セラピストのためのからだ講座(第2回) (2010.4.7掲載)
脚のシビレはヘルニア?(神経系)
【事例】
・Aさん22歳(女性)国家試験に向けて毎晩勉強に励む女子大生
「とにかく机の前に座りっぱなしだったからでしょうか。健康で、とくに異常はないと思うのですが、最近、右太ももの後ろやふくらはぎにシビレやつっぱりのような痛みが急に起こることがあって。1時間ずっと座っているのがつらいです」
・Bさん31歳(女性)PC作業が仕事のメイン、もっぱらオフィスワークの女性社員
「以前から長時間座ると足を組む癖があり、しかも組む足も右側と決まっています。座って仕事していると、発作的に、右足の太もも裏の付け根から膝にかけて鈍痛が走ります。この重だるい感じは、いつもではなく時々ですが、繰り返し起こります。ほかに原因は思い当たらないのですが、どうしたらよいでしょう?」
・Cさん36歳(男性)長時間の車移動が多い営業マン
「車を運転していると右足後ろ側、太ももからふくらはぎにかけてシビレを感じます。高校~大学の頃に椎間板ヘルニアにかかったことがあり、その時と似たような症状だったので整形外科を受診しました。でも、レントゲン上では異常なし。痛み止めと湿布薬を処方されたが、いっこうに良くならない。もしかして、ヘルニアより恐ろしい病気になったのでは?と不安もあります」
●共通の症状:
長時間座りっぱなしの状態が続くと症状がひどくなる。太ももから下肢にかけてのシビレ、重だるい鈍痛、突っ張り感(片側の足のみ)
【アプローチ方法&原因分析】
「シビレ」を訴えるお客様もいらっしゃいますよね。シビレは神経特有の症状です。シビレがひどくなったり、慢性化したものがいわゆる「神経痛」となるのですが、上記3例もお尻~足にかけてのシビレであることから、おそらく「坐骨神経痛」と思われます。
問題は、神経痛=椎間板ヘルニアと勝手に思い込んでしまい、シビレがある時点で戸惑ったり、施術を拒否したりするセラピストが多いこと(多くのサロンではヘルニアは禁忌ですから、尚更です)。
しかし、シビレはヘルニア以外にも筋肉の凝りで起こる可能性も十分にあることをぜひ知っておいて欲しいのです。では、症例の3人はどうでしょうか。ともに「座っている」と症状が出てくるようですが、もし椎間板ヘルニアであれば、立ったり歩いたりする時にも症状が出るはずです。このことから、「椎間板ヘルニアじゃないかもしれない」と疑いを持たなければなりません。そして他に考えられる原因は、長時間座っていることでお尻にある梨状筋という筋肉の硬結です。
【梨状筋の下に坐骨神経が走っている。(画像:IPA「教育用画像素材集サイト」より)】
実際、3名とも片側のお尻が異常に凝っており、その部分を強く押すとシビレがひどくなる現象が起きました。
足の先まで走っている坐骨神経は、ちょうど梨状筋の下を通っているため、ここで神経が圧迫されてシビレが起こったと考えられます。したがって、3名ともに椎間板ヘルニアではなく、「梨状筋の凝り」から坐骨神経痛が起こっていることが予測されます。筋肉が原因ですから、Cさんのレントゲン検査で異常がないのは当然で、彼が心配するような過去のヘルニアとの関係もないこと(※)になります。
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今回の発症要因としては、長時間同じ姿勢で座りつづけたことによる筋肉の凝りに問題があることが考えられ、この場合は禁忌ではなく、我々セラピストが十分に手技で対応できる範囲である
※椎間板ヘルニアではないという正確な判断は医師の診断が必要です。
【セラピストの対応】
まずはヘルニアではと不安に思っているお客様に安心を促します。普段通り座ってもらい、座り方が右に偏っていることを指摘。正しい座り方を説明します。
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その上で、負担がかかっていた腰からお尻、足の筋肉(大腿筋・下腿筋)の疲
労を取り除く施術を行い、痛みを緩和させてあげて下さい。
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最後に、座っている時は適度な休憩をいれて、お尻への負担を減らすようアドバイスしましょう。
【ポイント】
椎間板ヘルニア=禁忌と思って、その言葉を聞いただけで手をつけないセラピストがほとんど。ただ、既往歴があるからといって、目の前のお客様の症状がヘルニアに起因しているとは限りません。お客様の話をよく聞き、身体を診て、施術ができるものかどうか判断します。
他に、
・皮膚炎
・帯状疱疹
・妊婦
・静脈瘤
これらはよく禁忌とされる症状ですが、それぞれ漠然としたイメージではなく、まずしっかりと勉強して知識をつけることが必要です。
各症状について正しく理解していれば、本当にそれらに起因した症状なのか、もしそうならどういった病院に行けばよいかなど、お客様の様々なニーズに対応することができます。
施術のテクニックそのものも大事ですが、それ以前に、なぜその症状が起きているのか、どう言った原因が考えられるかといった施術に入る前の“分析力”があってはじめてテクニックが活きるのです。
今回の症例の場合、
①筋肉の位置関係
②神経の働きと通る筋道
の理解が必要です。これらの理解によって禁忌のイメージに振り回されず、的確な診断ができ、自信を持って施術に入れるでしょう。
プロフィール
上原健志さん
株式会社u-bal
/うえはら整骨院 代表
http://www.u-bal.com
/u-bal からだ塾
<経歴>
1975年生まれ
立教大学社会学部卒後、日体柔整専門学校へ進み、医学の道を志す。
卒業後、都内複数の接骨院・整骨院・整形外科で勤務
2006年
うえはら腰痛研究治療院として独立。老人ホーム・寝たきりの高齢者・障害を持たれている方の往診のほか、マンション、グランエスタ内のリラクゼーションサロン「Ciffon」にて出張マッサージも始める。
ふとしたきっかけから、数人のセラピストの要望で身体に関して小さな勉強会を開く。
この頃からセラピスト業界に自分たちの医学的知識が役立つことを痛感する。
2007年
墨田区に移転、うえはら整骨院をオープン。「Ciffon」の運営を始める。同時期にNISPAC日本スパカレッジにて解剖生理学講師活動開始、頭皮の生理学などを教える。
2008年
株式会社u-balを設立。勉強会を「からだ塾」としてリニューアル
現役のプロバレエダンサー・インストラクターや、演劇・舞台に携わるダンサーの施術や、産前産後の施術にも定評がある。
ほか、リラクゼーションサロン等の社員研修の講師も務める。
<資格・活動>
柔道整復師
介護支援専門員(ケアマネージャー)
CIBTAC国際ライセンス(解剖生理学)
上海中医薬大学解剖学短期研修修了
うえはら整骨院院長 http://u-bal.web.officelive.com/
NISPAC日本スパカレッジ解剖生理学講師
NPO法人 日本手技療法協会会員
JHA日本治療協会会員