平成22年10月20日・21日の二日間、中部電力・浜岡原子力発電所での事故を想定して、原子力防災訓練が行われています。
平成22年度原子力総合防災訓練の実施について
http://www.meti.go.jp/press/20100929003/20100929003.pdf
以下、訓練内容を転載します。
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(1)訓練想定
中部電力株式会社浜岡原子力発電所3号機において、原子炉給水系の故障により原子炉水位が低下し原子炉が自動停止。その後、非常用炉心冷却装置等が作動するものの、相次ぐ故障により、原子炉の全ての冷却機能が喪失し、放射性物質の放出のおそれがある事態を想定する。
(2)訓練実施項目
・経済産業省警戒本部の設置などの初動対応訓練
・内閣総理大臣による緊急事態宣言発出、政府原子力災害対策本部及び現地対策本部の設置などに係る訓練
・住民避難などの緊急事態応急対策に係る訓練
・緊急事態の解除に係る訓練 他
(3)訓練の重点項目(特徴)
・迅速・的確な初動対応の充実
トラブル発生時における通報・連絡体制、プレス対応の充実を図る。
・広報活動の充実
初動時からの広報活動及び関連の国際機関・海外政府機関等への情報発信の充実を図る。また、在住外国人や災害時要援護者のためのケーブルテレビ等の活用を含む住民への広報を行う。
・災害時要援護者の避難支援対策等の充実
災害時要援護者に対する避難支援対策及び避難訓練等の充実を図る。
・緊急被ばく医療活動の充実
初期~三次被ばく医療機関への搬送体制の確認、専門家の派遣受け入れ等による緊急被ばく医療活動の充実を図る。
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これまで報道されてきた通り、昨年10月には、今回の福島第一原発事故と全く同じ想定で訓練が行われています。まるで、予行演習のようなものです・・・
こうした訓練では、必ずSPEEDIを稼動させて対応します。
緊急被ばく医療研修のホームページ:SPEEDIについて
http://www.remnet.jp/kakudai/06/presen1.html
以下、転載。
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SPEEDIは、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムと呼ばれておりますように、施設から出てくる放射能のプルームからどの程度の被ばくがあるか、またどちらの方向に拡散していくか、こういった内容が迅速に皆様方に情報として提供できるといったことで、日本原子力研究所で風洞実験や野外実験などを繰り返されて開発されたシステムです。実際に我々で運用に入りましたのは昭和61年からです。ですから、幾つかの道府県では既に防災訓練でも使われております。また、最近では訓練時に実際の風でもって、実況でもってやりましょうというケースがここ数年出てきております。
SPEEDIのネットワーク構成としましては、当初は原子力発電所および再処理施設を対象としておりましたが、JCOの事故以降、そのほかの施設についても展開されておりますので、現在19の道府県とつながっております。それから、もちろんSPEEDIの運用のためにはスポンサーであります文部科学省および道府県の他に経済産業省、原子力安全委員会、さらには気象データの提供元である気象協会、それから、放射性物質がいつごろどのように出てくるかということを評価するということで、ERSSというシステムがありますが、このシステムを運用しているNUPEC等とネットワークが構成されています。
(中略)
SPEEDIから配信される図形の一部をご紹介したいと思いますが、実はSPEEDI は気象予測に近いというイメージで理解して頂いたら割と理解し易いかもしれません。一番初めは風速場を与えます。これは訓練のときのものですので、北の風ということにしていたと思います。まず初めに、ある量が出たときにどのように拡散していくかということを計算します。この場合にデフォルト値としては希ガスが1時間あたり100Bq、ヨウ素が1Bqとなっております。また、30日の3時に炉が止まりまし たよ、放出開始は8時からですよといったような、これらの情報がいわゆる放出源情報です。この様な状況における予測計算として8時から9時の間にどのような濃度分布になるのか。それらの濃度の情報がこちらの方にそれぞれ5本の等値線で示されています。次にこれはその濃度をもとにして外部被ばく線量を8時から14時まで計算したものです。SPEEDIは基本的には6時間先までの拡散予測と、それに よる影響を情報として提供することが可能ですが、この例ですとこの量ですので、一番高くても10ー14mSvです。今日の会合ではいわゆるヨウ素の吸入による甲状腺への取り込みについての線量、特にこちらで示していますように、対象年齢1歳児の方が外に6時間ずっと一人でいるということは考えられないのですが、その方がある場所にいたときにどれぐらいの取込量になるのか。これはこの量ですので10ー12 mSvとなります。先生方の頭の中で逆算して頂ければ簡単に、どれぐらいの場合はどれぐらいの量になるというのは計算できると思いますが、こういうふうにいわゆる吸入による等価線量はこれぐらいになりますよといったことがSPEEDI側から 提供できる情報です。
