Mosrite 1964年製PU修理 その2 と速報! | RE/F-TECH の足あと by u-tak

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旧き良きギター、アンプを中心に、修理、カスタムする小さな工房である。。。
子供たち(子役)の成長記も、ぼちぼちとお届けします。

末っ子次男は本日、第35回世界バトントワーリング選手権大会日本代表選考会に出場しました。

結果、フリースタイル個人のユース部門(12歳~17歳)にて、日本代表に選んでいただきました!!!

準決勝ではノードロップ、決勝ではドロップ1つで、親のひいき目もあるかもしれませんが、なかなか良かったのではないかと思います。

これもひとえに、お世話になっている先生方のご指導、素晴らしい振付のおかげの部分が大きいと、大変感謝しております。


観ていただいた方はお分かりになるかと思いますが、流れるようなダンスと止まらないバトンの振付は、非常に美しいと思います。
本人は体力的に非常にきついと思いますが・・・ ビリーとオリバーで鍛えられていますので!!!
 

次は明後日、3/27(日)第3回全日本バトントワーリングジュニア選手権大会の、ソロトワール男子Jr に出場します。
この種目は昨年6位、今回は上位入賞を目指します。

ソロトワール男子Jrの準決勝は10時頃、決勝に残れば16時頃に出場します。
今大会はYouTubeライブで配信がありますので、お時間の合う方は是非ご覧ください。

 

 

 

さて、前回はコイルを解き始めるところまででしたね。

コイルの巻きは下の写真の様な感じです。

 

黒リード線の引出し部は、巻き終わり側の白リード線と同じ様に、銅線で端部に環を作って、そこにリード線を通している抜け止めにしており、その部分がコイルの下に埋まっているため、コイルの外形がいびつです。(リード線の端部形状は、前回ブログを参照)

最初は順調にコイルを解いて行きましたが・・・

482ターンでコイルが引出せなくなりました。。

原因は、コイルを巻いているボビンの上板が剥がれかけていて、コイルを解くために引くと、その剥がれた隙間にコイルが崩れ込み、挟まってしまったため。

 

下の写真で一番左のPP(ポールピース)を抜いた穴から、崩れ込んで挟まり絡まったコイルが見えています。

アップ写真。

参考まで、裏面は下板も透明のままで、何とか剥がれずに付いておりキレイでした。

この裏面を見ると、上板付近の絡んだ部分は廃棄しても、何とか残りのコイルが引出せないか?と思うのですが、そうは簡単には行きません。

 

上板を外して何とかコイルを引き出そうtしましたが・・・ダメでした。

コイルのどこかを1か所切って、そこからコイル引き出していったとしても、それがどこか1本でも表層に無いコイルの下をくぐっていたら、数ターン後に、運が良くても数十ターン後にコイルが絡んで引出せなくなります。

 

1度表層でそうなると、その後に再度同じ様にトライする時には、その時に動いて絡まったコイルを見極めて、最表面にあるコイルの一本を選択するのは不可能に近くなります。。

 

更に今回は、上板を外したため、コイルを解こうとするとどんどん形が崩れて更にややこしく・・・

結局、かなりの時間をかけたのですが、正攻法は諦める結果となりました。

 

こうなると、どれだけ再利用できるコイルを取れるか、です。

やはり、当時の材料と現在の材料では、何か違う気がしますので。

 

と言うことで、割り切ってコイルを別の長い筒状のところに落とし込んで、内部から下板近傍のきれいなコイルを回収することにトライ。

結果、少しだけキレイなコイルを回収することが出来ましたが、やはり表層の1本を見つけられないと、長いコイルは回収が難しいという結果でした。

結局、オリジナルのコイルが回収できたのは、最初の482ターンと、短めのコイルが合計約500ターン分となりました。

 

ここでギブアップ。

残りは新しいAWG44のワイヤーで巻くことにします。

 

コイルを巻く前に、ボビンの上板を接着。

プラスチック系の板ですので、エポキシ系接着剤を使用。

 

下板は剥がれていないのですが、上板と同じ接着剤で貼り付けられているとすれば、いつ剥がれてもおかしくないため、隙間に浸透性の良い瞬間接着剤を染み込ませるようにして補強。

上下の板共にしっかり接着できましたので、コイルを巻き込んでいきます。

今回のPUはブリッジポジションのため、コイルは少し多めに巻きます。

 

先ず短めのオリジナルコイル約500ターンを接続しながら巻き込み、次に新品のAWG44を10,000ターン巻き、最後にオリジナルコイル482ターンを巻いて、約11,000ターンを目指します。

 

巻き始め側の、黒リード線を取付け。

手回し巻き線機にてコイルを巻き戻していきます。

短めのコイルを接続しながら巻き込んでいきます。

 

回収していた短めのコイルを全て巻き込んで、514ターンでした。

ここから、新しいAWG44を巻き込んでいきます。

 

新しいコイルはUEW線ですので、皮膜の色が違います。

コイル接続部。

色が明るい方が新しいワイヤーです。

 

いつも書いていますが、接続部にはコーティングを施して絶縁対策しています。接続部はできるだけ細くしており、接続後はほぼコイルと同様に扱えます。

 

新しいコイルを10,000ターン巻き、合計10,514ターンから、最後にオリジナルコイル480ターン分を巻きます。

最後のオリジナルコイルを約70ターン巻き込んだ状態。

コイルの色が違うので、良く分かります。

 

また、黒のリード線は回転軸に絡めていたのですが、やはり解けてきて邪魔になるため、一旦銅薄板へのはんだ付け部分でカットし撤去しています。

コイルの巻き戻し完了!

