(62)言いました
クリパの終わりには相葉さんはちゃんと迎えに来てくれた。
潤くんは会が終わる前に帰っていった。
女の子がたくさん集まってくるから二次会に無理やり連れて行かれるの避けたいんだよね、と言って。
『おかえり波奈ちゃん。楽しかった?』
レストランを出たところに来てくれていた。
寒い中、会社から近いからって歩いてきてくれてた。
仕事中なのに。
「はい。すみません。仕事中なのに迎えになんて来てもらって」
『いいの。来たかったの。…松本は?』
「帰りました。二次会に連れてかれるのが嫌だって言って」
『そう』
それが本当の理由じゃないことは分かったみたいで、相葉さんはほっとしたみたいに笑って、それから少し心配そうな顔になって言った。
『なにか言われた?』
「こないだは大人げなくてごめんって謝ってくれました」
『そっか。やっぱいいやつだな』
「はい」
ちら、と私を見て、ふっと笑った。
『惚れた?』
「違います。私、言いました」
ん? と言って私を見た。
「今相葉さんが私を好きって言ってくれることを信じるって」
じっと私の顔を見てる。
ちゃんと言ったよ。
「わかった、って、言ってくれました」
『波奈ちゃん』
夜の暗がりの中で街灯の光を受けて、相葉さんの目が少し潤んで光っているのが見えた。
二次会に行く子たちはみんなもう駅の方に行ってしまっていて、残っているのは一次会で帰る子たちがぱらぱらいる程度。
相葉さんはぎゅっと私の腕を掴んで引き寄せた。
ちょ、他の子、みてる。
『良かった』
耳元に相葉さんの声を感じながら、かすかに残る迷いは気になった。
潤くんには信じると言いきったのに、どこかにためらいは残る。
自分に自信がないから。
でも安心して欲しくて、「はい」と答えた。
そんな自分が後ろめたくもあったけど、先に進みたい気持ちが大きく膨らんできた今、もう後戻りしないようにしよう、と思った。
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