週刊朝日の今週号(2011.1.21)に「2011年は勝負の年!勝てる国、ニッポン」という特集があり、特集の最後に、元祖「ジャパン・ハンドラー」(またはハンドル)として知られる「リチャード・アーミテージ」(Richard Armitage )の「世界で最も信頼できるパートナー、日本」という記事があったので読んでみた。「ジャパン・ハンドラー」とは、日本を米国の国益に沿うよう日本の要人を説得またはしかりつけてあやつる役割を持った人物のことである。
つい最近、NHKスペシャル「日米安保50年 第3回 “同盟”への道」で、アーミテージが日本を米国のために操ってきた露骨な発言の数々に驚いた。NHKがここまで放送していいのか?とまで感じたものだ。ちなみに今のジャパン・ハンドラー「ジョゼフ・ナイ」と共著で新著『日米同盟vs中国・北朝鮮』(文春新書)を出版し、ぼくの近所の本屋の棚にも正面を向けて売られている。
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米政府は武器輸出三原則の見直しを期待、中国に備えた日本の防衛大綱を評価
アーミテージは正直なひとだ。米国が太平洋地域で覇権を維持しようと日本をうまくあやつってきたことを誇りに思っている愛国者だ。米国の国益のために日本を利用してきたことに、全く罪悪感というものがない。だからこそ、週刊朝日の特集でも、読者に向けて堂々と米国の良さを訴えかけ日本は同調すべきだと強調する。
まず彼は、「昨年末に日本政府が発表した防衛大綱は中国を意識しており、それは良いことだと思います。一方で、実態的に日本政府はいまだに何もやっていません。自らの力を強化し、中国の圧力に対して立ち上がろうとしていないように見えます。」、と中国に備えた日本の防衛大綱を褒め上げたうえで、軍事力を強化し中国と対決しろと促す。
「東シナ海での出来事(尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件)は、その一例です。」と中国の圧力を例示し、「武器輸出三原則の(緩和を見送った)決定についても、中国はそれを笑っていることでしょう。もちろん、我々はがっかりしている。この決定は(日本の安全保障政策に)何の結果ももたらさないからです。」と、武器輸出三原則の見直しを見送った日本政府に対し米国側ががっかりしていると述べる。
日中関係安定で日米離反を危惧
「中国は日本の「中立化」を志向しています。そのために今後も日米離反を画策することでしょう。」と述べたことで、彼の(というか米政府の)日本政府の中国に接近することの危惧の本音が語られる。
「中国の対日政策はこれまでとは違うアプローチといえます。鳩山政権当時、小沢一郎氏が民主党の議員団を連れて訪中した際、胡錦濤国家主席は面会に応じましたが、今後も中国は「日本に対して優しくする」という戦略を続けるでしょう。」と述べていることから、本音では、鳩山政権当時の民主党政権下で日中関係は安定すると考えていたこともわかる。
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米軍が沖縄の基地を手放さないのは、米軍にとって重要だから
アーミテージは日本を重視した理由について、みずからがベトナム戦争に従軍した経験に基づいて、「私が日本を重視するようになった理由はいくつかあります。まず、海軍の拠点としての日本です。ベドナムで戦った後、我々はいつも日本に帰っできました。それはとても重要なことでした。私自身、ベトナム戦争に参加した際、いつも沖縄や日本のどこかを経由してベトナムに向かいました。そのとき、こう思ったのです。「この地理的要件は米国にとって、戦力を配置する上でとても重要だぞ」と。」、と率直にベトナム戦争のときに沖縄が戦力を配置する上で重要な戦略拠点であったことを認めている。米軍基地が沖縄に集中しているのは単に米側の都合であって、日本の防衛のためではない。
キャンベル国務次官補に日米両国で合同上陸作戦訓練を行うべきだ」と進言
