打ち上げ花火を撮影しよう (1) 基本編 | 打ち上げ花火

打ち上げ花火

ド素人の花火写真・動画館。普段の身近な出来事も。
かつて筆者が運営していた「東京西北部の中小河川」
「東京西北部の送電鉄塔」の関連情報も掲載。





要約
下手くそな長文を読みたくない方へ

●カメラ以外に必要なもの 三脚、リモコン
●モードB(バルブ)、ISO100、F11
●マニュアルフォーカス無限遠 ホワイトバランス太陽光
●花火に合わせてシャッター開放、あとは経験重ねるのみ



当ブログをご覧いただきありがとうございます。
今年も花火シーズン。自分なりの花火撮影のノウハウについて書いてみる。タイトルに「ド素人の花火写真・動画館」とあるように、カメラマンでもハイアマチュアでもないド素人の筆者による自己流のやり方なので、余り参考にせず、あくまで「この人はこういう撮り方なんだな」という程度に留めていただければ幸いである。コロナ禍も開けて、各地で花火大会が本格的に再開しつつあるようなので、以前の記事を加筆修正。

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早いもので花火を撮影するようになって15年近く経った。始めるにあたっては「花火撮影テクニック」<http://www.japan-fireworks.com/technic/technic.html> などのサイトを参考にした程度で、何の知識もないまま「デジタル一眼を手に入れた、そうだ、花火でも撮ってみっか~」程度の軽い気持ちで、ぶっつけ本番で始めたに過ぎない。悪い言い方をすれば「適当」「いい加減」である。

カメラとレンズ
以前は一眼レフをお勧めする、と書いていたが、最近のミラーレス機の伸びが凄まじく、プロ用フルサイズのミラーレス機やレンズが増え、レフ機は一気に過去のものとなってしまった。今から買うならミラーレス一択であろう。しかし長らく光学ファインダーを覗いてきた筆者はなかなか液晶ファインダーに移行できない。最近のEVFは格段に進歩して光学ファインダーを上回るほどの性能と聞く。

メーカーはどこでも構わないが、一度決めたレンズマウントは一生物になるので慎重に。筆者は最初に買った一眼はキヤノンEOS 40Dだったので、今もキヤノンユーザーだ。その後7Dを経て現在はフルサイズの6Dを使用中。フル機が絶対に良いというネット上の情報に釣られて、大金をはたいて買ってしまったわけだが(廉価版のフル機とはいえレンズと合わせて25万円以上もした)、撮影を続けているうちにフル機もAPS-C機も筆者のような素人が画面で見る分にはほとんど変わらないことに気づいた。典型的な「情弱」ってやつだね(笑)。冒頭の写真もAPS-C機の40Dで撮影したものだ。従ってカメラマン気取りでカッコ付けて高価な機種を買ったりしないで比較的安価なAPS-C入門機で構わないと思う。

筆者は地上の風景も入れて撮りたいタイプなのでレンズは広角寄りのズームを使う。APS-C機時代はEF17-40mm F4L USM、現在はEF24-70mm F4L IS USM。これらは「L」の付く高級レンズシリーズだが、キット付属の安価なレンズでも十分だろう。

明るくシャープな写りの単焦点も魅力的ではあるのだが、何よりタイミングが命の花火撮影では開催中にレンズ交換どころじゃないだろうから、やはりズームレンズの方が便利だ 。筆者は単焦点は通称「撒き餌」ことEF50mm F1.8 IIしか持っておらず、いわゆる「レンズ沼」には嵌っていない。


筆者の機材。以前使っていたCanon EOS 7D + EF17-40mm F4L USM (左) と6D + EF24-70mm F4L IS USM

三脚、リモコン
花火撮影に絶対に必要なものは三脚とリモコン (レリーズ) だ。筆者の場合、自転車で移動する都合上、可搬性を重視して折り畳み時に短くなる4段式のものを使っている。以前はコンデジ/一眼入門機用向けの耐荷重2kgまでの軽いものを使用していたが、さすがに心許ないので買い替え。しかし大型三脚の持ち込みにくい会場では今でも出番はある。

リモコンも必須。三脚で固定したからといってカメラ側のシャッターボタンを押していたのではカメラが動いてしまい撮影どころではなくなってしまうからだ。余り多機能なものは必要なく、シャッターボタンだけ付いているもので十分。筆者はメーカー純正のRS-80N3を使用。


リモコン RS-80N3

最近はスマホからカメラをコントロールできるアプリがある。しかし操作性やタイムラグの面を考えるとどうかなという疑問が残る。やはり持ちやすくかつ押しやすい専用のリモコンを用意すべきではないだろうか。

