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休憩時間になって、相葉さんから預かった皆さんへのお土産のお菓子を配った後、引き出しから私だけに買ってきてくれたというお土産の小袋を出してロッカールームに向かった。
あんまり外で開けられないし。
ロッカールームには誰もいなかった。
自分のロッカーの前に立ち、どきどきして袋を開けた。
`そのお土産は波奈ちゃんにだけだから'
相葉さんのさっきの声が耳の中によみがえった。
後輩に優しくし過ぎる相葉さん。
諦めるつもりでも、やっぱりこういうことをされれば嬉しい。
嬉しい癖に、「はあもう。困るんだけどな」とわざと声に出して呟いてみた。
我ながら嘘っぽい。
袋から出てきたのは、メタリックのボディに不釣り合いなほどかわいい、緑のハートが4つ合わさったロゴに、ハートの1つに赤い丸い点が一つついている、ボールペンだった。
下手をすると子供が使うみたいなロゴなのに、スリムなメタリックボディのおかげでスタイリッシュで、仕事でも十分使えそうなデザインだ。
「ふふっ。かわいい」
自然に笑みがこぼれて、声に出して笑ってしまった。
これなら普段から使えるし、後輩を気遣ってくれる相葉さんをいつも感じれる。
私だけにお土産。
「あらそれ。誰にもらったの?」
急に声をかけられて、びくっとして振り向いた。
いつのまに入ってきたのか鋭い目の千秋先輩が、薄暗いロッカールームでも際立つほど紅い唇を笑った形につり上げてこちらを見ていた。
有無を言わさない威圧感で見つめてくる。
「あ…あの、…相葉さん、です」
「ふうん。やっぱりね」
やっぱり?
「こないだ帰りに買い物してたから、そうじゃないかと思ったわ。ほんとマメよねえ、ただの仕事仲間なのにこんなのわざわざ買ってきて、カン違いさせちゃうの、わかってないのよね。優し過ぎるから。罪よねえ。そう思わない?」
「あ…」
その言い方。
まるで…。
「セミナーね、私も相葉くんと一緒に行ってきたの、上級コース。もう暑くて暑くて、ばてちゃうかと思ったわ」
相葉さんが入門コースに誘ってくれなかったことを、つい寂しく思ってしまう気持ちを必死で圧し殺そうとしていたのに、そのセミナーに二人で行ってきた、ってこと…?
何も言えなくなっている私に、千秋先輩は薄く笑って、気の毒そうな表情を浮べて言った。
勝ち誇ってるように見えてしまうのは、私の心が嫉妬で歪んでるからだ、きっと。
「朝早かったんだけど、迎えに来てくれて…いいって言ったんだけど、その方が効率がいいからって。ほんと誰にでも優しいの」
最後の言葉は私の顔をじっと見て言った。
「ねえ、知ってる? 水野さんてね、相葉くんが前にお付き合いしてた方と、とてもよく似てるのよねえ」
もはや千秋先輩はきさくな先輩を装う気すらないようで、困ったわねえ、とでもいうようにねちっこい言い方で私に距離を詰めてきた。
聞きたくないのに。
聞きたくないです。失礼します。
そう言いたいのに喉が動かない。
相葉くんとその彼女さんとは、大学時代からのお付き合いだったそうよ。
就職してからも付き合ってたらしくて、あのころ、新入社員どうしの有志花見大会には、家族も連れてきて良かったから一緒に来ていたの。
私はその時、その彼女さんと会ってるし、相葉くんからも直接、その子が大学時代からの彼女だって聞いたの。
可愛くて、髪は…そう、こないだまでのあなたみたいに黒くてストレートでさらさらの、笑顔が可愛い子。
仲良かったわよ。
他にもね、同期で飲み会があったりした時には帰りに彼女さんが迎えにきたりね。
「そうだ。写真あるのよ、その花見の時の写真。これよ」
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