朝鮮学校のある風景-その九・
10月は遠足に教育実習・④
*「統一評論」12月号掲載の連載に加筆。
■コンテストのケーキに独島や江華島も
そのコンテストは、九月の最終土曜日、二五日の午後に共和国創建9・9節を祝う少年団主催の記念行事として催された。
会場は、教室を三つ合わせた、いつもの臨時講堂。四、五、六年の六~八人の混成チームの一三組が、「9・9節を祝う」というテーマにチャレンジした。制限時間は二時間である。
ロールケーキをのばしてケーキの台をつくり、それを思い思いの形に切ったり、クリームを塗ったり、チョコレートや、レモン、キウイ、フルーツの缶詰に、ジャムなど、あらかじめ組別に選んだ素材を挟んだり、飾りつけたりして仕上げるという手順だ。
クリームがなかなか泡立たない、包丁でキウイの皮をむく手先がぎこちない、二人がかりで缶詰を開けている。
男性の成先生が器用に救いの手を差し伸べると、児童の間から歓声があがる。成先生は得意満面な笑みを浮かべる。
一方、女性の梁先生と洪先生は「包丁は六年生だけ使って…」、「後かたづけも採点の対象になります」と、実演ではなく声による指導担当のようだ。声が聞こえるものの…。食べるのは好きでも、作る方は苦手なのかもしれない。

大きな口を開けてクリームの味見をする子がいる、「毒見」だといって、ブルーベリーをなめる子がいる、とがめる子の口にチョコレートを突っこみ、口止めする子がいる。どのグループからも目が離せない。
延ばしたロールケーキの上に、朝鮮地図を書いた紙を載せ切ったり、フルーツやチョコレートで「9・9」の文字を作ったり、テーマに沿ったケーキ作りが着々と進む。男女別の組編成なので、男子児童もつまみ食いや、他の組へのちょっかいにかまけているわけにはいかない。形にしなければならないからだ。
二時間は瞬く間に過ぎる。昼食をはさんで、審査とデザートを兼ねた試食会である。
ケーキを囲んで、組別に記念写真を撮り、いよいよ審査だ。外出した校長のピンチヒッターとして、私にもフォークが渡された。
朝鮮地図に軍事境界線はない。済州島がある、独島もある。漢江の河口にかたまりがある。児童に聞くと江華島だという。歴史の時間に一八七六年の日本との「江華島条約」について、習ったのであろう。チョコレートや、フルーツで、「9・9」「慶祝」という文字に混じって「統一」という文字も描かれている。いかにもウリハッキョ(朝鮮学校)らしい。
各テーブルを回って、一口づつ食べる。
「美味しいですよ」、「先生のブログを見て、オモニが大笑いしています」
男子も、女子も「審査員」のご機嫌取りが上手だ。
フルーツは美味しそうだが、手をつけるわけにいかない。遠慮がちにケーキの隅を突っつくので、どれも同じようなクリームの味だ。
そして、全員による試食会である。
「白頭山は一番最後に食べよう」、「この味、びみょうー」
「一口でも残したら、減点です」

昼食の後なので、女子児童は大きなケーキをもてあまし気味だ。呼ばれもしないのに、男子児童が助っ人に駆けつける。それでも、食べきれない。チュンヒョを呼ぶほかない。ライオンズファンの野球好きの大柄なトンムだ。この日は、大食いのソンガンももてていた。
後日聞いた、審査結果と寸評は―
男子・5組(レモンとメイプルシロップのケーキ):味付けが斬新!!
女子・10組(「カンファド(江華島)」のケーキ):「カンファド」のアイディアが○!!
総合・11組:ケーキの味は飛びぬけてはいなかったが、準備・制作・片付けの段取りが完璧!!
-とのことだ。
できれば、二人の「大食漢」には、「特別賞」をあげたかった。
ところでこの日の目的だった、全校生を前にしてのリハーサルは、現代器楽が前庭で、民族器楽合奏と舞踊の中舞が三階の臨時講堂で行われた。群舞は、会場が狭く演じることはできなかった。夏休みに舞踊部の練習を近隣の日本の小学校の体育館で行っていたことが思い出された。

来年からクラブに入ることになっている三年生が真剣に見ている。新入部員の勧誘を兼ねているだけに、演じる児童も気を抜けない。
司会の「クゴ(国語)部」の男子二人は、緊張しながらも、難なく大役をこなしていた。その一人はあの「大食漢」、発音もなかなか良かった。
× ×
何日か前、地元の商店街で九期上の高先輩夫婦と会った。
二〇〇七年に刊行した『私たちの東京朝鮮第三初級学校物語』に寄稿してくれた一九五三年の卒業生だ。
『物語』には「姉の貴子は五期生で、私が六期生、妹は一一期と一四期生です。私の二人の息子も第三を卒業しました。孫娘の貞任は二年生で、今年はその下の貞娥も入学します。チェーサム一家です。最近は、孫の貞任とメールを交換するのが、楽しみになっています。『チェウドン(最優等)になった』とか、『ハルベ(お爺さん)』とかカタカナのウリマル交じりです。朝鮮学校に行っていることを実感する瞬間でもあります。学校で催される敬老の日の行事も楽しみです」と、書いている。
「今年は敬老の日にお見えになりませんでしたね」と声をかけると、「低学年の祖父母が対象だから」と、残念がっていた。しかし、「来年、また孫が入学するので、三年間は付き合える」と、うれしそうに語っていた。
一一月中旬には、新入生の健康診断が予定されている。来春は、何組の親子と孫の三代、「チェーサム一家」に会えるだろう、それも楽しみだ。
(キム・イルウ ウリハッキョを記録する会・一粒出版www4.ocn.ne.jp/~uil/p.htm)