コンデジの場合、バルブやリモコンは付かないものがほとんどなので、花火撮影には余り向かない。代わりにシーンモードに花火が用意されていたり場合が多いので、それを活用して撮影するしかない。筆者の場合、日常の風景等の撮影にはコンデジで十分間に合ってしまう。何より一眼はでかくて重くて持ち出すのが億劫になってしまい、今では花火撮影以外ではほとんど使わない。

各種設定
モードダイヤルは「B」(バルブ……シャッターボタンを押している間シャッターが開いたままになる) にセットする。一部の機種ではモードダイヤルにBがなく、シャッター速度30秒の次がバルブだったりするので要確認 (その場合モードダイヤルは「M」だ)。レンズのオートフォーカスはオフにして、焦点距離は無限遠にセットする。手振れ防止の付いたレンズならこれもオフにする。これらは花火撮影の基本中の基本ではある。


モードダイヤルは「B」


マニュアルフォーカス


焦点距離は無限遠

ズームレンズの場合、撮影中にズームさせようとして誤ってピント側を動かしてしまうことがあるので、ピントリングは無限遠にセットしたら養生テープなどで軽く止めておくとよい。


養生テープでピントを固定

カメラ側の設定は、ISOは最低の100にセットし、絞りはf8~11にする。測光モードは何でもよい。どうせフルマニュアルで撮影するわけだから。


各種設定

メディアは大容量のものを
メディアは交換の必要がないように、なるべく大容量を選ぶようにしたい。途中での交換は面倒だし、作業中にいい玉を逃してしまうかも知れない。それにSDカードは非常に小さい。人混みで真っ暗な中でポロっと落としてしまっら見失ってしまう可能性もある。とくに芝生などでは草むらの中に簡単に入り込んでしまうので注意が必要。
32GB程度のものを用意しておけば、JPEGで1枚10MBとしても3000枚以上撮影できることになり、大規模な花火大会でも容量的には十分だろう。動画も撮るのであれば128~256GBくらいは欲しい。

RAWかJPEGか
記録方式はJPEG、RAW、JPEG+RAWの3種類から選べるようになっているのが一般的。デジタル一眼を使い始めると、RAW現像という言葉に出くわす。RAWとはつまりセンサーが吐き出した生データのことで、後から加工する分には都合がいい。筆者も当初はRAW+JPEGで記録していたが、現在はJPEGでしか記録していない。RAWは容量が大きいし、何と言っても現像が面倒だからだ。

大体、カメラ内部ではRAW→JPEGの現像作業がハードウェアによって自動で行われているのだから、カメラを信じて任せておけばいい。それに素人が気取ってRAW現像したところで(圧縮率を極端に上げない限り)JPEGとの見分けなんてほとんど分からない。人間の目とは不思議なもので、細かなディテールの変化には余り気づかないものである(だからこそ不可逆圧縮のJPEGが存在するのだ)。

余談だが、筆者の本業はプロフィールにもあるようにDTPオペレータだ。Adobe Illustrator、InDesign、Photoshopといったソフトを使って印刷物の元となるデータを作成する仕事である。カラー写真の入る印刷物も多々扱っているが、先方から支給されるデータはほぼ例外なく撮って出しのJPEGだし、コンデジやスマホで撮影したものすら多い。Photoshopで明るさ等を多少手直しする程度で印刷へ回してしまう。プロの現場であってもRAWは余り使われていないということを付け加えておく。


画質の設定

ホワイトバランスは必ず太陽光にする。間違えてもオートにしてはいけない。オートだと花火の色によって色温度が変わるため、夜空が青く見えたり茶色く見えたりと色合いが合わなくなってしまう。


ホワイトバランスは太陽光

ピクチャースタイルは、RAWで撮っているなら後でカメラ付属ソフトやAdobe Lightroom等を使って変えられるので何を選んでもよいが、JPEGのみの場合は「スタンダード」か「ニュートラル」にセットする。派手な発色が好みなら「風景」でもいいかも知れない。筆者も以前は「風景」で撮っていたが、JPEGのみで撮影するようになってからは「スタンダード」だ。


ピクチャースタイル スタンダード

6Dの場合、もう1つやっておきたいことがある。それはGPSとWi-Fiを無効にすることだ。これらは電池を馬鹿食いするだけで花火撮影では全く役に立たないので、必ずオフにしておく。


GPS 使わない


Wi-Fi 使わない

ここまで設定したら、この状態をカメラに登録してしまおう。メニューからカスタム撮影モードを選び、C1に登録する。今後はモードダイヤルを「C1」にするだけで上記の設定が自動的にセットされる。


