屋上美亜庭園
小野ユキは階段を昇っていた。
一歩進むごとに足取りは軽くなり、いつしか殺風景だった階段は、吸い込まれるような白一色の世界へと変貌していく。
ふと見上げると、数段先を歩く半透明な人影があった。白く、淡く、ぼんやりと浮かび上がる洋美の背中。
(洋美さんが言っていたのは、この階段のことだったのね)
導かれるように歩みを早め、ついに彼女と同じ段に足をかける。
その瞬間、洋美の姿は消え、足元の白い世界は鮮やかな虹色へと跳ねた。
光り輝く虹の階段を昇りきると、そこには息を呑むほど美しい庭園が広がっていた。
『たった今なったばかりよ』
もう一人の小野ユキが現れた。
『そして今からあなたはこの出版社を自由に創り変えることができるのよ』
『❓️』
『創り変えると言っても表立って経営するというわけではなくて、この中にいる人たちに対するあなたの頭の中を認識を書き換えるということよ。
その書き換えをやりやすいようにこの空間を誂えたわけなのよ。
壁に玉を埋め込んだのはこの空間の基礎工事みたいなものと思ってちょうだいね』
『他の人には全然違う景色に見えるということかな❓️』
『たぶんね』
『他人がどう見るかは関係ないということね』
『そうそう、それを気にしてたら支配者がはまる沼にはまってしまうからね』
『沼にはまらなくていいから、この泉を覗いてご覧なさいな』
『どれどれ』
泉の中を覗くと桃子と東雲が原稿を読んでいる様子が映し出されていた。
『この二人が動きやすいようにしてあげないとね』
小野ユキは光る玉をつくって"平和泉"と書いて泉に沈めた。
『何が起きますことやら』
小野ユキは上機嫌で階段を降りていった。
つづく
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