風花 39 笑いながら、思う | 緑の木陰で妄想日和

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相葉さんのお名前をお借りして
女の子といろいろ絡むお話。
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お話部分のみ、お引越し♪
この分野にご理解のない方はお控えください。

(39)笑いながら、思う

ビルの狭いすき間にいい大人たちがごそごそと入り込む。
これって不法侵入じゃね? とか、建物の中じゃないからいいでしょ、とか言いながらも目的の場所に入り込んだ。
夜になっても気温は少し下がったくらいで蒸し暑かったけれど、夜風は気持ち良かった。
薄着でいてさえ汗ばむ身体から、ビル風が熱を奪っていく。
涼しい。
花火が丸い形にちゃんと見える立ち位置は1人か2人分しかスペースがなくて、そこに立つのは代わりばんこになった。

「ああ! 小瀧、おま、先輩より先にいいポジション取るとかありえねーだろお前、ちゃんと譲れよ!」
「すんません。どこが良お見えるんか確認しておきました。ここ、ベストポジションっす!」
「さんきゅ。てか、おま、自分が先に見るつもりだったろ」
「ちがいますよ。先輩のお役に立とぅ思たんです」
「んじゃそこに座れよ。俺が肩の上に乗るから」
「えー? 俺、協力はしますけど踏み台はいやです。俺の人生ふみつけにされたら先輩、恨んで枕元に出ますからね、うらめしやぁいうて」
「はあ? なんの話してんだ花火だろ、誰が出世の話してんだよ」
「まあまあ先輩。人生、花火みたいなもんやないですか。先輩かてこないだ、オレはひと花咲かせる言うてはったやないですか」
「そりゃ意味がちげーだろ。てかおま、俺の人生が花火だったらお前、ひと花咲かせた後はあっさり消えるだけじゃねーか。勝手に消すな」
「おかしっすねえ。先輩はそうゆう人生を歩みたいんやと思うてました」
「お前だってそんとき、オレもそうゆう人生を歩みたいっす、つってたじゃねえか。あれはなにか? お前の人生は花火みたいに咲いて散ってそれで終わり、みたいに一瞬で燃え尽きてもかまわねってことか?」
「咲いて散っても、また何発も上がったらええんと違いますか?」
「俺は散りたくねえ!」

すでに始まっていた花火は、相葉さんの言ったとおり、ビルのわずかなすき間から、まるで色とりどりの飴玉のような小さな丸が暗い夜空に唐突に現れては消え、それからかなり遅れてかすかな爆音が届いた。
連続で上がるわけじゃないから、しばらく見ていて少し疲れてきたころに丸い飴玉が暗い空に上がり、それに続くかすかな裂音を合図に、次の人に場所を交代する。
その間も、櫻井さんと望くんのやり取りは続いていて、まるで漫才を見ているようで、相葉さんと二人でずっと笑いっぱなしだった。

笑いながら、思った。

千秋先輩に言われて少しのあいだ付き合ってたのが本当なら、他にもそんな人がいたかも知れない。
今でも忘れられないらしい元カノさんを忘れようとして、いろんな人と告白されるがままに付き合って。
でも結局誰ともきちんとお付き合いするまでには至らなくて、現在までひとりだったのかも知れない。
そう考えればあれだけモテる人が今もひとりなのは合点がいく。
全部私の勝手な想像だけど。
この勝手な想像がもし当たってるなら、いま一番近くにいるであろう私は、その候補のひとりかも知れない。
似てるらしいし、多分私の好意は気づかれてる…、たぶん。
元カノさんを忘れるために、試しに付き合ってみる候補のひとりとして優しくされて。
だからこんなふうに誘ってくれたり。

…考えないでおこう。
どうせ考えたって、本当のところは相葉さんでなければ絶対にわからないことを、こんなひとりでぐじぐじ考えてたって正解に辿り着けるわけがない。


花火はそこそこの時間に終了した。
楽しかった。
来て良かった。
誘ってもらえて良かった…真意はどうあれ。
またこれからもこういう時間が過ごせるなら、たとえ相葉さんが私を身代わりにしてたとしても、このまま楽しく過ごせるなら、それでいいのかも知れない。
櫻井さんと望くんはこの後、二人で飲みに行くと言って繫華街に消えていった。

行っちゃった。

さくこたコンビを見送ると、久しぶりに相葉さんと二人きりになった。
少し緊張するけど、さっきの漫才コンビに笑ってたから気分はリラックスしてる。
大丈夫。
普通に振る舞える。

『遅くなるといけないから駅まで送るよ』
「ありがとうございます」

この流れなら不自然じゃない。
相葉さんは優しいから、このくらい普通の後輩でもしてくれること。

前の感じに戻れた気がして嬉しくて、帰り道はたくさん笑った。
こうしてこれからも時々楽しい時間が過ごせたら、ちゃんと仕事頑張れそうだし自分の気持ちも抑えやすいし、ずっとこのままなら大丈夫かも、なんて安心して歩いていたとき。

す、と相葉さんの指が私の首に触れた。



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