これは一つの例ですが、実際こういうふうにやったというわけではありませんが、オフサイトセンターで医療班の方々が例えばどれぐらいの取込量になったらどうしようかと、いろいろな議論をされると思います。この医療班の方々が、例えば予測値として100ミリなのか50ミリなのか、そのあたりで一度SPEEDIで計算してみてほしいといった決心をしたとします。そうした場合は当然放射線班の方々と、ではどういう条件でどういう内容の情報をSPEEDI側から与えようかというふうな議論になろうかと思います。そういった放射線班と医療班の方々に議論をして頂いたあと、放射線班は、それに基づいてSPEEDIに対して計算をするようにと指示されます。それを受けてSPEEDIセンターは計算を実施し、結果を送り出すことになろうかと思います。
これは、その計算例を示しています。一応これも5×10ー13mSvというレベルの等値線でもし引いたとしたらということですが、オフサイトセンターからこういう図形をすぐ提供して欲しいと要請があれば、こういった形で渡すことが可能になっています。また通常、緊急時ということになりますと、円と扇形の対策エリアということで考えられております。そこにいる住民の方というのはどれぐらいになるのだろうかというと、ここでは664名という数字が出てまいりますけれども、こういった人口のデータベースを持っておりますので、対策エリアに含まれる人口を検索することが可能です。一応この場合は664名ですから、先ほどのような想定をした場合には、664名程度の人に対して何らかのことを、さっきの場合ですと例えば安定ヨウ素剤の配布をどうしようかといったようなことも対策としては可能ではないかと思っております。
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やはり、かなりの事を訓練していたんですね・・・
もちろん、福島県でも訓練しています。
平成22年度福島県原子力防災訓練実施計画(第20回)
http://www.bousai.ne.jp.cache.yimg.jp/vis/kunren/fukushima/h22/pdf/01.pdf
この訓練計画では、事故発生から15分でSPEEDIを稼動させることになっています。様々な時期で計6回もSPEEDIを活用していますし、放射性物質の放出開始時期と放出停止時期に被曝量の予測を行っています。
そして、宮城県でも訓練しています。
原子力防災訓練実施状況:平成22年度(宮城県)
http://www.bousai.ne.jp.cache.yimg.jp/vis/kunren/miyagi/h22/gazou.html
SPEEDIによる避難住民数の活用、SPEEDIのキーホール図より交通規制等の検討・・・とあります。
防災訓練では、SPEEDIを活用したのに、菅内閣はSPEEDIを無視していたのでしょうか???
原発事故想定の防災訓練、首相「詳しくは記憶してない」
http://www.asahi.com/politics/update/0418/TKY201104180525.html
以下、転載。
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18日の参院予算委員会で菅直人首相が自ら参加した原発事故を想定した防災訓練の内容を問われ、「詳しくは記憶していない」と答弁する一幕があった。
自民党の脇雅史氏が「原子力総合防災訓練のテーマを覚えているか」と質問。首相は「詳しい内容は記憶していないが、いろいろな地震等を想定したことではなかったか」と答弁した。首相は昨年10月、本部長として中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)を舞台にした原子力総合防災訓練に参加。放射性物質放出の恐れが出たという想定だった。
脇氏が「今回と同じ想定だ。何の記憶もないのか。何のための訓練か」と詰めると、首相は「原子力事故は過去に多くあったので、一般的な認識は持っていた」などと釈明した。
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菅首相が、この防災訓練の内容を忘れていたくらいですから、政府が本番では無視して当然かもしれませんが・・・(泣)