Fender USA 1961年製ストラトPU修理 その2 | RE/F-TECH の足あと by u-tak

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雨の金曜日、週末ですね。

 

マルチタスクなu-takに週末と言う言葉は無いに等しいですが。(笑)

明日は年に一度、バリウムを飲む日です。

 

バリウムを飲んだ後は・・・ 

舞台恐怖コレクターを再度、観に行きます♪

 

 

さて、前回は1つ目のPUの断線修理が完了したところまででしたね。

良い感じに修理が出来ました。

 

実はもう一つ1961年製のブラックボビンを受け取っており、こちらは短くなったリード線の交換のご依頼でした。

 

黒のリード線が短くビニール電線で継ぎ足されています。

初期の抵抗は5.77kΩ at 25℃、テスターは0.03kΩ低く出ています。

 

リード線の交換と同時に、修理済みの61年製PUと、どちらをリアにするかミドルにするかを決めるため、データ比較の上、サウンドチェックを行います。

 

先ずは抵抗値

前回修理品:約6.2kΩ(at 25℃)
リード線交換予定品:約5.8kΩ(at 25℃)

この傾向から、前回修理品の方がパワーが出る可能性があります。

 

次にPP(ポールピース)の磁力

前回修理品:88mT~152mTで良好
リード線交換予定品:77mT~137mTで良好

PP磁力は断面の場所によって強度が違います。

また隣のPPの磁力の影響も受けますので、断面上の色々な場所をテスラメーターで測定して最高値と最低値を記録しています。

 

今回の磁力は一般的な範囲です。

時にはもっと磁力が抜けている場合もあり、サウンドチェックしてバランスが悪ければ着磁して補うこともあります。

 

では、実際にストラトのテスト機に搭載してサウンドチェック。

いつものテスト機です。

 

サーキットは古いFender Japanです。

いつもリアポジションに搭載してサウンドチェックしています。

PUの高さ、アンプセッティングで音が変わりますので、色々触りながら比較します。

 

アンプはトランジスタがRoland JC-50、チューブはFender Super Champにて、それぞれ各TONEコントロールはフラット(目盛5)にて、Volは何パターンか変えてサウンドチェック。

 

結果

前回修理品:

リード線交換予定品より出音のレベル感はやや高く、6弦(低音)もしっかり出る。
Fender系チューブアンプでは俗にいうベルトーンですが、中高音域がやや強め。

アンプセッティングによっては鼻詰まり感が少し出る感じ。

(800Hz前後が出る)
磁力があまり減っていないため結構しっかり出音しますが、音の枯れ感はややあります。
 

リード線交換予定品:

低音から高音までのバランスが良く、ストラトのリアPUの音と言う感じ。
音の枯れ感はややあり。前回修理品より締まった感じのため、比較するとややおとなしく感じます。


サウンドチェックの結果、前回修理品の方が出音レベル感が高く中高音域が出るためリアに配置していただくことにしました。

 

と言うことで、交換するリード線はミドルに十分な長さとします。

交換する布巻リード線をビンテージ風に汚れ加工し、カーボン入りロウ材にてロウ引き加工します。

しっかりロウ材が浸透したら・・・

余分なロウをしごいて落とします。

コイルを傷つけない様にPUカバーを装着し、リード線を取り外します。

無事にリード線が外れました。

そして、長いリード線に交換します。

が・・・ここで問題が発生!

一旦リード線を交換したのですが、導通が出ず。

 

ベースプレートの穴に布巻き線を通すのは、毎度のことですが狭くて通り難く、かなり慎重に作業を行うポイントですが、その際に断線させてしまいました。

 

リード線を通す際にPUカバーはしていますが、どうしてもベースプレートには力が加わってしまいますので。。

今回もかなり慎重に行ったつもりだったので、ショックでした。

 

依頼主様へはありのままを報告し、ご了承いただきました。

 

特に古いものを扱う場合、必ず100%BESTな形で修理が出来るとは限らないことを、身をもって再確認しました。。

今後も修理の依頼があるかもしれませんが、ご依頼の際はその様な事もある事をご承知おきの上、お願い致します。

 

