(42)TUKAYA
「久しぶり。元気だったか?」
「うん。潤くんも。元気だった?」
カラオケ以来、ずっと会ってなかったから本当に久しぶりだった。同期の飲み会にもなんとなく行きづらくて行ってなかったから。
顔を見てもなにを言えばいいかわからず、「本屋に来たの?」と見たらわかることを言う私に、潤くんは屈託ない笑い声をあげて、「そう」と言った。みんなが天使っていう、幼くさえ見える笑顔。
潤くん、大人だな。
先手をうって普通に対応してくれたから、ホッとした。
とにかく平静にしなきゃ。
とは言え、ぎこちなくなるのは仕方ない。
他に同期の子とかが一緒じゃなくて良かった、と思った。
「波奈。ちょっといい?」
私の返事を待たず、向かいの椅子に座った。
スタバの椅子は固く、駅前の簡易ショップは手狭で椅子の間隔が狭くて、だから距離感が近い。
周りの女性たちがちらちら潤くんを見てる。
「波奈。んな困った顔すんなよ」
ごめん。顔に出過ぎた。
「波奈を困らせたくて言ったんじゃないから」
「…」
「花火、相葉さんと行ったんだって? 楽しかった?」
「知ってるの?」
「望から聞いた」
「あ…」
「良かったな」
良かった?
あんな悲しかったのに、なんで? と思ってすぐ気づいた。
望くんが知ってる範囲でのことを聞いただけなら、その通りだ。
だけどそんなふうに言ってくれるなんて、なんて言ったらいいんだろう。
「悪りぃ。ヘンなこと言ったな」
黙っている私に、潤くんは笑った。
「ううん…」
悪いのは、はっきり断らない態度の私。
相葉さんを諦められないくせに、髪の毛一本触られたくらいであんな大泣きして。
今は友達でいいからと押しきられたのを言い訳に潤くんを宙ぶらりんなまま放っておいている、私がいけない。
「波奈、さ」
「な…に?」
「聞いていい?」
想いのこもった、静かな声が言った。
本屋のざわめきが遠くに聞こえた。
「今でも、変わんない?」
低い声で、周りに聞こえないように、私だけに届く声。
言葉に出来ず、首だけ縦に動かした。
ごめん。
「俺さ、諦めようかと思ったんだけどさ」
「…」
「のぞがさ」
「え?」
「望」
「ああ、うん」
「あいつがこないだ花火に四人で見に行ったときのこと教えてくれてさ、なんか、いい雰囲気なんだけど相葉さんが遠慮してるって言っててさ」
「え? 誰が?」
「相葉さん。波奈に遠慮してるみたいだって」
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