Q.街中の人を撮影して出来上がった写真画像をウェブサイトに掲載することは問題ないでしょうか。




A.ウェブサイトに掲載する写真画像が容貌を含めて特定人物を大写しで撮影しているものである場合、被写体から肖像権利用の許諾を得ないと肖像権の侵害にあたる可能性が高いです。










今回からしばらくは、著作権と密接した関係にある「肖像権」について色々と考察していきたいです。




肖像権というものは、著作権法などで明確に規定されている権利ではないのですが、みだりに自分の姿を公開等されない権利として裁判例(最高裁昭和44年12月24日、京都府学連事件 昭和40(あ)1187等)で認められている権利となります。




この肖像権については、一般人とタレント等の有名人とで分けて考える必要があります。そこで、まずは我々一般人の肖像権というものを考察していき、続いてタレント等の有名人の肖像権について考察していきたいと思います。




今回は、「街の人」事件を取り上げて考察したいと思います。














【街の人事件】




原告:一般人女性

被告:日本ファッション協会、株式会社コロモ・ドット・コム



この事件は、日本ファッション協会等が開設しているウェブサイトに、承諾なく撮影された写真画像が掲載されたため、精神的苦痛を負ったとして30代の一般人女性が日本ファッション協会等に対して肖像権侵害等による損害賠償を請求して裁判になったものです。




この事件の経緯は以下のとおりです。




①平成15年7月9日

 被告の1人である株式会社コロモ・ドット・コムの撮影担当者が銀座界隈で歩く原告女性の姿を承諾なく撮影




②平成15年7月9日~平成16年4月18日まで

 撮影した原告女性の写真画像を原告女性の承諾なく、株式会社コロモ・ドット・コムと日本ファッション協会が共同開設しているウェブサイト内の「Tokyo Street Style〔銀座〕」ページに掲載



 尚、撮影された写真には原告女性の容貌を含む全身像が大写しされており、着用している衣服は、著名なブランドである「DOLCE AND GABBANA」がパリコレクションに出展したもので、胸部には大きく赤い文字で「SEX」というデザインが施されている。原告女性は写真撮影されていたことに気づいていなかった。




③平成16年4月上旬~

 巨大掲示板2ちゃんねるにおいて、原告女性写真画像が掲載されているページへのリンクが張られた上で、「胸に大きく「SEX」って書いた服を着たエロ女発見!」等の誹謗中傷書き込みがなされる。この時期、第三者より「Tokyo Street Style〔銀座〕」ページ掲載の原告女性写真画像が複製されて個人ウェブサイトにも掲載され、ここでも原告女性に対する誹謗中傷がなされる。




④平成16年4月17日

 原告女性は友人から原告女性写真画像がウェブサイトに掲載されていること及び2ちゃんねるで誹謗中傷されていることを知らされる。




⑤平成16年4月18日

 原告女性より日本ファッション協会等に対して抗議をし、日本ファッション協会は即刻原告女性写真画像をウェブサイトから削除



⑥平成16年5月7日

 2ちゃんねるにおいて原告女性写真が再度話題となり、以前「Tokyo Street Style〔銀座〕」ページに掲載されていた原告女性写真画像を複製していた個人ウェブサイトへのリンクが張られる等して再度原告女性への誹謗中傷がなされる。




⑦原告女性が日本ファッション協会及び株式会社コロモ・ドット・コムを提訴






これが提訴までの一連の流れです。








【肖像権の侵害にあたるのか】




本件について、原告女性の肖像権の侵害があったかどうかについて、裁判所は以下の通り判示しております(東京地裁 平成16年(ワ)第18202号)。





(東京地裁)

「本件写真は原告女性の全身像に焦点を絞り、その容貌もはっきり分かる形で大写しに撮影されたものであり、しかも、原告女性の着用していた服の胸部には「SEX」の文字がデザインされていたのであるから、一般人であれば、自己がかかる写真を撮影されることを知れば心理的な負担を覚え、このような写真を撮影されたり、これをウェブサイトに掲載されることを望まないものと認められる。」




(東京地裁)

「本件写真は、原告女性の全身像に焦点を絞り込み、容貌を含めて大写しに撮影したものであるところ、このような写真の撮影方法は、撮影した写真の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合や不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合とは異なり、被写体となった原告女性に強い心理的負担を覚えさせるものというべきである。」




これらのように判断し、本件は原告女性の肖像権を侵害しているものと認定。結果、原告女性が負った精神的苦痛に対する損害賠償として被告らは原告女性に対して35万円を支払うようにとの判決となりました。











【本件の判決文から読み取れるポイント】





・容貌を含めて一般人を大写しで撮影した写真画像をウェブサイトに掲載する行為は肖像権侵害になる可能性が高い


・撮影した写真の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合や不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合は肖像権侵害にならない可能性がある







特定の個人がわかるような形で撮影した写真画像をウェブサイトや雑誌等の出版物に掲載する場合は、肖像権の利用許諾を得ないとこのような事件となってしまう可能性がありますので、気をつけなければならないところだと思います。



次回は、同じく一般人女性をの撮影した写真が問題となったケースを取り上げて、写真の権利関係も含めてさらに考察したいと思います(続き「写真の著作権と肖像権 ~出会い系サイト写真使用事件~ 」)。




【その他著作権事例Q&A】



ゲーム

言語の著作物(書籍など)

ホームページ、ブログ

肖像権

キャラクター、写真

不正競争防止法

インターネット

その他(コピーライト表記など)






AD