「本をつんだ小舟」~宮本輝 著
宮本輝(以下敬称略)の「本をつんだ小舟」を読みました。32冊の名作の書評です。14歳から18歳まで読んだ本。作家が書く書評はいつでも面白いです。自分の過去とその時々の読んだ本をシンクロさせこの本一冊で作者の過去がなんとなくはですが見えてきます。決して幸福ではなかった少年時代。父は愛人の元に入り浸り。母はアル中。貧困も味わいます。読書は逃避だったと言います。32冊の中には本は読んだことはなくとも映画化され観たことがあるものも多く例えば「飢餓海峡」 以下引用~最近、「飢餓海峡」を再読し、私は<環境という恐ろしい敵>について、あらためて深く考えさせられた。環境に負けてはいけないと簡単に格言的に述べる言葉は幾つもある。まさしくその通りなのだ。けれども、実際に、自分の置かれた悪しき環境に勝って来た人が、いったい何人いるだろう。「インドへの道」~いま、おじさんという年齢に達して、私はアデラを、類のない正直さを持つ、女性としての魅力に満ちた人物と思うようになっている。人は、どんな場合でも、自分のために嘘をついているのだが、それによって他人が危険にさらされたとき、善良な者は、いったい自分の嘘をどうやってつくろうとするだろうか。「楢山節考」~いまは、楢山ではなく、設備の整った病院に棄てられる老人がたくさんいるのだから。おりん一家の貧しさと比べると、貧しいなどと口が腐ってもいえない家庭の老人が病院に棄てられているような気がする「ジョニーは戦場へ行った」}~当時ベトナム戦争に反対する自称<文化人>たちが、街頭でデモをやったり、テレビでアメリカを非難する正論を得意げに述べていた。あの人たちは、どうなっただろう。あの人たちはアメリカが撤退したあと、北ベトナム軍が南ベトナムのやった虐殺に、どんな抗議の行動を起こしただろうか・・などなど。なかなか映画だけでは見えてこなかった部分が見えてきます。他に「夜明け前」や「野火」など国語の教科書に出てきた本や、「山頭火句集」「どくとるマンボウ航海記」など多彩です。サマセットモームの「雨」なんかは、情景がまざまざと思い浮かび、読んだことが無かった本をまるで読んでしまったうような錯覚になりました。書評を読むと全て読みたくなるのですが、なかなかまとまった時間が取れなく残念です。若いうちにもっと読書しておくんだったと悔やまれます。32冊の中、私が読んだとちゃんと記憶しているのは「青べか物語」1冊だけでした。ジョセフ・コンラッド「青春」上林暁「野」フロベール「トロワ・コント」ボードレール「悪の華」山本周五郎「青べか物語」ファーブル「昆虫記」「寺山修司歌集」宇野千代「おはん」水上勉「飢餓海峡」チェーホフ「恋について」カミュ「異邦人」井上靖「あすなろ物語」ドストエフスキー「貧しき人々」柳田国男「山の人生」老舎「茶館」泉鏡花「高野聖」ドルトン・トランボ「ジョニーは戦場に行った」中野重治「雨の降る品川駅」フォスター「インドへの道」永井龍男「蜜柑」ツルゲーネフ「はつ恋」「山頭火句集」メリメ「マテオ・ファルコネ」深沢七郎「楢山節考」ゴーゴリ「外套」三好達治「測量船」樋口一葉「にごりえ」北杜夫「どくとるマンボウ航海記」ラディケ「肉体の悪魔」サマセット・モーム「雨」大岡昇平「野火」島村藤村「夜明け前」