C1にカスタム登録


C1にセットするだけで準備完了

センサーはきれいに
デジカメは長く使ってるとセンサーが汚れてくる。白い紙などを超ピンボケで撮影した写真(絞り最大、ピント無限遠、長時間露出)を見るとセンサー上のゴミがはっきりと分かる。レンズの外せないコンデジは修理に出すしかないが、一眼やミラーレスなら自己責任ながら自分で掃除も可能だ。無水アルコールを浸み込ませた不織布でセンサーを拭くやり方が有名だが、これはネット上の情報を見ると失敗が多く難易度が高いので勧められない。
筆者が使っているのは「PENTAX イメージセンサークリーニングキット O-ICK1」で、通称「ぺったん棒」とか「ペンタ棒」などと呼ばれているものだ。有名なキットなので使い方は省くが(PENTAX O-ICK1 使い方[検索])、早い話が粘度のある消しゴムのようなものが付いた棒を使って鳥もちの要領で汚れをペッタンと張り付けて取り去ろうというものだ。もちろんペンタックス以外のカメラでも使える。


PENTAX イメージセンサークリーニングキット O-ICK1

レンズを外してメニューから手作業でクリーニングを選ぶとミラーが上がる。ぺったん棒をそっとセンサーのゴミのある辺りに押し付ける。実際の位置とセンサー上の位置は左右反転しているので注意したい。カメラの心臓部であり最も高価な部品のセンサーに直接触れるのは最初は躊躇うかも知れないが、慣れてしまえば大丈夫、効果は抜群だ。掃除が終わったら再び白い紙を撮影して確認する。汚れが落ちてないなら繰り返しだ。

なお、花火写真は黒主体の背景なので、多少のセンサーの汚れはほとんど分からない。自信がないなら無視してしまってもいいかも知れない。筆者も自分で掃除するようになったのは近年だ。

撮影場所の選定
花火撮影で最も大切なのは場所の選定ではないだろうか。風下へは行かないことは絶対だが、会場によっては客席は常に風下になってしまうというところもあるだろう。打ち上げ会場から余り近くてもいい絵が撮れない。筆者の場合、周囲の風景も入れて撮影したいタイプなので、規模にもよるが会場から500m~1km程度離れた場所で撮影していることが多い。初めての会場の場合、あらかじめ下見をしておくといい。

よい場所を取るのは難しい。地元の人が早くから場所取りしているからだ。筆者のように遠方から自転車で訪れる人にそんな席を確保するのは無理。多くの大会には有料席が設けられているが、有料だからといって必ずしも撮影に向いているとは限らないので注意されたい。S席みたいな特等席は打ち上げ現場から近すぎて画角に入りきらないので撮影には全く向かない。有料撮影席が用意されている大会も見掛けるが、都内周辺ではその数は少ないように思う。結局、開始間際に現地に付いて適当に空いている場所に陣取るしかない。その場合三脚を立てた際に先客の邪魔にならないように十分に注意する必要がある。

会場でプログラムを入手しておくと、次にどんな玉が上がるか分かるので便利。今時の花火大会はネット上でプログラムが公開されてるので、それをプリントして持って行ってもいいだろう。確認用に小型の懐中電灯もあるといいと思うが、明る過ぎるものは回りに迷惑を掛けてしまうので勧められない。都会の夜は明るいので、懐中電灯がなくてもプログラムが読めないことはない。スマホでプログラムを参照できるようになっている大会も多いが、余りお勧めできない。やはり紙にプリントされ全体をぱっと見回せるプログラムの方が格段に使い勝手がよいのだ。

花火が始まったら
さぁ本番。序盤は余りいい玉は上がらないだろうから、まず上がる位置をしっかりと確認する。そしてフレーミングが決まったら後はカメラは動かさず、花火に合わせてひたすらリモコンのボタンを押しては離してを繰り返して撮影する。シャッターを開ける、閉じるタイミングはそれこそ経験次第。数多く撮って身体で覚えるしかないと思う。撮影者誰もが超真剣な顔つき。花火撮影に嵌ると残念ながら「楽しむ」花火ではなくなってしまう。筆者流のシャッター開閉のおおよそのタイミングを動画にしたので参考にされたい。


(西武園ゆうえんち花火大会 15.8.2より)

上記動画には花火に合わせて「たまや~」と声が入っているが、このような周囲の歓声に気を反らされないように注意も必要。

大きな玉など、そのままではフレームから飛び出てしまいそうな玉は、打ち上がったら軌跡を良く確かめて、玉の開きそうな場所を予想してカメラを向けて素早く固定しシャッターを開く。このブログの最初の記事にある「2尺玉 千輪」はそのようにして撮影している。これも撮影を繰り返して慣れるしかないだろう。

