クラシックピアニストの歴史をみるように、そのつど活躍する大勢のピアニストたち、その中でも、とくに世界的に名を成した方を紹介していくシリーズの4回目
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今回は、海外のクラシックピアニストに絞って、1950年代頃から現在の若手までを、独断(?)で紹介したいと思います。
第二次大戦後もある程度経過して活躍されてきた年代からのピアニストたち、ショパンコンクールを始め、権威ある国際コンクールが年々増えてゆき、そこで優勝したり、上位入賞して本格的に世に出る事が普通になってゆきます。
コンクールで入賞せず世に出る方もおられますが、寧ろ例外的なケースとなってゆきます。
マリア・ジョアン・ピレシュ(ピリス) ポルトガル出身
6歳でリサイタルを開いたという神童ぶりを示していました。女性ピアニストとしても大変重要な人物とされる。
手の故障で演奏活動を一時休止していた時期があります。
モーツアルトには特別な愛情を示すほど重要なレパートリーとなっています。他にもショパン、シューベルト、ラヴェルの作品を愛奏しています。ソロのみならず、室内楽の演奏にも大変力を注いでいるそうです。
2018年、コンサート活動から引退を表明。
モーツアルト ピアノ協奏曲 第9番「ジュノム」より
マレイ・ペライア アメリカ出身
指揮者としても活動しています。ヴィルトーゾとしての一面と繊細なピアニズムを両面併せもっていると言われる。
90年代に深刻な手の故障をし、手術を受けましたが、演奏活動を休止している期間に、バッハの音楽の研究に打ち込みました。もともと幅広いレパートリーを持っていましたが、この成果が実り、バッハの演奏にも高い評価を得るようになります。2005年、手の故障が再発しますが、その克服後は、いっそう奥深さを持った演奏を披露するようになります。大英帝国勲章KBE受賞。
バッハ フランス組曲 第4番
クリスチャン ・ツィマーマン(ツィメルマン) ポーランド出身
現代最高峰のピアニストのひとりとされています。
1975年、ショパンコンクールで優勝。そこから更に輝かしいキャリアを重ね続けます。そのテクニック、音楽表現力は文句なく素晴らしい。
演奏の際の楽器コントロールを常に徹底したものにする為、演奏会ではマイピアノを持ち込むというのはよく知られています。また、レコーディング技術にも造詣が深く、自身でスタジオを設計した事もあるなど、音へのこだわりと探求心は相当なものです。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 第3楽章から
ミハイル・プレトニョフ ロシア出身
チャイコフスキーコンクール優勝。以来、ピアニストとして精力的な活動をするほか、指揮者としても才覚を発揮し、ソ連初の私設オーケストラ、ロシア・ナショナル管弦楽団を創設。大変幅広い音楽活動を展開しています。
特に音色の多彩さを追求したピアニズムは、こんにち寧ろ貴重な存在と言えるようです。また本人も超絶技巧の使い手ではないと言っているそう。
また、ピアノ編曲も携わり、チャイコフスキーのバレエ音楽のピアノ版が有名。
牛田智大さんの師匠のお一人で、これまで度々共演をされてきましたね。
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 第1楽章から
2015年 初共演ツアー時のプレトニョフ&牛田
スタニスラフ・ブーニン ロシア出身
名門ピアニストの家系に生まれ、幼少から才能を発揮しますが、彼を世に知らしめたのは、1985年の19歳でのショパンコンクール優勝、それも圧倒的な演奏力で、世界が大注目!クラシック界では珍しい大フィーバーぶりで、特に日本では持て囃されました。
その後何年かは世界で演奏活動を続けたものの、やがてレコード会社からも離れてしまい、演奏活動も地味なものに・・・ 現在はほとんど目立った演奏活動は無い模様。
