よろずのことに気をつけよ
川瀬七緒
江戸川乱歩賞の作品だという。
うん、2時間のサスペンスドラマに最適な江戸川乱歩系の香りがする。
ごめんなさい、これを読む直前に直木賞の「蜩ノ記」読み終えたばかり・・・
直木賞の葉室麟さんと比べる土俵にも上がらないが、なんせ蜩ノ記を読んだ余韻が残る中では、あまりの格差に作者の力量というものを改めて感じずにはいられない。
この作品。
題名よし。
読ませる力あり。
昔、ジョットコースタードラマと言われたようなもののようにつまらないけど読んでしまう強引な力がある。が、しかし、文章力ではない。
文章、人物以外の描写が薄い。「呪い」はおもしろいテーマだけれど、すべての事件のきっかけとなる事故の設定に無理があり甘い。
そもそも、田舎の子供たちが夜遅くに親に連れられていく山の中で子どもたち同士ならどんな遊びを考えるかという視点が欠けている。子供たちが好奇心をそそられることもない行動で道路に出てしまい全員が事故にあうというのは、あとづけの感が否めない。
そして、殺しの動機が弱いし、殺しのトリックもない。
種明かしされるラストの場面で70~80歳代のおばあちゃん、おじいちゃんの俊敏な動きは、現実にはありえない。火事場の馬鹿時力でも無理そう。まぁ、2時間ドラマを見ていると思えばいいかと納得させながら読む場面である。
とはいえ、2時間には収まるのでドラマ仕立てには十分耐えうる作品である。