Q.ドメインについて紛争が発生した際に、裁判によらずに解決する公的な機関はございますか。



A.JPドメインに関する紛争については、申し立てに応じて日本知的財産仲裁センターにおいて紛争の対象となっているドメインを移転又は取り消すように等といった裁定を下してくれます。










引き続きドメインに関する不正競争防止法を取り上げさせていただきましたが、今回は、ドメインに関する紛争に関して裁判によらない解決方法というのを紹介しつつ、この解決方法による事例を取り上げて考察したいと思います。




今まで紹介した、J-PHONE事件MP3.com事件 においては、裁判による解決が図られておりましたが、ドメインに関する紛争については、実は、裁判とはまた別の紛争解決機関である日本知的財産仲裁センターという機関がございます。





こちらは、申し立てに応じてJPドメインの紛争に関する裁定を下してくれる機関でございまして、基本的にこの機関の裁定に応じてJPドメイン管理機関である日本レジストリサービスはしかるべき処理を行います。




今回は、比較的直近にこの日本知的財産仲裁センターでドメイン紛争裁定が下された「Twitter事件」を取り上げて考察したいと思います。







【Twitter事件】




原告:Twitter社

被告:株式会社テラ・インターナショナル



この事件は、Twitter社が、twitter.co.jpドメインをTwitter社以外の法人(株式会社テラ・インターナショナル)が不正使用の目的で登録・所持しているとの理由に基づきtwitter.co.jpドメインをTwitter社に移転するようにとの請求を日本知的財産仲裁センターに申し立てたものです(事件番号:JP2010-0001)。




本件の経緯を簡単に説明いたしますと・・・



①2009年12月頃

株式会社テラ・インターナショナルが「twitter.co.jp」ドメインを取得。この時点で、Twitter社によるウェブサービス「Twitter」は日本でも非常に著名な存在となっております(2010年1月時点で登録ユーザー数500万人との資料をTwitter社は提出)。




②2010年1月4日

株式会社テラ・インターナショナルからTwitter社に対して、twitter.co.jpドメインを約260万円で譲りたい旨の申し出を行う。




Twitter社は、②の申し出を受けて、株式会社テラ・インターナショナルが不正使用の目的でtwitter.co.jpドメインを登録・所持しているとの理由により日本知的財産仲裁センターに申し立てる。




なお、株式会社テラ・インターナショナルはTwitter社とはなんらの関係もない法人であるため、twitter.co.jpドメインに関する正当な権利・利益を有していないと仲裁センターは認定。









【不正の目的での登録】




そして、不正の目的での登録または使用であったのかという点を争点に、仲裁センターは以下のように判示。




(仲裁センター)

「株式会社テラ・インターナショナルは2010年1月15日の時点において「Twitter de PON」と題する投票サイトにおいてtweetされるべき人を選んで投票するよう募るサイトを開設(ドメインはtwitter.co.jp)~当該サイトにおいて、1行目にTwitter de PON(http://twitter.co.jp/)とあり、2行目にTwitter, Inc.とTwitter社の名称が記載され、あたかもTwitter社が当該サイトを運営するかのような記載となっている。


~(中略)~


Twitter社に対する株式会社テラ・インターナショナルのtwitter.co.jpドメインの譲渡申出において、株式会社テラ・インターナショナルは代表者をおすすめユーザーリストに加えてほしいと要求した。



~(中略)~



株式会社テラ・インターナショナルのtwitter.co.jpドメインの登録または使用は、商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイト「Twitterd de PON」についてTwitter社との提携関係や推奨関係があるかのような誤認混同を生ぜしめることを意図して、インターネット上のユーザーを当該ウェブサイトその他のサービスに誘引するためにされているものと解することが出来る。」





仲裁センターは、twitter.co.jpドメインを使用したウェブサイトがTwitter社サービスとの誤認混同を生ぜしめるものと認定。続いて





仲裁センター)

「株式会社テラ・インターナショナルは、twitter.co.jpドメインの取得日から1月程しか経過していない2010年1月4日に、Twitter社にドメインを20,000ユーロ(約260万円)で譲りたい旨の連絡をして来たとの事実が認められる。他方、ドメイン名取得に要する費用は、高くても1万円程度と考えられる。この事実は当該ドメイン名に直接かかった金額を超える対価を得るために、当該ドメイン名を販売、貸与または移転することを主たる目的として、当該ドメイン名を登録または取得したことをうかがわせる




として、株式会社テラ・インターナショナルはtwitter.co.jpドメインを不正の目的で使用・登録していると仲裁センターは認定。これらの認定の結果、twitter.co.jpドメインをTwitter社に移転せよという裁定が下されたました。




今日現在、twitter.co.jpドメインはTwitter社の登録となっているようです。








このように、裁判とはまた別の機関により、ドメインに関する紛争処理が行われております。日本知的財産仲裁センターが下した裁定は、裁定後10営業日以内に裁定に不服として裁判所に出訴された場合を除き、日本レジストリサービスが裁定の結果に基づいた登録処理を行います。






著作権と不正競争防止法は密接に関連する部分があるため、不正競争防止法をここ何回か重点的に取り上げさせていただきましたが、次回からは肖像権の話をしてみたいと思います。タレントや一般人の肖像権について、どのような行為が侵害行為となってしまうのかなどを考察してみたいと思います(続き「一般人の肖像権侵害 ~街の人事件~ 」)。





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