風花 58 水族館 | 緑の木陰で妄想日和

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相葉さんのお名前をお借りして
女の子といろいろ絡むお話。
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お話部分のみ、お引越し♪
この分野にご理解のない方はお控えください。

(58)水族館

次の日も家まで迎えに来てくれた。
LINEで、`着いたよ' と出たのを見ると、やっぱり嬉しくて顔がほころぶ。
`今出ます'と返事を入れて、すぐに降りて行くと、相葉さん車の横に出て待っていてくれた。

『どこ行きたいか考えてくれた?』
助手席に座った私に、わくわくした顔で聞く相葉さん。可愛い。
「べたですけど、水族館でもいいですか?」
『いいね。行こ!』

相葉さんはナビを操作するとハンドルを握った。
『じゃ、出発!』
にこっと笑って、わたしの大好きなおひさまみたいな笑顔で笑ってくれた。
嬉しくて泣きそうになった。


水族館は混んでいた。
休日だから当たり前だ。
親子連れやカップルでいっぱいで、人の頭ごしにガラスを見るばかりで魚がいるのかカニがいるのかもよくわからない。

『肩車してあげるわけにもいかないしなあ』
あながち冗談じゃなく聞こえる相葉さんのつぶやきに、本気かな? とつい顔を見てしまった。
肩車って。
目が合って、くふっと笑って、『して欲しい?』と聞くから、「遠慮しときます」と言った。
『じゃ、こっちね』
相葉さんが大きな手をパーにして差し出してくれて、手を繋いだ。
デートみたい。ってそうだけど。

いつも会社から一緒に帰るだけだったから、こんな風に手を繋いでくれたり肩を抱いてくれたりとか、電車では無理だからもう、恥ずかしくて嬉しくてどきどきする。

人でごった返す狭い通路では、相葉さんはその長い腕と身体で囲うように壁になってくれて私を人混みから守ってくれた。
図書館から帰るとき、帰りの電車の中で肩をぎゅっと抱きしめて守られたことを思い出した。
あの時から、相葉さんは私を守ってくれていた。

…あの頃、相葉さんは何を思っていたんだろう。
私はあの頃にはもう相葉さんのことを好きで好きで仕方なかったけど、相葉さんはどう思ってたんだろうか、私のことを。

元カノのあの人と重ね合わせて見ていて優しかったんだろうか。
それとも私を見て、優しくしてくれていたんだろうか。

今は?
あの写真の人だけを大切にしていた頃、相葉さんはきっと同じようにしてあの人を護っていたのに違いない。

相葉さんの腕のなかで護られていたあの人は…。

思考が危険水域に達しそうになったのに気づいて慌てて頭を振った。
いけない。
考えちゃいけない。
いやな動悸がし始めたのを自覚して、少し深呼吸した。
いけない。


人混みから外れて、少しゆったり歩ける辺りまで来た時、相葉さんの携帯電話が鳴った。
相葉さんは画面をみて、『にのだ』と言うと、私を見て、『ごめんね』と言うと画面をタップして耳に当てた。
『もしもしなに?』

電話に出た相葉さんは、急に男の子モードになった。
相葉さんは二宮さんといる時、すごくリラックスしてるというかくだけてて、いつもの優しいばかりの相葉さんじゃなくて、やんちゃな男の子みたいになる。
寛いでるっていうか素が出てる。
大野さんのお店で見せる顔ともまた違った顔。

『どしたの?』
今ちょっと手が離せないんだけど、というみたいな少しぞんざいにすら聞こえる言い方が男の子。
少し黙ったまま携帯に耳をあてて。
『…どうって』
そんなこと言われても、とでも言いたげに相葉さんが答えてる。
私、電話このまま聞いてていいのかな。
『そうだけど…なんで?』
少しだけ声のトーンが落ちたあと、沈黙している。
『なんで?』
さっきより更に低くて硬い、警戒してるみたいな声。
『ああ…。あのさ、今一緒にいるから、あんま』
ちら、と私を見て言った。
なんの話だろ。
あんまり聞いてちゃいけないのかもしれない。
でも相葉さんの視線からして私のことを話してるみたいだから、すごく、すごく気になるけど。
私ここでこのまま聞いてたらいけない気がする。
でも席を外すと言っても、こんな人混みで予告なく離れたりしたら迷子になるし。
仕方ないから隣にいて聞くともなく聞いている。
『うん、そうだよ?』
少しいらついたみたいで、もう切りたそう。
『そうだよ』
それがなにとでもいいたげな相葉さんの声。
なんだろう。
聞いてて申し訳なくなってきた。
目で合図して離れてようかな。
『なんだよもう』
少しじれったそうな不機嫌な声。
『もういいでしょ。切るよ』
相葉さんは急に会話を切り上げるように少し大きめの声を出した。
『じゃあね』

唇をきゅ、と閉めて、相葉さんはなんとも言えない顔をしてスマホをタップした。

『ごめんね波奈ちゃん。にのだった』
相葉さんはいつものように、にこっと笑った。
それはいつもの、私の大好きな陽射しみたいな笑顔だ。
でもそれは、二宮さんと話している時にしていた顔とは違う。
この人はいくつ違う顔を持っているんだろうと思った。
私は相葉さんの顔を少ししか知らない。

「二宮さん、なんて?」
聞いていいかどうかもわからないけど。
『うん、今日遊べるかって。でも波奈ちゃんといるからって断った』
違うと思う。
相葉さんはウソをついてる、と思った。



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