注意の話⑥-「注意資源を増やすための瞑想運動」マインドフルネス瞑想応用編② | 粳間メンタルリハビリテーション研究所/一般社団法人iADLのブログ

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いつもお世話様です!

 

高次脳機能障害・認知症・発達障害のための集団メンタルリハビリテーション「オレンジクラブD」第117-119回の内容をまとめてお届けいたします(3/5,3/12,3/19)。

内容的にはマインドフルネス訓練のための基礎知識の新シリーズその3です)。

 

 

今回も注意の話の続編で、マインドフルネス瞑想応用編その②です。

瞑想運動の話をします。

 

前回と前々回のお話の続編ですので、記事見ていないかたはわからないと思います。

まだのかたは先にこちらをごらんください。

その1: https://ameblo.jp/u-mri/entry-12338590292.html

その2: https://ameblo.jp/u-mri/entry-12357988456.html

 

 

前回と前々回の復習

 

前回・前々回の記事で、「注意を外向き(≒五感に焦点がある注意)にする訓練」を紹介しました。

 

あまりに注意が内向き(≒ワーキングメモリーに焦点がある注意, 頭の中に向けた注意)だと、悩みがちになりやすく、注意資源(注意力を発揮するための汎用エネルギー)を消耗しやすいため、注意強度の低下につながります。また、その分、外の世界に向けた注意(≒五感を通じた外向きの注意, 一般的な注意)に割かれる注意が減り、不注意になります。

 

よって、注意を外向きにするための訓練方法として、マインドフルネス瞑想訓練から、レーズンのエクササイズ指を呼称するエクササイズを紹介しました。また、注意を外向きにするための生活上の一工夫の例として、「声だししながらやるライン作業」を紹介しました。

 

ここまでが前回・前々回の復習です。

 

さて、この話を思い出しましょう

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声を出すこと・視覚を使うこと・カラダを使うことを同時にやることが、注意を外向きにして作業するコツです!

 

そして悩むこともできなくなる!m9( ゚Д゚) ドーン

(前回の記事より, https://ameblo.jp/u-mri/entry-12357988456.html)

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この原則は、何をやるときも変わりありません。

 

「言葉」「視覚」「カラダ」の、3つの向きをそろえるのが注意をコントロールするコツです

 

…というわけで、今回は、「カラダを使う」注意訓練の話をします。

 

では、以下から、本題開始

 

 

注意資源は有酸素運動で増える

 

注意資源は有酸素運動で増えます。

 

よって、注意訓練としての運動療法のコツの第一は、「有酸素運動」であることです。

 

注意資源は、注意機能だけでなく、遂行機能や計算、我慢をすることなど、あらゆる頭の働きに必要な汎用エネルギーです。

 

そして、この汎用エネルギーを支えるのは体力です。

 

よって、有酸素運動をして体力をつけると注意資源も増えます

 

単純な理屈ですね。

 

有酸素運動の例は、散歩(ウォーキング)、ジョギング、水泳、水中歩行等…。なんでもかまいません。

 

なんでもかまわないのですが、これらの有酸素運動をやる際に一工夫しないと、無駄に注意資源を消耗してしまう恐れがあります

 

 

…なぜかというと、これらの有酸素運動中は、「認知的にヒマ」だからです(認定的多忙の正反対)

 

特に、言語のワーキングメモリー(音韻ループ)が完全に空いている状態です

(ワーキングメモリーについての復習はこちら→https://ameblo.jp/u-mri/entry-12338590292.html)

 

というわけで、

 

何の対策もなしに有酸素運動をしてしまうと、悩みがちな人は、運動中に思いっきり悩みます

 

そうなると、結果的に、運動中に無駄に注意資源を消耗してしまいます。

 

よって、「認知的にヒマ」にならないように対策が必要です。

 

 

☆認知的多忙になる「邪道な瞑想運動」。

 

さて、有酸素運動中に「認知的にヒマ」にならないようにする一番の対策は、「声を出す」ことです。

 

声を出せば、言語のワーキングメモリーは妨害されて、ほとんど使えなくなります(前回記事の「指を呼称するエクササイズ」を思い出しましょう)

 

視覚とカラダは、すでに運動に使っていますから、運動中に声を出せば、「言葉」「視覚」「カラダ」の全てを使うことになります。

 

 

よって、邪道な瞑想運動の一番のおススメは、「歩数を数える散歩」です。

 

試しに10歩でも20歩でも、数えながら歩いてみてください。その間考え事はできないはずなので。

 