今までも、色々トラブルは経験しましたが、一番落ち込んだかもしれません。

 

気を取り直してコイル解き機にSETし、断線部位を確認します。

先ずは357ターンで断線部を発見しましたが、未だ導通ナシ。

何か所か断線してしまった模様。

 

断線部位のコイルを接続し、さらにコイルを解いて断線部を調査。

コイルを解く際は、何ターンでベースプレートとTOPプレート間を行き来しているか、またその巻きの偏りなどを記録しながら解いて行きます。

 

写真はその途中、1565ターン解いたところで写真を撮っていないことに気付き、取り敢えずパシャリ。

なかなか断線部位が見つからず、最悪はコイルを全部解くことになるかなと思っていると、4260ターンコイルを解いたところで巻き始め側で断線していることを発見。(お~!となって写真撮影を失念。)

 

コイルの巻き始め側の、巻かれたコイルの下敷きになっている部分となっていない部分の境い目で断線していました。


リード線を通す際にベースプレートに力を加えたため、コイルの弱っていたところが断線したと推測します。

前回修理した、セットのもう一つもコイル下部のベースプレート際の表層で断線していましたので、PUカバーの下端側とベースプレートの間の隙間で、コイルの腐食が進む何かが起こっていたのかもしれません。

 

そう言えば、ちょっとポッティングが変質して硬化している様な感じがありましたし。

 

巻き始め部分はコイルを引き出すことが出来ませんので、全て解いて巻き直そうかとも考えましたが、コイルは残り約半分でもオリジナルの状態が良いと考え、巻き始めの部分にコイルを接続して修理することにしました。


巻き始め部分はコイルを元通りに巻き込めばその下になり見えません。(作業に没頭していたためここも修理部分の写真は失念)

 

手回しのコイル巻線機にて、オリジナルのコイルを巻き戻していきます。

コイルを巻く際は、記録した通りにできるだけオリジナルに近く巻き戻して行きます。

 

巻き戻し完了。

コイル端をハトメにはんだ付け。

外観の仕上がりはまずまず。

 

再度リード線の交換品を取付け。

上が交換リード線で、下がオリジナル。

リード線のレリック仕様も良い感じです。

 

今回は問題無くリード線を取付けることが出来ました。

外観からは、修理されたとは分からない仕上がりです。

ポッティングを施すかどうかも思案しましたが、コイルを解いた際、ポッティングは表層とTOPプレート側のみで内部には浸透していないことを確認したため、完成後のポッティングはせず、表層のロウを摩擦熱で馴染ませる程度で処理しました。

 

ポッティングを行うとPP周囲の錆びた鉄粉が分からなくなったり、経年の汚れが溶け出してキレイになり過ぎますし、コイルの中に浸透しすぎると鳴りが変わってしまいますので、その面からもポッティングはしない方向としました。

 

仕上がりの抵抗値は5.66kΩ at 19℃、テスターは0.03kΩ低く出ています。

断線前は約5.8kΩ at 25℃でしたが、コイル抵抗値は温度の影響が大きいため同等と判断します。

 

このPUにて再度、ストラトテスト機にてサウンドチェック。


前回修理品と近くなり、すっきり感が減り中音域がやや出る感じとなりました。


これはこれでビンテージ感があり、これが本来に近い感じなのかもしれません。
もしかすると今回の修理前は、何かコイルの傷んでいた部分の影響があったのかもしれません。

 

何とか61年製ブラックボビンを2点、修理完了しました。

次は、この2点と同時にお送りいただいたブラックボビンモデルの現行PUを、この2点に合わせてカスタムしていきます。

 

今回はハプニングがありました。

多くの場合、大きな問題無く修理をさせていただいておりますが、特に古い機材や部品、PUなどでは何か起こるか分かりませんので、重ね重ね、修理をご依頼の際はご承知おきの上、お願い致します。

 

 

では、また。

u-tak