現在の日本では、食品中に存在する放射性セシウムの暫定基準値は500ベクレル/kg以下となっています。
この「500」は多いのでしょうか、少ないのでしょうか。
あなたにとって、どのくらい危険なのでしょうか・・・
実は、あなたの危険度は誰にも判りません。
なぜなら、あなたの放射性物質に対する抵抗力がどのくらいあるか判らないからです。
放射線を外部被曝したり、放射性物質が体内に入って内部被曝したりしても、被曝に対する抵抗力には個人差があるため、あなたにとって、どのくらい危険かは未来になってみないと判りません。
ですから、できるだけ放射性物質を体内に入れない、内部被曝はしない方がいいわけです。
でも、外部被曝なら一回あたり1~10mSv被曝しても大問題ではありません。
レントゲン検査やCT検査と大差ないからです。
道沿いに10μSv/時間のホットスポットがあっても外部被曝ですから、10秒程度で通過するのであれば危険性は限りなくゼロに近いわけです。一回に10μSvの360分の1しか被曝しないのですから。
常に住んでいる自宅・学校・仕事先といった家屋の周囲や屋内にホットスポットが無い限り、地域にホットスポットがあったとしても過剰に心配しない方が良いでしょう。
「500」というと多い感じがするのは人の常です。500円は多いし、50円は少ない訳ですから。
では「0.000000005」は多いでしょうか?
「0.000000005」より「0.0000000005」の方が少ないでしょうか?
一桁違うわけですが、この位の差では、人間は大小は感じませんよね・・・
科学的単位は様々で、1キュリー(Ci )は、3.7×10億ベクレルです。
ですから、370ベクレルは「0.00000001」キュリーです。
「0.00000001」キュリーと「0.000000001」キュリーの危険度の違いは判るのでしょうか?
この違いを科学的に調べるのは、実は非常に難しい話しなのです。
ですから、370と37とでは確かに一桁の差があるわけですが・・・
人間が「0.00000001」キュリーと「0.000000001」キュリーとの間に大差あるのかどうか科学的に調べて判断するのは非常に難しいのです。
そこで、具体的に放射性ヨウ素300ベクレルの危険性について考察してみましょう。
下記サイトをご参照下さい。
放射性ヨウ素(I-131)は医薬品です。ですから、人間が甲状腺ガンやバセドー病の治療のために内服します。
その内服量は、一回当り37~74億ベクレルです。つまり、1~2キュリー。
薬ですから副作用が出ることはありますが、大人が内服する位なので毒物ではありません。
ですから、放射性物質(放射性ヨウ素)と青酸カリとは、全く次元が違う物質といえます。
放射性ヨウ素は人間が飲みますが、青酸カリは自殺や殺人以外に飲むことはありませんから。
つまり、30億ベクレル程度の放射性ヨウ素は、副作用が出る危険はありますが、人間が飲めないほど危険ではないですし、飲んでも何の障害もでない人が多いわけです。(ただし、乳幼児の危険度は別です。)
この薬の投与量である30億ベクレルの1000万分の1が、300ベクレルです。
人間が薬として内服する量の1000万分の1が、放射性ヨウ素(I-131)の飲料水1kgの暫定規制値300ベクレルに相当します。
300ベクレル/kgの水を1万トン飲むと、薬の量と同じになるわけです。
では、300ベクレル/kgの水、30ベクレル/kgの水、3ベクレル/kgの水の危険性は、どのくらい違うのでしょうか?
放射性ヨウ素0.0000001希釈の水、0.00000001希釈の水、0.000000001希釈の水の危険性が判別できるのでしょうか?
0.0000001希釈の水を、100cc飲むか、10cc飲むか、1cc飲むかの違いです。
その危険度の違いを決めてからでないと、微量の差を選択できないはずです。
実は、この微量の差を測定装置も持たない一般の人々は、決して調べることはできません。
そして、この違いを日本全国の全食料品について行政が測定することも不可能です。
なぜなら、300ベクレル、30ベクレル、3ベクレルという違いを測るには測定精度を上げる必要があり、測定精度を上げるためには何倍も長い測定時間が必要ですから、現実的には3ベクレル/kgという精度で膨大な数量の食料を全て測定するのは不可能なのです。
覆水盆に返らず・・・
日本国が間違った方向に歩んできたため、原発事故は起きてしまいました。
もう、過去の世界に戻る術はないのです。
100万分の1にするか、1000万分の1にするか、1億分の1にするか、決めなければなりません。
日本は民主主義国家ですから、十分な対話と議論で暫定基準値を決めて欲しいと思います。
そして、どの位の精度で、どの程度サンプリングできるのか、測定体制を構築する方向性を決めるべきです。
EUは、日本と同じ暫定基準値で日本製品の輸入を許可しています。
http://www.jetro.go.jp/world/shinsai/20110411_01.html
なぜなら、全面禁輸してしまうと日本経済を圧迫するので、利他的に基準を設けて輸出を許してくれています。
にもかかわらず、日本人の中は十分に対話したり議論したりすることなく、福島産の食糧を全面廃棄するよう主張したり、日本の暫定基準値では食べれないと主張したりする人々がいます。
もっと、正しく放射性物質の危険性について学んでから、議論し、暫定基準値を決めていくしかありません。
そして、暫定基準値が民主的に対話と議論によって決まったのであれば、民主主義国家では、その決定を国民は受け入れるしかありません。
いまこそ、500ベクレル、300ベクレル、100ベクレル・・・どの基準にするべきなのか、国民全体で議論すべきだと思います。
本来は、国会議員やマスコミや学者の役割ですが、日本では議員やマスコミや学者が職責を果たしていません。