佐藤樹一郎氏との意見交換会に出席した【大分市長選2015】 | 日本と大分と指原莉乃の左翼的考察|ケンケンのブログ

佐藤樹一郎氏との意見交換会に出席した【大分市長選2015】


椋野美智子氏との意見交換会と同じ時期に、佐藤樹一郎(きいちろう)氏との意見交換会にも出席した。
樹一郎氏のお話や質疑応答については、末尾に要旨を掲載しておく。大分青年会議所などによる樹一郎氏と椋野氏の公開討論会の録画にもリンクをはっておくのでご覧になっていただきたい。

樹一郎氏については、
以前にも見解を聴く機会があったが、印象は変わらない。

全体として抽象的な議論が多かったのだが、子どもの医療費無料化については、九州の中核市と比較して立ち遅れている、という認識を示し、あいまいながら前向きな姿勢をとっていることは要チェックだと思った。

樹一郎氏は、釘宮磐前市政に反発する勢力を支持基盤にしている。釘宮市政批判の意味を含ませながら、各方面の市民の意見をよく聴くことを再三再四、強調していた。
それは政治家として必要なことだが、この点について気がついたことがあるので指摘しておく。

僕は、樹一郎氏がリニアモーターカーで東京と大分を2時間で結ぶ夢を語ることについて質問した。
そのとき、樹一郎氏は「東京-名古屋間の着工はすでに決まったこと」と発言した。
リニア中央新幹線については、根強い反対運動が計画沿線に存在する。JR東海が不適切な説明を計画予定地の地権者にしていたことが国会でも取り上げられた。
「決まったこと」という発言は、東京-名古屋間のリニア中央新幹線に反対する声は無視していい、という意味である。沖縄での米軍基地建設について、官房長官や首相が「粛々」を繰り返すことに沖縄県知事が「上から目線」と批判したが、これと同じである。
樹一郎氏が、政治家たるものは市民の意見をよく聞かねばならない、と思っていることを疑うつもりはないが、そういう理性レベルの認識の前のところに氏のなかにある「地金」が、この「決まったこと」発言があらわすことだと思った。「衣の下にヨロイ」とはこのことだ、と僕は感じたのである。
リニアで東京と大分を結ぶ夢については、「例示に過ぎない」と弁明しきりだった。確かにチラシ(
オフィシャルサイトにも同様の政策を掲載)をよく読めば確かにそういう文体になっているが、普通に読んだら、単なる例示とは読めない。リニアで東京と大分を結ぶ夢は、あまりに非現実的、という批判が、かなり陣営に寄せられているのをうかがわせる。

市民の意見をよく聴くことについては、広瀬勝貞大分県知事が設けている直接対話の場のあり方を高く評価し、範にとる考えを示した。実はここは釘宮市政と何ら変わりがない。
樹一郎氏の念頭にあるのは、氏を支持する反釘宮勢力が、釘宮市政が彼らの意見をないがしろにしたと憤慨していることである。それなら、広瀬県政だって変わりがないのだ。
2012年に、震災がれきの受け入れ方針を県と津久見市が示したとき、放射能汚染を危惧した人びとが反対運動をした。津久見市で住民説明会が開かれたとき、住民から次々に疑問や心配や批判の声があがる、大荒れの説明会だった。ところが、津久見市長と広瀬知事は、説明会終了後、間髪を入れずに「住民の理解は得られた」と宣言し、次の手続きに入ろうとして、保守層や市議を含む津久見市民の激しい反発を生んだ。結局、広瀬知事は「反対したのはごく少数」という繰り言とともに、震災がれきの受け入れの撤回を余儀なくされた。
僕は県の独自基準(100ベクレル/kg)は妥当だとする「条件付き受入派」だったのだが、住民の合意を得ないですすめるのはいけないし、絶対反対派の友人たちの懸念は理解できると考えたので、反対運動に加わった。
また、広瀬県政は佐伯市大入島海岸の埋め立て工事を、原発建設とそっくりの地域懐柔策でもって進めようとして、住民運動にはね返されている。
これが広瀬県政の「聞く耳」の実態である。

市民の声を聴くという点で広瀬県政を範にとる、ということの意味はこういうことである。「リニア東京-名古屋間の着工は決まったこと」という発言は、広瀬県政のやり方と符合する。
釘宮市政でどうだったかはすでに検討したので参照していただきたいが、釘宮市政のほうがまだ少しましだった、というのが僕の評価である。

この日は、小規模企業若手経営者が参加していたので、樹一郎氏の得意分野である産業振興の面に議論が集中したのはやむを得ないことだと思ったが、公開討論会では、福祉政策についても技術開発や産業振興の話として述べられる傾向があったのには、経産官僚とは、こういう思考をするものなのか、とちょっとだけ驚いた。

まだ、大分市のことをよくご存じない様子が、人柄の正直さや謙虚さをあらわしているとは思うが、国政候補ならともかく、市長の立候補予定者のこの様子は、市民にいい印象を与えないのでは?と思った。

地域づくりの実例では、氏が駐在したことがあるニューヨークやサンフランシスコの事例が多く紹介されたが、国内でまともな成功例がないということをも示している。ある専門家が、「経産省主導のまちづくりで成功したところなどひとつもない」と断言していたが、そうなのだということを経産官僚の側から樹一郎氏は裏書きしてしまった。

まちづくりの専門家の参加者からの「大分市は、広域都市圏を形成することのない中規模地方都市だが、その特徴をどういかすといいと考えるか」という質問には、「自分は大分市を大きくする、という成長志向でしか考えたことがなかった。そういう発想も必要かも知れない」と述べた。正直すぎる!(公開討論会での発言をみると、椋野美智子氏はこの質問に答えを持っているように思える)

