本当でしょうか。その人物がどういった人物かは、その人がどういった結果をもたらしたかで見る必要があります。過去の発言の一部だけを切り取って、アジア共通通貨に肯定的=売国奴と決めつけるのは安易すぎます。
現日銀総裁である黒田東彦氏を失脚させたら、アベノミクスの一本目の矢が折れてしまい、日本はたちまちデフレ不況に逆戻りするおそれがあります。(→ 【中曽日銀総裁就任という悪夢】 ) ですから、デタラメな黒田東彦総裁への誹謗を切り捨てたいと思います。
1.アジア開発銀行はODAの裏ルートか?
まず、アジア開発銀行とはなんでしょう?
アジアの発展途上国への資金の貸付を行なう機関です。
主に、①通常資本財源(OCR)によるものと、②アジア開発基金(ADF)、③技術援助に大別されます。 (※1)
①通常資本財源(OCR)
比較的経済開発が進んだ国に供与するものである。金利は市場金利に連動し、返済期間は最長 25 年。主な借入国は、インド、中国、フィリピン、インドネシア、パキスタン等となっている。
②アジア開発基金(ADF)
特に貧しい加盟国向けの譲許性の高い融資であり、金利年1.0~1.5%、返
済期間 24 年又は 32 年。主な借入国は、パキスタン、バングラデシュ、アフガニスタン、インドネシア、ベトナム、ネパール等となっている。
③技術援助
開発プロジェクトの準備・実施の支援、開発戦略や政策等を策定する能力
強化のための助言、研修等を行うもの。
アジア開発銀行はアジア・太平洋地域の経済開発の促進が目的目的で、当然、融資を一方的に押し付けるものではなく、各国の要求を査定し、融資をする期間です。
中国は比較的経済開発が進んだ国に位置づけられているので、インフラ整備目的の融資を行なっているのです。当然、譲渡を行なうわけではありません。そのインフラが中国軍に利用されるから問題だ?インフラは軍だけが使うものではないので、軍が使う可能性があるというだけで融資を断るというのは不可能でしょう。
アジア開発銀行は、中国へのODAの裏ルート機関ではないのです。
2.総裁だった黒田氏が売国行為を行えるのか?
そもそも、アジア開発銀行総裁は中国を優遇するような売国行為を行えるのでしょうか?
総裁は事務局のトップとして、執行部を統括するとともに、IMFや世銀と同
様、理事会の議長でもある。ただし、議長には投票権はなく、どのように議事を進めるかという観点で行動するとあります。(※1)
前にも書いたとおり、「投資アジア開発銀行設立に関する協定」(※2)を確認してもアジア開発銀行総裁には投票権がないことがわかります。ですから、黒田氏が売国行為を行おうとしても権限がないので不可能なわけです。
このことからも、黒田氏が売国奴であるという決めつけの根拠が崩れます。
3.黒田総裁になって中国への融資比率は増えたのか?
仮に黒田氏が売国奴だとすると、アジア開発銀行による中国への融資比率が増えてないとおかしいです。実際はどうだったのでしょうか?
黒田氏が総裁だったのは2005年2月から2013年3月です。
2005年の国別実績を見ると、中国が1位で25.9%を占めていました(※3)。しかし、2006年には中国が15%(※4)、2009年には14.8%(2位)、2010年には13.8%にまで減っています。要するに、実際には黒田総裁就任後、中国への融資は比率で見れば大きく減っているのです。
黒田総裁自身も中国への融資が減っていると発言しています。(※6)
投票権がないので黒田氏が減らしたわけではないと思いますが。
4.日銀総裁としての黒田総裁は中国寄りか?
円高になれば、相対的に中国の製品が安くなりますから、中国製品の魅力が高まり、中国の景気が良くなります。また、円高で苦しくなった日本企業が中国へ進出し、雇用の流出・技術移転も進みます。円高・元安こそ、中国の最大の援助なわけです。(※7)
円高を是正するには、日銀が金融緩和するのが一番です。黒田総裁の前々からの発言から、彼が金融緩和に積極的なのは明らかですから、総裁として、言葉通り金融緩和を進めるでしょう。そうすれば、円高も是正され、日本がデフレ脱却してしまい、中国へ工場を建てる必要がなくなってしまいます。これは逆に中国が一番嫌がることです。
5.まとめ
これらのことを総合的に考えると、黒田新総裁への売国奴というレッテル貼りは全く根拠が無いことがわかります。むしろ、黒田氏は日銀総裁として中国に利するどころか、中国にとっては脅威の存在と言ってもいいでしょう。どうか、偽情報に騙されないようにしてください。
黒田氏がAKB好きとか、中国料理店の常連とか(例えです)そういうレベルの売国奴である可能性までは否定しませんが・・・。そんなもので重要な決定をする皆さんではないはずです。
参考
※1 第6回参議院政府開発援助(ODA)調査派遣報告書 V.アジア開発銀行における調査
http://www.sangiin.go.jp/japanese/kokusai_kankei/oda_chousa/h21/pdf/1-5.pdf
※2 投資アジア開発銀行設立に関する協定
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19651204.T1J.html
※3 政府開発援助(ODA)白書 2006年版 資料編3,4,5章
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/06_hakusho/ODA2006/html/siryo2/sl1320020.htm
※4 アジア開発銀行(ADB)とは? JACSESS
http://www.jacses.org/sdap/adb-kyoto/whatisadb.html
※5 2011年版政府開発援助(ODA)参考資料集 第9節 主な国際機関の概要
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/11_hakusho_sh/pdfs/s2-9.pdf
※6
経済危機は9つの顔を持つ/日経BP社

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※7 【対支那ODA】最大の対支那支援は?【デフレ・円高】
http://yaplog.jp/defend_japan/archive/575
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