ショパン・コンクール ワルツ へ長調、 英雄ポロネーズ
エフゲニー・キーシン ロシア出身
10歳でデビュー、12歳で世界的アルバム発表を果たすなど、神童としてメディアでも注目される。これまで師事した名ピアニストもなく、国際コンクールの経験も無いですが、世界的に旺盛な演奏活動を展開してきました。
類い稀な高い音楽性と技巧の持ち主で、総じて情熱的な演奏スタイルと言えるようです。レパートリーは、ごく若い頃は、ロシアものやショパンを得意としてましたが、現在では古典から近代までたいへん幅広いです。
リスト ラ・カンパネラ
デニス・マツーエフ ロシア出身
師のドレンスキーから「完璧な技術と表現力は目覚ましく、聡明で才能に恵まれている」と評された。1998年、チャイコフスキーコンクール優勝。以後世界各地で旺盛に演奏活動を行っている。
体格ゆえ体力にも恵まれているらしく、コンサートの頻度も多く、また、ラフマニノフのコンチェルト4作を、1日で披露したこともある。
レパートリーは広く、主だったロシア作品のほかショパン、リストなどを得意としている。
更に特筆すべきは、ジャズの演奏も評価が高い事。自身のジャズ作品のほか、即興演奏も得意としています。
グリーグ 山の魔王の宮殿 ・・・最後はピアノを壊さん?ばかりの怪演
ガーシューイン「ラプソディー・イン・ブルー」から マツーエフ版(?)
ラン・ラン 中国出身
ダイナミックな演奏スタイルと、比較的自由な楽曲解釈、さらにパフォーマンスやユーモアを持ちあわせた面白さからも世界中で大人気のピアニスト。
主だった国際コンクールの経験こそ無いですが、17歳のとき、代役で出たコンチェルトの演奏が話題となり、一躍人気ピアニストに。
これまで共演したオーケストラ、指揮者はかなり記録的な数になるとか。
日本では、人気映画「のだめカンタービレ」の吹き替えをすべてこなし、こちらでも人気沸騰となりました。 ユニセフ親善大使にに任命されている。
牛田さんが上海でピアノを始める強い動機となった、憧れのピアニストの一人として有名ですね♪
リスト ハンガリー狂詩曲 第2番
ストリートピアノでパフォーマンス!♪
ユジャ・ワン 中国出身
ラン・ランと同じ、アメリカ・カーティス音楽院でゲイリーグラフマンに師事。アルゲリッチの代役で一躍有名になるなど、ここでもラン・ランと似た出世コースを辿っています。
人一倍の高度な超絶技巧を操ることができ、その演奏は華麗でダイナミックですが、抒情的な表現にも目を見張るものがあります。
ミニスカートや奇抜な服装、ハイヒールを履いてステージに上がることも常であり、パワフルな演奏と相まって、世界中で高い人気を得ています。
超絶技巧版 モーツアルト トルコ行進曲
ダニール・トリフォノフ ロシア出身
ショパンコンクール3位、チャイコフスキーコンクール優勝。圧倒的なテクニックと情熱的で多彩な表現力は、大変に個性的で、現在の世界の若手の中でも最も目を見張るものがあります。多忙な演奏活動を展開しながらも、その一つ一つに新しい表現を発見できる驚きもあるようです。レパートリーは既に幅広いですが、ラフマニノフを敬愛しているそうです。
ラフマニノフ 協奏曲第3番から (この髭ズラですが、一応20代です・笑)
チョ・ソンジン 韓国出身
15歳で浜松国際コンクール優勝、20歳でショパンコンクール優勝。その高度なテクニックと、深い音楽性、透明な音色でこれからの活躍がますます期待されています。 ショパンとドビュッシーを得意レパートリーにしています。
牛田さんとは、中村紘子氏主宰の浜松ピアノアカデミーで見いだされた、いわば同門とも言えますね。
ショパンコンクール 24の前奏曲 第24番
2015年 富山のリサイタルにて ソンジン&牛田
今回取り上げました海外のピアニストたち、個人的な好みも混じっていますが、まだ優秀な方々がおられるのは言うまでもありません。
また今回は、日本のピアニストには触れませんでしたが、この続きはいつかまたやりたいと思います🎹