朝鮮学校のある風景-その七 八月はバスケとサッカーの中央大会 ①  | トンポ・トンネ 日々イモジョモ

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朝鮮学校のある風景-その七 
 
 
 
八月はバスケとサッカーの中央大会 ①                                                   
*9月中旬発売の「統一評論」10月号の連載に加筆した。                                        
 
 毎週火曜日の夕方は、隣のJ分会の姜・梁夫妻が主宰するテニスクラブの日だ。日本人夫婦も混じって、六〇歳前後の五~六人が、東京中高(十条にある東京朝鮮中高級学校)の夜間照明付きのテニス場で、ボールに追われている。
 
 隣のグランドでは、関東サッカーリーグ一部のFCコリアの選手がボールを蹴っている。八月はお盆休みか、地方に遠征に出ているのか、いつも腕組みをして、練習を見守っている李監督と選手の姿がない。
 
代わって、ボールを追っているのは、九月に東京地区大会を控えた、青商会(在日本朝鮮青年商工会)のメンバーだ。朝高時代の花形選手もいるのだろう、ドリブルも、パスもうまい。シュートも外さない。しかし私語が多い。和気あいあいである。
 
いつものように七時過ぎに学校に着くと、すでにグランドで三人の男の子がボールに戯れていた。立ち止まって話を聞くと、四歳と五歳の子は、西が原とか、西が丘だと言っていたから、この近所だ。もう一人は小学一年生だと言う。
 
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堺市で催された在日朝鮮初級学校学生中央サッカー大会(八月六~八日)の二日後の火曜日には、チェーサムの児童が、翌週にはチェーイルの児童が、アボジ(父親)と一緒にボールを蹴っていた。
 
それで、「チェーイル(荒川区にある東京鮮第一初中級学校)?」、「チェーサム(板橋区にある東京朝鮮第三初級学校)?」と、尋ねたが、反応がない。担任先生の名前を聞くと、日本名である。夏休みにS県から東京の親戚の家に遊びに来たという。
 
夜間照明に人工芝、初めての体験なのであろう、子供たちは気分が高ぶっている。練習が始まると、声援が凄い。「アボジ、頑張ってー」を連呼する、練習試合が始まると、「アボジ、シュート」である。小さい子の「アボジー」の響きはとても心地よい。
 
練習が終わると、周囲にはばかることなく、パンツ一枚になって、水を浴び、体をふきながら、「井戸端会議」風の会話が弾む。
 
「先輩のように、子供を連れてサッカーをするのが夢です」「理解のある女性とめぐり合うことが肝心だな」
 
そんなたわいのない言葉にも心がなごむ。
 
ふと、五月のチェーサムの運動会の時、「これからの青商会は、子供を三人以上生んで、みんなウリハッキョ(朝鮮学校)に入れる。体で学校を守っていかなくてはならない」と、後輩にわけのわからないことをいっていた、酔いが回った若いアボジの顔が浮かんだ。
 
■チャリティーゴルフならぬ焼肉パーティー
 
 始業式の翌日の土曜日、東京チェーサムの校庭で焼肉パーティーが催された。毎年、八月初旬にバスケットボールとサッカーの在日朝鮮初級学校学生中央大会が催される。ヘバラギカップとコマチュックである。
 
 バスケの試合は東京だが、サッカーは関西、今年は堺市での開催だ。その遠征費用ねん出を兼ねてのチャリティーゴルフならぬ、参加費六千円のチャリティー焼肉である。
 
 三時からオモニ(母親)サッカーの練習があると言うので、その見学も兼ね、早めに学校に着く。
 
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 金校長の第一声が「何人来てくれるか」。一週間後の土曜日には、運動場で五つの学区同胞による五〇〇人規模の「8・15夜会」が予定されている。屋台の売り上げは学校への寄付となる。学父母と地元同胞への負担を心配しているようだ。
 
 午後から会議に参加している教育会の理事七、八人は合流するとして、その他の学父母の参加は望めないのではないかと、いつになく弱気だ。
 
 一つの七輪を四人で囲むとして、一〇は多いかな…、それでも準備は多めに…、そんな言葉を交わしながら、サッカー部担当の成先生と準備に取りかかる。
 
 七輪に炭を載せ着火剤をかけて、バナーで火を起こすのだが、この日も暑く、すぐに汗だくだ。
 
「着火剤には気をつけてください」。
 
優しい目をした教育会の文会長が声をかけてくれる。着火剤による火傷、事故が多発しているからだ。
 
 予定の五時を過ぎ、何人かが肉を焼き始める。その匂いにつられるように、運動場で練習をしていたオモニサッカーの面々が席に着き、ビールを飲み出す。児童を連れた学父母も多い。カメラを片手にインタビューの相手を探す、朝鮮新報の李記者がいる。
 
 「箸がありませんか」
 
「ビールが足りません…」
 
買いに走る。五、六〇人は集まったようだ。
 
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予想外の盛況に気を良くしたこともあってか、校長は参加者に「キウイ酒」を勧めている。昨年、校庭で採れた一千個のキウイの一部を焼酎に漬けたチェーサム特製酒だ。
 
 酔いが回ったのか、「スラムダンク」派と「ダッシュ勝平」派との間で、熱いやり取りが交わされる。案外、バスケファンは多いようだ。前者は一九九〇年から九六年まで「週刊少年ジャンプ」に、後者は一九七九年から八二年にかけて「週刊少年サンデー」に連載されたバスケットボールを題材にした人気漫画である。
 
 金校長の短めの感謝のあいさつ、サッカー部担当の成先生とバスケットボール部担当の金先生の決意表明、つづいて金教務主任が撮影した練習風景のビデオが映し出される。オモニたちの中からは「あれがうちの○○」、「うちの○○も頑張っている」との声があがる。それを見つめる先生、地域の活動家のまなざしは暖かい。
 
ウリハッキョ(朝鮮学校)に通う元気な児童の姿は、家庭と同胞社会の活力の源なのである。
 
 この日のことは、「朝鮮新報」に「東京第三初級でチャリティー焼肉の集い」「『ヘバラギカップ』、『コマチュック』に出場する選手たちを激励」とのタイトルで、報じられた(電子版七月二八日)
 
その記事の切り抜きは、職員室の前の掲示板に貼り出された。
 
■ヘバラギカップ―思いがけない「北九州」との出会い(次回)
 
 
 
 
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在日のこれまでと今を本に一粒(한알)出版
ウリハッキョを記録する会
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■シリーズ・朝鮮学校の歩み
Ⅰ「私たちの東京朝鮮第三初級学校物語」(一九四五~六七年・証言編)
Ⅱ「朝鮮学校は民族、統一、共同体の価値を持つ宝庫」(ソウル発インターネット新聞の特集)
Ⅲ「復刻版・東京朝鮮中高草創期十年史」
Ⅳ~Ⅵ「ぼくらの旗-君はあの頃(都立)の東京朝高生を知っているか?(三部作)
Ⅶ「私の中の一九四八年朝鮮人学校教育事件-アメリカ占領軍に抗して」
Ⅷ「続・私たちの東京朝鮮第三初級学校物語」(一九四五~二〇〇九年・体験記録編)