ダンダンダンダンダーンダーンベルベ、ダンダンダンダンダーンダーンベルベ。。。ビーチ・ボーイズのカム・ゴー・ウィズ・ミーがふと頭をよぎる。
日比谷公園から見える東京タワーを指差してきみは言った。
「ふもとまで歩かない?」
もう三月半ばだというのに厚手のピーコートをクリーニングに出せないでいる。夜は冷えるがきみと歩く夜はぬくぬくとした寒さが心地よい。
特に会話もないので、わたしはイヤフォンを取り出して彼女に渡す。季節外れのビーチ・ボーイズのベストを選曲して、洋楽をからっきし聴かないという彼女の耳へ英語でメッセージを送る。ウィーウィルネバーパート、アイニーデュダーリン、この辺りは聞き取れただろうか。
「ビーチ・ボーイズ、好きになったでしょう?」
「うん。もうだいぶ好きになったよ」
信号が青になっても右左右と見るように、当たり前の確認を二人だけのパーフォーマンスとして共有する。
見え隠れする東京タワーを追いかけて歩道橋を駆けあがる。少し視線を上げると真上の雲はうっすらオレンジ色に染まっていた。それが東京タワーのライトアップのせいなのか、ただの怪奇現象なのか、わたしたちにはそんなことはもうどうでもよかったのだ。二人で歩くための目的さえあれば、あとは笑って唄って足を動かすだけで充分だった。