廣瀬覚の「古代王権の形成と埴輪生産(同成社)」を読んで(26) | 気まぐれな梟

気まぐれな梟

ブログの説明を入力します。

今日は、今日はグレープの「無縁坂」を聞いている。

 

廣瀬覚の「古代王権の形成と埴輪生産(同成社)」(以下「廣瀬論文」という)は、円筒埴輪編年と古墳編年の対応について、以下のようにいう。

 

(1)廣瀬論文の主張

 

 「円筒埴輪編年と古墳編年の対応については」、「彷製三角縁神獣鏡の副葬開始を古墳編年の3期とみる近年の枠組みに従い、前期を二分する位置に円筒埴輪編年のI・Ⅱ期の境界を置く従来の認識を改め、I期の下限を3期と」し、「Ⅱ期については、古相において方形板革綴短甲の共伴が数例認められる一方で、新相では初期の帯金式甲冑や滑石製農工具類の共伴例が顕著となることから、Ⅱ期古相を和田編年4期、Ⅱ期新相を和田編年5期に位置づける」

 

 「中期以降は、須恵器との共伴事例を基軸に」すると、「Ⅲ期は比較的短期間とみられるが、新相段階では鋲留甲冑やTK73型式期の須恵器との共伴例がある」ので、「Ⅲ期はTG232型式期から一部TK73型式期を含むと推測する」

 

Ⅳ期は、古相の誉田御廟山古墳でTK73~216型式、中相の大山古墳でON46型式、新相の市野山古墳でTK208~23型式が出土しており、埴輪と須恵器の編年が概ね対応する」

 

これらの「和田編年との対応は、Ⅲ期が6期および7期の一部、Ⅳ期古相が7期、中相が8期前半、新相が9期後半に位置づけられ」る。

 

 「後期では、Ⅴ期古相がTK23~47型式、新相がMT15~TK10型式との共伴が認められる」

 

「Ⅳ期は、日置荘遺跡P地区における埴輪窯と須恵器窯との関係、および消費地や関連遺跡での須恵器との共伴から、古相がMT85型式期、新相がTK43~TK209型式期に併行するとみられる」

 

ここから「Ⅴ期古相が和田編年9期、新相が10期、Ⅵ期が11期に概ね対応」する。

 

(2)これまでの整理

 

 古墳の和田編年と集成編年の関係は、和田編年の4期が集成編年の4期前半、和田編年の5期が集成編年の4期後半となり、和田編年の6期が集成編年の5期となり、以降、同じ期間が和田編年は集成編年よりも数が一つ多くなる。

 

 廣瀬論文のこれまでの主張を整理し、関川編年による土器編年や酒井編年による須恵器編年などを参考として絶対年代を推定すると、多少の前後はあるが、おおむね以下のとおりとなる。

 

集成編年の2期前半=土器編年の布留1式古相

=廣瀬編年のⅠ期古相

=350年~355年

集成編年の2期後半=土器編年の布留1式中相

=廣瀬編年のⅠ期中相

=355年~360年

 集成編年の3期前半=土器編年の布留1式新相

=廣瀬編年のⅠ期新相

          =360年~370年

 集成編年の3期後半=土器編年の布留2式古相

=廣瀬編年のⅡ期古相(Ⅱ-1、2期)

=370年~380年

 集成編年の4期前半=土器編年の布留2式新相

=廣瀬編年のⅡ期新相(Ⅱ-3期)

=380年~390年

集成編年の4期後半=土器編年の布留3式古相

=廣瀬編年のⅡ期新相(Ⅱ-4期)

         =390年~400年

集成編年の5期  =須恵器編年のTG232型式

         =廣瀬編年のⅢ期古相・新相

         =400年~410年

集成編年の6期  =須恵器編年のTK73型式

         =廣瀬編年のⅣ期古相

         =410年~420年

集成編年の7期  =須恵器編年のTK216型式

         =廣瀬編年のⅣ期中相

         =420年~440年

         =倭王讃、珍

集成編年の8期  =須恵器編年のTK208型式

         =廣瀬編年のⅣ期新相

         =440年~460年

         =倭王済

集成編年の8期  =須恵器編年のTK23・47型式

         =廣瀬編年のⅤ期古相

         =460年~490年

         =倭王世子興、倭王武

集成編年の9期  =須恵器編年のMT15型式

         =廣瀬編年のⅤ期新相

         =490年~520年

         =仁賢大王、継体大王

集成編年の10期 =須恵器編年のMT10型式

         =廣瀬編年のⅥ期古相

         =520年~560年

         =継体大王、欽明大王

集成編年の11期 =須恵器編年のMT85型式~

         =廣瀬編年のⅥ期新相

         =560年~

          =敏達大王~

 

 集成編年の1期から4期までが古墳時代前期、同5期から8期までが古墳時代中期、同9期から10期までが後期、11期が終末期とされているので、廣瀬編年のⅠ期・Ⅱ期が古墳時代前期、同Ⅲ期・Ⅳ期・Ⅴ期が古墳時代中期、同Ⅵ期以降が古墳時代後期・終末期となる。

 

 なお、和田編年では、5期から古墳時代中期とする。