Q.有名な会社名・サービス名と類似するドメインを取得して、そのドメインにより運営されているサイトで商品を販売したりサービスを提供する行為は違法ですか




A.不正競争防止法により罰せられる可能性が高いです。








不正競争防止法に関する考察を続けてきましたので、ついでにというとあれですが、ドメインの不正使用についても考察したいと思います。




ドメインとは、ホームページ(ウェブサイト)のURLに使用される名称のことで、アメブロでいうと「ameblo.jp」の部分ですね。




近年、ドメインの不正使用についての裁判等が増えておりますが、こういった事例の先駆け的な裁判として「J-PHONE事件」というものがあり、これを今回は取り上げて考察したいと思います。








【J-PHONE事件】




この裁判は、原告である「ジェイフォン東日本株式会社」が被告「大行通商」に対して、被告が「j-phone.co.jp」のドメインを取得・使用して被告が運営しているウェブサイトにおいて「J-PHONE」等の表示を用いて商品の宣伝等をする行為が不正競争に該当するとして、「j-phone.co.jp」ドメイン使用差止めなどを求めて争われたものです。




「J-PHONE」は携帯電話サービス名称として、皆様も存知あげていると思いますが、この名称をドメインに使用したり、原告「ジェイフォン東日本株式会社」と関係ない会社が「J-PHONE」という名称をウェブサイトに表示する行為(被告運営ウェブサイトのトップページの最上段には「J-PHONEのホームページへようこそ!」というフレーズが横スクロール表示されていたようです)が今回問題となりました。




ちなみに被告「大行通商」は水産物、海産物及び食品等の輸出入販売を主たる目的とする株式会社ですので、原告「ジェイフォン東日本株式会社」とは業種も全く異なります。




この裁判は、東京高裁まで争われましたが、東京高裁では東京地裁の判決内容を支持する旨の判決文で結構簡素なため、東京地裁の判決文をもとに考察したいと思います(東京地裁 平成12年(ワ)第3545号)。




この判決文も、まあまあ長いですが、ファイアーエムブレム事件裁判に比べるとえらく短く感じますね・・・









【ドメイン名は不正競争に該当するのか】



まず、ドメイン名が不正競争に該当するのかということについて




(東京地裁)

ドメイン名の登録者がその開設するウェブサイト上で商品の販売や役務の提供について需要者たる閲覧者に対して広告等による情報を提供し、あるいは注文を受け付けているような場合には、ドメイン名が当該ウェブサイトにおいて表示されている商品や役務の出所を識別する機能をも有する場合があり得ることになり、そのような場合においては、ドメイン名が、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」に該当することになる。」




として、ドメイン名が不正競争に該当する場合があることを認定。続いて、今回のケースが不正競争に該当するのかというところについて





(東京地裁)

「被告運営ウェブサイトには「J-PHONEをご利用頂きましてありがとうございます」といった表示がされたウェブページと共に、「御注文はここを今すぐクリック!!」という表示の下に「メディカス」、「スケルフォン」、「ノナール」という項目があり、これをクリックすると、それぞれの販売広告が表示される体裁になっていた」



(東京地裁)

被告取得ドメイン「j-phone.co.jp」は、被告運営ウェブサイト中の「J-PHONE」の表示とあいまって、ウェブサイト中に表示された商品の出所を識別する機能を有していると認めるのが相当である。したがって、被告取得ドメイン「j-phone.co.jp」の使用は、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」の使用に該当する」



(東京地裁)

「原告ジェイフォン東日本株式会社のサービス名称「J-PHONE」は、全国的な広告宣伝活動の結果により、現在においては原告及び原告関連関連会社の営業を示す表示として著名であり、不正競争防止法2条1項2号にいう「著名な商品等表示」に該当するものと認められる。~さらにこのサービス名称は、被告が「j-phone.co.jp」ドメインの割当てを受けた平成9年8月29日の時点において既に全国規模で広く認識されていたものであり、この時点において不正競争防止法2条1項2号にいう「著名な商品等表示」に該当していたものと認められる。」





上記理由等により、被告の行為は不正競争行為に該当するものとし、さらに被告行為の故意・過失について




(東京地裁)

「被告運営ウェブサイト上において、いわゆる大人の玩具の販売広告や特定の企業を誹謗中傷する文章など原告の信用を毀損する内容の表示をしていたことに照らせば、被告は、原告の営業上の利益を侵害することを認識しながら、あえて上記のような行為を行ったものと認められるものであって、故意により不正競争行為を行ったものというべきである。」






とし、被告の行為に故意によるものと認定した結果、

被告が取得した「j-phone.co.jp」ドメインの使用差止めおよび原告ジェイフォン東日本株式会社に対する営業上の信用毀損による損害賠償額を200万円と認定し、これを被告が原告に支払うようにとの判決になりました。








【雑感】



やはり「J-PHONE」サービス名称の著名度は相当高いので、これとまんま同名称のドメインを使用して商売をすることは不正競争に該当してしまいますね。




ドメイン名を不正使用して「他者の信用を貶めたり」「不正な利益を得ようとしたり」といった要素があるかどうかはポイントの一つだと考えられますが、この「不正な利益」というところがポイントになった裁判として、次回は、今回とは異なった判決になったドメイン名に関する事件を取り上げて、より考察したいと思います「ドメイン名の不正使用とならない場合 ~MP3ドメイン事件~ 」。








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