「幸福な食卓」~瀬尾 まいこ著
ある朝突然父さんが言った。「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」このセリフから物語は始まる。いままでは朝食は必ず全員でとの決まりがあった。全員がそろう朝食。バランスと栄養の整ったメニュー。誰も破らない決まった席順。父さんが父さんを辞めて、母さんは家を出て、完璧なはずだった家族が不協和音を奏で始める。(これには理由があるのだが・・。)父さんも母さんも優しく家族想いなのは確か。兄の直ちゃんは、進学校を常にトップを通してきたのに、大学には行かず無農薬野菜を販売する所へ就職している。中学3年生の『私』に冷蔵庫であり合わせの野菜でオムライスを作ってくれたりする。『私』の目を通して優しい家族なのに、切なく、時々哀しくこちらに伝わってくる。完璧なはずだった家族にも、それぞれ抱える悩みがあって完璧に正しく家族ができなくなってきて、でもお互い優しい。主人公佐和子も又新しい高校生活で、ちょっとしたいじめに遭って辛い思いをしたりもする。私も同じくらいの娘がいるので、この佐和子が随分等身大に描かれているな、と思ったら作者は現役の国語の講師であった。家族お互い想い合っているのに、完璧なゆえゆがみが生じて、ずれが出はじめたのかな。『私』佐和子のいろいろな感情が本の隙間から伝わってくる。家庭、学校、恋。この時期は、感受性が豊かだから毎日いろんな想いが交錯しているのだ。出てくるさりげないお料理のメニューも美味しそうでこの家庭の暖かさが伝わってくるようだ。佐和子はこれからも、辛いことがあっても家族に守られていくんだろうな。最後は泣けます!! 2005年(26回) 吉川英治文学新人賞受賞