アーミテージが日米同盟を用いて中国に対して圧力を示す姿勢は、「力ート(キャンベル国務次官補)と私のオフィスで意見交換しましたが、そのときに、「日米両国で合同上陸作戦訓練を行うべきだ」と進言しました。場所はパラオでもマーシャル諸島でも、どこでもいい。発信するメッセージはただ一つ。「尖関! 中国よ、我々をなめるんじゃないぞ」ということです。」という発言に端的に現れている。
北朝鮮問題は中国頼みでなく日米韓が結束することで解決
彼は北朝鮮問題に関するオバマ政権の米朝直接対話に消極的なことを「一方、北朝鮮ですが、外交関係で多くのミスを犯しているオバマ大統領は、朝鮮半島については(米朝直接対話に消極的という意味で)とてもうまくやっていると思います。」と逆に評価している、その理由として、「北朝鮮問題において今、最も重要なことは中国を動かすことではありません。日米韓が結束することこそ重要なのです。」と述べている。彼の本音は中国に対し日米で圧力をかけながら、中国抜きの日米韓で北朝鮮問題を解決したいのだ。
そして、中朝関係について、「歴史的に、北朝鮮は必ずしも中国寄りとは言えないと思います。彼らは中国に依存はしていますが、だからと言って、信頼していたり、好きというわけではない。一方で中国も北朝鮮を非常に嫌っているのです。」と述べていることからも、北朝鮮問題を日米韓で解決しても中国の反発はない、と示唆している。しかし、北朝鮮問題にはロシアも関係してくるし、中国が北朝鮮といやでも付き合っている理由を彼が軽視しすぎていることは明らかだと思うが...
ジャパンハンドラーの意向を日本に伝えた知米派自民党議員の存在
アーミテージは「かつて「自民党きっての」知米派と言われた椎名素夫議員(故人)には、驚くほど機微に触れる情報や写真を提示していました。なぜなら、我々が彼には絶大な信頼を寄せていたからです。彼はその内容を開示することなく、「ここに、とある情報があって、自分はそれを信じる」と言えば、周囲も彼を信じました。そんな国会議員を我々はいつも探し求めています。」と述べ、自民党の故椎名素夫議員に重要な写真や情報を流し、米政府側の意向に沿うように日本側を操作していたことを暗に認めている。そして、現在、米側の手足となって働いてくれる国会議員が今では存在せず、常に捜し求めていると述べている。
日本が在日米軍基地施設を提供しているという事実が最も重要
彼は、「中国に比べ、日本にはたくさんの長所があります。経済が世界第3位になったとしても、日本が米国に与えてくれるものは「王冠」のように輝いています。」としたうえで、「忘れてはならないのは、その王冠の真ん中に非常に大きなダイヤモンドがあるということです。それは日本が在日米軍基地施設を提供しているという事実です。」と述べている。その理由として、「それが日本の安全保障のみならず、すべてのアジア地域で米国の安全保障を担保してくれています。そのことはアジアのすべての国も理解しています。」という。
つまり、米国にとって日本の価値はすべてのアジア地域で米国の安全保障を担保している在日米軍基地施設を提供しているという事なのだ。
最後に
アーミテージを初めとするジャパンハンドラーは、米国の国益にかなうように日本を中国と対立させようとし、北朝鮮に日米韓で必要以上の圧力をかけようとしている。日米合同訓練のエスカレートは、米国の戦略に日本の自衛隊を巻き込み、米国の手先として使おうというものだ。
そして武器輸出三原則を見直しさせ、日米共同開発のミサイル防衛システムを第三国に輸出し、金儲けを図ろうとしている。
米国は日中関係の安定を危惧しているのであり、在日米軍基地は米国にとって必要であっても、日本にとって必要かどうかは疑問だ。米国抜きの日中露を軸とした安全保障体制を築くことができれば、極東地域での米軍をなくせるし、中国が米空母に対抗することもない。北朝鮮崩壊後の難民問題や新体制案を日中韓露の四カ国で話し合い米国頼みの北朝鮮に提示し、米国抜きで問題の解決を進めることが極東の当事国にとって重要に思える。
いずれにしても、ジャパンハンドラーの存在を認め、日本が米国のいいなりにならず、独立国として外交や内政をきりもりしていこうとすることが、日本のプレゼンス(存在感)を高めるに違いない。