前市政の示した都市計画のグランドデザインの評価を尋ねると、論評を避け、「市民にわかりやすく示すことはできていない」と述べるにとどめた。中央通りの車線減少の問題を含めて、氏は現行計画に腹の底ではかなりの共感を持っている、と推測していいと僕は考える。

小さなことだが、なじみのないカタカナ言葉が多用された。「ベンチマーク」とか、「トランスフェアー」とかって何だよ?(笑)
語り口も、難しい話をしているなという印象を与えるものだったと思う。

佐賀関の美しい風景が好きなんだということもわかった。豊予海峡ルートが架橋でされるなら、その景観がぶちこわしになることって、樹一郎氏はどうお考えになっているのか、ツッコみたかったけど時間切れ。


佐藤樹一郎氏の話の要約メモ

税金の使いみちには透明性が不可欠
職員給与の水準をめぐっては明確なベンチマークが必要
職員給与の水準も必要性をしっかり議論
例えば、民間委託できることがあるのでは
リターンがない投資は間違っている
ごみ収集が機能しなかったら都市が成り立たない。その費用の必要性を市民に納得してもらう必要がある
個別の声をよく聞く必要

以下は、参加者の質問に答えて(太字が質問)

「大分市再起動」というスローガンを用いている意味は?

政策や役所が充分にはたらいていない
職員や役所が持てる力を発揮できるように、という意味だ

大分市ブランドにできるものはすでにいろいろとある
世界最高の技術水準の工場などがある
新産都の優等生」は立派なブランド
佐賀関の景観は素晴らしい
産業遺跡には、日鉱佐賀関の遺構とかもある
大分川ダムとかも景色がよくて使える
ハコモノをつくるのもいいのではないか

まちのデザイン性は難しいが重要

どこにでもあるような画一的なまちではなくい、大分市らしいまちづくりが必要

中央通りの車線減少の是非については、議論が充分でない
これまですでに進捗してきたところまでは、デュープロセスを経て決まっているところは仕方がない
とりあえず、一車線分を歩道にした社会実験を見守りたい

リニアモーターカーを大分に、というのは東京-名古屋間のリニア新幹線着工を推進するということか?

リニアはあくまで例示
豊予海峡ルートも例示
大分の将来を大きな規模で構想・想像してみようというときの例示にすぎない。何が何でもリニア線の推進という意味ではない
第二国土軸を重視すべきだと思っているが、じゅうぶんに議論する必要性がある
東京-名古屋間の着工はすでに決まっている

子育て支援に特効薬はない
子どもへの医療費補助が大分市では薄い
大分市のほうが医療費補助の水準が低いほうが、周辺自治体から大分市への人口流入が防げる、という周辺自治体の声もあるので、そのバランスを考える必要がある
しかし、医療費補助は中核市としての標準的な水準でいくべきだ

大分市の人口構成は高齢者が厚くて子育て世代が人口が少ない

待機児童対策は、公立保育所の新設でなく、民間の各種事業を活用する

起業の推進が必要
起業は人のネットワークができているのが大事(シリコンバレーの例より)
大学の力や企業の力を借りる必要
立地大企業も、企業支援には使えるのではないか

サンフランシスコとニューヨークに滞在経験がある

ニューヨークでは
南北に走る大通りであるアベニューは車を通す
東西に通るストリートは、週末には歩行者天国にしている
それで交通は問題がない
ニューヨークは地下鉄が発達しているので単純に比較できないが
ニューヨークでは、いろいろな民族の人びとがいて、それぞれの宗教や文化ごとに、週末には毎週のようにお祭りなどのイベントをしている。完全にもとの文化に忠実に時期設定をしているわけではないが

広瀬知事は対話の機会をつくって現場を知ろうとしている
同じような市民との直接対話をしていきたい
(現市政でも「おでかけ市長室」など直接対話はしているが?)
姿勢とか頻度とか密度とかを強めるということだ

観光振興では、点でしかないスポットを結ぶ、コミュニティーバスにも使える交通
大分市にはたくさんの宿泊施設があって、県内各地へのアクセスもいいので、県内有名観光地のハブにするというのも一つの考え方だと思う

旅行会社は、観光ルートをつくって旅客を募る
大分市がそのルートに現状では乗っていない
ルートで観光の売り込みをしていく必要がある

2020年東京オリンピック・パラリンピックの取り組みが大分市は出遅れてる
すべてを東京でやる必要はない
例えば、車いすマラソンとか車いすバスケットボールとかは大分で国際大会や全国大会をやっていてノウハウがある。こうした競技は大分に誘致することはできないかと思っている

市長に就任したら、最初にやることは?

まずは適材適所の人事
自分も公務員をやってきたので、役所をかきまわそうとは思わない。政策も人事も漸進的にやっていく
市役所のパワーを最大限発揮できるようにしたい

木下市政以来のテーマが一段落した年
これから次に行く

外から駅ビルにブランドが出店する
もはや大分市ブランドは難しいのでは?
5年先のオリンピックが喫緊というのは、ずれてるのでは?
ニューヨークとかサンフランシスコとかの大都市の話では遠く感じる
国内で模範例は?

大分市と同規模の都市では思いつかないが、小規模都市なら
京都府の長浜市とか愛知県の豊川稲荷とかがある
コアがあってそれをいかしたまちづくりをしている

大分市にはコアがない
富山市のコンパクトシティーづくりは、ライトレールで有名

熊野古道のある地域では、スポーツのまちづくりをしている
ソフトボールの全国大会を必ずやる、とか
花いっぱいのオープンガーデン、とか

サンフランシスコは人口50万人なので、大分市と同規模だ

都市圏を形成しない、地方都市の利点をどう考えるか?

考えたことがない

経産省なので成長志向
発想の転換は必要か?と思う