結果、10,980ターンとなりました。

写真より1ターン多いのは、写真のPUから後ろのオリジナルコイルを回収していたコイルボビンまでの距離で、もう1ターン分あったからです。

 

コイルの巻き終わり部に白リード線をはんだ付けて、

元通り、コイルの外周に巻くように取り付け。

リード線先端の銅線で作った環に、リード線を通して固定します。

リード線が通る位置も、オリジナルを再現する様に配置。

このPUはそうしないとリード線の収まりが悪いです。

 

コイル外周の保護テープは白で質感の近いものが無く、またオリジナルテープに十分粘着性が残っていたため、オリジナルを再使用。

 

そしてボビン下側と磁石をエポキシ系接着剤で接着。

磁石側の凹凸が大きいため、接着剤を多めに塗って接着。

その時、ネジ穴に入らない様に注意が必要です。

 

ここは、オリジナルは接着剤の量がかなり少ない様なのですが(写真の銅板の上に白く見えている部分)、背面の発泡樹脂もカットしたもので再び蓋をするため保持力が弱くなりますので、しっかり固定しておきます。

その方がPU自体の共振も減って、音にも良い考えています。

 

ボビンと時着の位置決めと、接着までの固定を兼ねて、PPを取付け。

また、接着剤の乾燥を待つ間に、黒リード線を銅薄板にはんだ付け。

 

DC抵抗値は約14kΩとやや高め。

ブリッジPUですので狙い通りです。

ボビンと磁石が固定できれば元のPUカバーに戻し、キレイに切り抜いて送られてきたオリジナルの背面の発泡樹脂で蓋をします。

発泡樹脂の外周にタイトボンドを塗ってPUカバーに固定。

 

ここはどのような接着剤を使うか迷うところなのですが、将来的に再度開けて修理を行う可能性を考えて、高温にすれば剥がすことが出来るタイトボンドを選択しました。

 

タイトボンドが乾燥すれば、修理自体は完了。

タイトボンドは乾燥すると乳白色が薄くなりますので、割と自然な仕上がりになりました。

 

これを‐10℃以下で12時間以上冷却し、ゆっくり室温に戻します。

そうすることで、冷えてコイルが収縮して締められ、何か無理なテンションがかかっていれば断線しますので、そのスクリーニングチェックと、銅線が若干収縮して戻ることで、コイルがきつめに巻いてある部分は少しテンションが抜ける効果もあります。

 

修理完了外観です。

DC抵抗値:14.1kΩ at 24℃。

 

そして、いよいよ音出し!

なのですが、Mosriteのギターが無く、レスポールにも入らず・・・

 

しかし、お客様のところで 「なんだこの音は~!」と言うことが無い様に、必ず最低限のサウンドチェックは必要です。

 

と、言うことで苦肉の策。

ストラトの弦の上側に逆付け。

 

木のブロックを組み合わせてPUと弦の距離が適切になる様にし、マスキングテープで固定。

それを両面テープでピックガードに貼り付けています。

これはPUの試作の時にも、いちいちピックガードを外していられないので、時々使う手法です。

出音に異常が無いか確認するには十分です。

 

配線の都合でVolやToneなどのコントロール系は通さずにPU → エフェクター(SD-1) → アンプ でのチェックとなりましたが、出音も問題ナシ。

 

シングルコイルらしい高音がシャキッとした感じもありつつ、約11,000ターン巻かれていますので、低音も比較的しっかり出て、十分良い音となりました。

歪ませてもドライな感じで、でもレンジは広く、良い感じだと思います。

 

高音に関しては、ギターに組んでコントロール系を通すと若干押さえられるかもしれません。

まあ、それ以前にストラトに外付けでのチェックですので、参考の、そのまた参考くらいで考えていただければと思います。

 

実はこの修理に3週間くらいかかりました。

もちろん毎日これだけに集中しているわけではありませんが、久々に頑張った~!と言う修理となりました。

 

無事に完了!

次回はこの後に修理させていただいた、1962年製ブラックボビンです。

 

因みに現在リアルではその次のPAF修理も完了し、エフェクター修理が待っています。。

 

 

 

今回のバトントワーリングの全国大会は、当初はu-takも大阪へ同行する気満々でしたが、色々考えて留守番して後方支援することに。

炊事も、洗濯も、買い物も、、、久々にやるとすごく時間がかかって、改めて家事労働の大変さを実感します。

 

少し前間まで、これをこなしながら仕事にも行って、末っ子次男の舞台やバトンレッスンの送迎もしていた妻にも、本当に感謝です。

 

そうだ、英語もしなきゃ。。

 

 

 

では、また。

u-tak