く手が止まらない。
缶ビールから口が離れない。
この何年間、「登校」しているが、オモニ達がこんなに風にして楽しむ場はなかったようだ。
夏の夜会も、秋のバザーも、アボジ達は飲んで食べていればいいが、
オモニ達はそうはいかない。準備と後片付けに息つく暇もない。
それに、子どもたちも言っていたように、学校は明日、休みだ。

帰りがけにふと一人のアボジがもらしていた。
「自己紹介でもさせられたら、活動歴もないのでどうしようかと思ったが、
そんなこともなく、ゲームで身体がふれあうと、自然に言葉を交わすようになり、
それなりに雰囲気に溶け込めたようだ」と。
「それにふだん、家では見せない子どもの表情も見ることができて、
来てよかった」と。ik