風花 20 視線 | 緑の木陰で妄想日和

緑の木陰で妄想日和

相葉さんのお名前をお借りして
女の子といろいろ絡むお話。
初めての方は必ず、
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本家FC2ブログ「心にいつも相葉雅紀」から
お話部分のみ、お引越し♪
この分野にご理解のない方はお控えください。

(20)視線

本気? それとも社交辞令?


こんな風に誘ってくれるのは…どうして?
きっとこれは社交辞令。
この間の轍は踏まないように冷静になれ私。
リップサービスだよね?
でも目を見ながらにこにこ言ってくれてる相葉さんの表情にはこのあいだみたいな戸惑いや困惑は感じられない。


社交辞令じゃなくてほんとに誘ってくれてるみたい。
でもそれは後輩だからだよね?
それ以上の意味は思いつかない。正解じゃなくて都合いい答えならすぐに見つかるけどそんなはずはない。

「はい、私で良かったら」
とにかくなにか返事しなくちゃと思って、どきどきしながら言った。

目尻に優しい皺を寄せて私を見つめている相葉さんが近くて、…好きで。
まともに見ていられなくて目を逸らした。

目の前の相葉さんはとても楽しそうに笑っていて、その笑顔はそれを見るだけでひとを幸せにする。
そんな太陽みたいなあったかい笑顔を独り占めするなんて、贅沢だ。

お酒はそれほど弱い方じゃないと思ってるけど、特別強いわけでもないし、なにより相葉さんと二人っきりで差し向かいで飲んでいる状況そのものに酔ってしまったみたい。
だんだんふわふわしてきて、頭の中は冴えているのに身体は少しゆらつく。

間がもたなくて空いてるお皿を下げようと手を伸ばしたとき、同時に伸びてきた相葉さんの手をぶつかった。
あ、触っちゃった。
顔が熱いのは、酔ってるからだ。そのはずだ。
動けなくなって、手がテーブルのうえで止まってしまった。

相葉さんの長い指が、す、と伸びてきた。
テーブルのうえの私のマニキュアした爪に、その長い指先がトンと触れた。
『きれいだね』
と掠れた声が聞こえた。

きゅうっと心臓が痛くなった。
顔が熱い。
トンと触れた相葉さんの指先の感触がまだ残る爪先。
自分の爪を見たまま、恥ずかしくて顔が上げられない。

どうしよう。そんなの言われたら…。
見上げると、少し潤んだような目で私を見ている相葉さんと目が合った。
好き。
相葉さんが好き。
目が合っても、相葉さんはなにも言わなかった。
ただ、じっと私を見てくる。

あわてて目を逸らして、でもどこを見たらいいかわからなくて、あちこち見るけど、ずっと見られているから身の置き所がなくて動けなくて、ほんとにどうしたらいいかわからない。

そんなに見られたら、私、期待してしまう。
相葉さんは優しいから、誰にでもそうしてるんだよね。
きっとモテるから女性にも慣れててこんなの、相葉さんにとっては普通のことなんだよね。
自分にそう言い聞かせてきたけど、今日は、なんだかいつもと違う。

どうしてそんなに私を見るの?
相葉さんのほうを見ることができなくて、下を向くか壁を見るかテーブルの空いたお皿を見るか。
どうしたらいいの。

どのくらいそうしていただろう。

『…明日にひびくといけないから、そろそろ帰ろうか』
相葉さんの、思っていたよりずっとあっさりした落ち着いた声が聞こえた。
「はい」

ほっとして返事をした。
すごく残念で、さっきの視線の意味を聞いてみたくて…聞けるわけはなかった。

伝票を手に立ち上がった相葉さんを追って、帰り支度をしながら、少し払います、いいよ僕が誘ったんだからなどと会話をしながら、今はもう視線が外れてしまったことにほっとして、でもひどく残念で、さっきの視線の意味を相葉さんに尋ねてみたかったけれど、そしてこのまま帰ったら二度とそれはできなくなることもわかってはいたけれど…どうしようもなかった。

『大野さん、ごちそうさま』
相葉さんはカウンターから出てきてお会計をしてくれた大野さんに、いつもと変わりない笑顔で声をかけた。

「ありがとね相葉ちゃん。波奈ちゃん、また来てね」
帰る時、大野さんが白い犬歯を見せてにこっと笑ってくれた。

はい、と返事しながら、さっきの場面を大野さんは見ていたかも知れないのに全然知らない感じで笑ってくれるのははありがたい、と思った。おとうさんみたい。
またお昼に来たい、と思った。
大野さんの顔を見てコーヒーを飲んだら、きっととてもいい息抜きになるに違いない。

駅の下にある店だったからすぐに駅に着いた。
相葉さんとは使う路線は同じだったけど、方向が逆だから改札前でさよならした。

『気をつけて帰ってね。今日はほんとにありがと』
「はい…あ、いえ、こちらこそ、ごちそうさまでした。ありがとうございました。おやすみなさい」

頭を下げたけど、相葉さんは動かないで優しく笑って、私が歩き出すのを待ってくれている。
このまま帰りたくないような、走ってこの場から逃げ出したいような、よくわからない気持ちのまま、もう一度、「おやすみなさい」と言ってホームに向かって歩き出した。

『また明日ね、波奈ちゃん。おやすみ』
手を振る相葉さんに見送られて、ホームへの角を曲ると、背中に感じていた相葉さんの視線は消えた。

なんだかわからないけど、駅だけど、泣きそうになった。



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