なおスターマイン (連発) の場合は、上記のようなタイミングの決まりみたいなものはない。筆者はほとんど適当にシャッターを開けている。まぐれ当たり狙いだ(笑)。だいたい3~5秒くらいに留めておく方がいい絵が撮れる (冒頭の写真はISO100、F11、3秒)。

フレーミングはなるべく余裕を持って構えるべきだ。中央に小さくしか写ってなくてもトリミングすれば何とかなる。しかしフレームから飛び出てしまったらどうしようもないからだ。


冒頭の写真もノートリミングだと実はこんなに酷いフレーミング。それに傾いている。しかしこれは手を加えれば何とかなる。


だがこのように一部がフレームから飛び出てしまったらどうしようもない。

以前、フィルターを使うと強い閃光が乱反射して写り込んでしまうので必ず外すこと、と書いたが、明るい花火を長時間シャッター開放するときには感度や絞りだけでは調整しきれない場合が多い。特にフィナーレの特大スターマインはいい玉が次々と上がるため、ついついシャッターを開けたままにしてしまい、明るい部分が真っ白になった失敗作になってしまう。そんな場合はやはりNDフィルターを使う必要があるだろう。


フィルターを付けたまま撮影した失敗例(動画)。強い光が写り込んでいる (赤丸)


しかしNDフィルターがないと明るい部分が真っ白になってしまう

また、上級者はシャッターを開けたままレンズを黒い紙で覆い、1枚の画像にいくつもの花火が写ったものを撮ったりするが、多重露出で合成された実際にはありえない絵になってしまうので、筆者はそういう撮り方はしない。

天候が急変したら
近年の花火大会で最も気を使うのが天候について。何しろ最近の夏は雨の日が増えたし、突然ゲリラ豪雨がやってくることもある。特にここ数年、8月の関東の土日は雨の日が多い。
幸い、ネットが普及した現代ではスマホで雨雲の様子を見ることができる。東京アメッシュ®や東電の雨量・雷観測情報には何度も助けられた。しかしそれ以前は全く勘に頼り切りだった。出発前に177で天気予報を聞き、最新の天気図を見て、これなら大丈夫と判断したら出発する。そして見事に降られたりしたものだ (笑)。

ポツポツ来たら、何より真っ先にカメラを守る必要がある。高価なプロ用カメラには防塵防滴機能が備わっているが、民生品にそんな強度はないからだ。防水バッグを被せる。なければレジ袋でもその場凌ぎとして十分に役に立つ。

咄嗟の場合、雨合羽の他に折り畳みの傘を持っているとカメラを防水バッグに入れるまでの間の繋ぎになる。もちろん守るのは自分ではなくカメラである。雨合羽を着るのはカメラの保護が完了してからだ。

筆者は最近、ベルボン社のアンブレラクランプUC-6という三脚用の傘を持ち歩くようになった。洗濯バサミ状の本体と専用の傘のセットで、三脚に挟むだけでセット完了。これは価値ある買い物だった。雨の中での花火撮影で大活躍してくれている。


アンブレラクランプUC-6


三脚に挟む


傘を取り付ければ突然の雨も安心


アクセサリシューも付いているので、マイクなどを取り付けることもできる

なお、突然の雷雨を食らったときの記事が第55回立川まつり国営昭和記念公園花火大会にあるので参考にされたい。

撮影が終わって
さて自宅へ戻り写真の確認。終わってからの楽しみなひとときだ。
PCへの吸い上げは、USBケーブルによる接続がよい。メディアをカメラから外してPC側のカードリーダーで直接読んでもよいが、筆者は推奨しない。メディアをリーダーに挿したまま忘れることがよくあるからだ。次の大会で「あっ、メモリカードが入ってない――!」と慌ててからでは遅いのだ。幸いSDカードならコンビニでも手に入るが、中級以上のデジタル一眼で使われているCFカードは専門店じゃないとまず売ってない(最近はハイエンド機でもSDカードのものが増えてきたが)。

1度の大会で撮影する写真は筆者の場合400~500枚くらい。余り深く考えずに適当に撮影するド素人なので、それはそれは酷い写真が多い。「当たり」といえる写真は恐らく100枚に1枚くらいしかない。つまり「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」というやり方だ。プロカメラマンから見たらあり得ない撮影方法だろう。フィルム時代には考えられないね。しかも動画も撮るので、そのままではHDDがいくらあってもすぐにパンクする。ハズレの画像や動画はすぐ消してしまう。

機材の持ち運びが嵩張るが、花火撮影は決して難しいものではないし、我々は失敗が許されないプロカメラマンでもない。諸氏も気軽に挑戦されてみてはいかがだろうか。

次回は動画について。