少なくとも、悩むことは無理なはずです。

 

 

こういった一工夫を加えることで、有酸素運動は、無駄な注意資源消費を起こすことなく、純粋に注意資源を増やすためのものになります。

 

運動中に考え事をすると、「視覚」と「カラダ」は外向きなのに、「言葉」だけ内向きという、チグハグな注意の使い方になりますが、歩数を数える等して「言葉」も運動に参加させるようにすると、全ての注意が外向きになります。さすれば、運動で、注意を外向きにするエクササイズも同時にやることができるようになります。

 

というわけで、「邪道な瞑想運動」についてまとめると、以下のようになります。

 

散歩は、有酸素運動として推奨されるモノの代表で、あらゆる健康上の恩恵が得られるうる運動ですが・・・。散歩している最中は、たいてい、考え事をしませんか?むしろ私の場合は、考え事をするために、一人で散歩をしたりします。歩くことと景色を見る以外はやることがないので、考え事に集中しやすいからです。

 

考え事がしたいなら普通に散歩すればよいのですが、この、考え事がしやすい状況こそ、「注意が内向きになっている状態(ワーキングメモリーが使いやすい状態)」であり、悩みを増強させ、注意資源を無駄遣いさせる、悪い状態です。これをなんとかしないと、せっかくの運動療法の効果が、悪い心理効果によって相殺されてしまいます。

 

「運動療法中は、声を出すようにしましょう」

 

散歩の場合は、「自分で声を出して、歩数を数えながら散歩する」など、ひと工夫加えることで、考え事が不可能になります。つまり、認知的多忙になれるわけですね。

 

よって、私が散歩を運動療法として指導する時は、よくいう、「一日一万歩あるいてください」でなく、「一日、一万、歩数を数えるまで歩いて下さい」などと言います。

 

無論、数える事の意味を強調した上で。

 

数えて歩くだけなんてつまらない!という人には、「駅まで何歩か数えましょう」とか、「スーパーまで何歩か数えましょう」とか、指導します。よくいく場所まではだいたい何歩なのか?マップを作るようにすると、楽しく運動できるかもしれません。

 

ここで解説したように、簡単な言語課題を併用するだけで、運動中に考え事が出来る余地は減ります。これすなわち、頭の中に意識が集中する事を妨害する事になり(=Distraction)、注意資源の無駄遣いを防ぐことにつながるわけです。この一工夫で、心理療法をやりながら運動療法を同時にできるようになると。

 

ちなみに、運動部に所属していた方は、何部であれ、声だしを促されていたのでは?と思います。私は中高と水泳部だったので、泳いでいないときは、「せーいせーい」と声を出すように言われていました。やってみるとわかりますが、声だしをしたほうが、「運動辛い…」「もう嫌だ!」など、考えることが難しくなります(ワーキングメモリーを使うことが妨害される)。そういった効果があると当時から分かっていれば、私も声だしさぼらずに、ちゃんとやっていたのになぁとしみじみ。今更ながら(-_-;)

 

他にも思いつく限りの、私が勧めた事のある心理療法+運動になりうるものを列挙しておきます(有酸素運動以外も含んでいます)。どれかひとつくらいはやってみようという気がするのでは?と思います。あげたものはいずれも認知的多忙になり、注意が外向きになることが期待できます。参考までに。

 

【認知的多忙になる(有酸素)運動の例】

散歩(「歩数を数えながら」「歌いながら」「しりとりしながら」…etc)
水中歩行/水泳(同 散歩, 歩数やバタ足を数えたり)
・秒数を数えながらストレッチ
・秒数を数えながら風船バレー(打つ動作と数唱は同期させないほうが効果が高い)
ラジオ体操(ただし解説のお兄さんのセリフは自分で言う)
・ホウキ掃き(掃いた数を声に出しながら)
・振りつきでカラオケ(歌詞のテロップをしっかり見て読みあげましょう)
・筋トレ(やった数をしっかり声にだしながらスクワット等を)
・抵抗運動(秒数を数えながら壁等を押したり)
・歌いながらスキップ(よい気分になる効果も期待できる)
・カバディ(オフェンスはそのままでOK, ディフェンスでもカバディと言い続けるとなおよし,知らない人はググリましょう
・古今東西卓球(テニス等でも可, とんね○ずが有名

 

☆参考文献

 

本記事はすべて、「ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座(粳間剛, 仙道ますみ, 2018年,三輪書店)」からの引用・抜粋です(この文章をクリックでご購入先リンクへ飛びます)。

 

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